誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら

Rohdea

文字の大きさ
40 / 169

37. だって好きなんだもの

しおりを挟む


 薔薇の数が1本おかしかったとはいえ、プロポーズはプロポーズ。

 私とジョルジュはそれぞれの両親に婚約することを話した。
 結果、ウェルズリー家とギルモア家との間で、正式に私たちの婚約を結ぶため、両家の顔合わせを行うことになった。

 場所は我が家。 
 今日はそんなは顔合わせの日────



「あんなにも常に斜め上を行く男だぞ?  まさか、こんなにも早く射止めるとは……ガーネットはどんな手を使ったんだ……」
「は?」

 お父様が私の横で頭を抱えている。

「考えたくはないが、変な薬でも盛りました!  と言われても納得してしまう……」
「あのねぇ?  …………さっきからどういう意味かしら?  お父様」

 私はジロリとお父様を睨みつける。
 睨まれたお父様はビクッと身体を震わせて縮こまった。

「でも……そうね、確かにガーネットならそれくらいのことをやってのけた、と言われても納得しそう……」
「お母様!!」

 なぜかお母様までお父様の言葉に同調している。
 当然、私は抗議する。

「ちょっと二人共、私を何だと思っているわけ?」

 お父様とお母様は気まずそうに顔を見合せる。
 そしてお父様がふぅ、と深いため息を吐きながら言った。

「見てみろ、ガーネット。こちらのギルモア侯爵と夫人の顔を」
「え?」
「顔を合わせてから、ずっとこれは夢なんじゃないか?  と言いたそうな顔をしているぞ?」
「……」

 そう言われて私は目の前に座るジョルジュの両親──ギルモア侯爵夫妻の顔を見つめた。
 確かに。
 未だに信じられないのか、息子の婚約に対して半信半疑の様子が見て取れる。

「…………本当の本当に我が家のジョルジュで宜しいのでしょうか?」

 ギルモア侯爵が横に座る息子───ジョルジュの顔を気にしながら口を開く。

「別の“ジョルジュさん”とお間違えなんてことは……ない?」

 どれだけ信じられないのか、なんと人違いではないかとまで聞かれる始末。
 私は首を横に振る。

「いいえ。私が結婚したい相手はそちらのジョルジュ・ギルモア侯爵令息で間違っていません」
「本当にうちのジョルジュ……なのね?」
「あのウェルズリー侯爵令嬢が我が家の嫁……?  我が家が栄える未来しか見えん。だからこそジョルジュが愛想をつかされないか、心配しかない!!」

 ギルモア侯爵夫妻が、ぐあぁぁと頭を抱える。

(ジョルジュ……?  あなたすごい色々と言われているのに……なんで無表情無反応なのよ)

 二人が心配そうな表情で嘆いているすぐ横で当の本人、ジョルジュはケロリとした顔で静かに座っていた。



「その……うちのジョルジュが、出会ってからずっとずっとウェルズリー侯爵令嬢……ガーネット嬢に惚れ込んでいたことは知っていたんです」

(え?)

 侯爵夫人の言葉に驚いた私は目を瞬かせる。

「ジョルジュは、パーティーの翌日から口を開けば、とにかくガーネット、ガーネット……我々は一日に何度その名を聞いたか」

 続けて侯爵夫人も似たようなことを口にする。

「ジョルジュ本人にどこまで自覚があったのやら……ですが、ガーネット嬢。私たちはあなたの名前を聞かない日はありませんでした」
「そ、そんなにですか?」

 侯爵夫妻は大きく頷く。

「我々に背中を踏みつけるよう要求しておきながらも、結局ガーネット嬢、あなたの踏み方とは違う、物足りないとダメだしまでされ……」

(ジョルジュ……)

「そんなにガーネットさんのこと好きなのね?  と訊ねてみれば───ガーネットは友人時々恋人だ!  と言い張り……」

(ジョルジュ……!)

 私は口を押さえる。
 まさかの両親に向かってあの迷発言を……

「友人時々恋人?  何それ……と。もう我が息子なのにいったい何を言っているのか……意味が分からなくて……」

(ジョルジューー!)

 その時のことを思いだしたのか、夫人は顔を覆っておいおいと泣き出した。
 そんな夫人を侯爵が慰めている。
 そして、ジョルジュは母親が嘆き泣いていてもやっぱり無反応。
 まるで他人事のような顔。

「それからもほぼ毎日のように、ガーネットのところに行ってくると言って家を出ていたな……」
「馬車を使わずに走り込みで行ったと聞いた時は目眩がしたわ」
「そして極めつけは先日───」

 ギルモア侯爵夫妻は顔を見合せて頷く。

「その日、いきなり正装したかと思えば……これからガーネットにプロポーズして来る!  とだけ言い残していきなり家を飛び出して……」
「ハラハラして帰宅を待っていたら承諾貰えた!  結婚する!  と開口一番そう言ったけれど……もう、真実なのか妄想なのか分からず…………」
「……」

 その後、我が家からから婚約に関する手紙が届くまで不安でいっぱいだった、と言われた。

(そ、想像以上だわ……)

 二人の口振りからギルモア侯爵夫妻は、家でかなりジョルジュに振り回されていることが伺えた。


────


 それから。
 両親たちが話している間、私とジョルジュは庭に出て散歩することにした。

「ジョルジュ」
「なんだ?」

 肩を並べて並んで歩きなが名前を呼んだあと、私はふふっとジョルジュに笑いかける。

「ジョルジュって、私が思っていたよりも、ずーっと私のこと好きでいてくれたのね?」
「?」

 なぜかここで足を止めて不思議そうな表情になるジョルジュ。

「ちょっと!  なんでそんな顔をするのかしら?」
「ガーネットこそ、何を言っている?」
「何をって……」

 ジョルジュは私の手を取りギュッと握りしめる。

「ガーネット。俺は君以上に魅力的な人を知らない」
「!」

 胸がドキッとした。
 真っ直ぐな瞳がじっと私を見つめている。

「ホーホッホッホッ!  当然よ!  だって私は昔からたくさんたくさん努力して来たもの!」

 私は大きく胸を張る。
 けれど……

(何だか照れてしまうわ。嬉し……)

「特に足!  足だ!  その足なくしてガーネットのことは語れん!」
「…………結局、そこなのね?」

 苦笑した私はじとっとした目でジョルジュを見る。
 ジョルジュは本当にブレない。
 でも、いいわ。 


(だって、そんなジョルジュのことが私は好きなんだもの……!)


「───ジョルジュ!!」
「ガーネット?  どうし……」

 ───チュッ!

 私は背伸びをしてジョルジュの頬にそっとキスをする。
 そして笑顔で告げる。届けこの気持ち!

「───あなたのことが大好きよ、ジョルジュ!」
「……!」

 ジョルジュは目を大きく見開くと、瞬き一つすらせずにその場で固まってしまった。

「ジョルジュ?」
「……」
「ジョールージュー?」
「……」

 ジョルジュはそのまま沈黙。
 まさかとは思うけどキスが嫌だった……とかはないわよね?
 ちょっとだけ不安に思った時だった。

「い!  …………いま……チュッ……」
「え?」

 ジョルジュが小さく何かを呟いた?  と思ったその瞬間。

(…………うっ、嘘っ!?)

 ポンッと音が聞こえそうなほどジョルジュの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まっていった。

しおりを挟む
感想 542

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「商売する女は不要」らしいです

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリアナ・ヴァルトハイムは、第二王子の婚約者だった。しかし「女が商売に口を出すな」と婚約破棄され、新しい婚約者には何も言わない従順な令嬢が選ばれる。父にも見捨てられたエリアナは、自由商業都市アルトゥーラへ。 前世の経営コンサルタントの知識を武器に、商人として成り上がる。複式簿記、マーケティング、物流革命——次々と革新を起こし、わずか一年で大陸屈指の豪商に。 やがて王国は傾き、元婚約者たちが助けを求めて土下座してくるが、エリアナは冷たく突き放す。「もう関係ありません」と。 そして彼女が手に入れたのは、ビジネスでの成功だけではなかった。無愛想だが誠実な傭兵団長ディアンと出会ってーー。

冷遇夫がお探しの私は、隣にいます

終日ひもの干す紐
恋愛
愛人がいるなら、さっさと言ってくれればいいのに! 妻に駆け落ちされた、傷心の辺境伯ロシェのもとへ嫁いでほしい。 シャノンが王命を受け、嫁いでから一年……とんでもない場面に立ち会ってしまう。 「サフィール……またそんなふうに僕を見つめて、かわいいね」 シャノンには冷たいの夫の、甘ったるい囁き。 扉の向こうの、不貞行為。 これまでの我慢も苦労も全て無駄になり、沸々と湧き上がる怒りを、ロシェの愛猫『アンブル』に愚痴った。 まさかそれが、こんなことになるなんて! 目が覚めると『アンブル』になっていたシャノン。 猫の姿に向けられる夫からの愛情。 夫ロシェの“本当の姿”を垣間見たシャノンは……? * * * 他のサイトにも投稿しています。

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件

水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。 「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...