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【おまけ】ナターシャの決意
しおりを挟むその後、ジョエルの居場所は匂いで分かります!
そう豪語して張り切っていたジョシュアは、私たちを引き連れてクネクネクネクネクネとギルモア家の邸内をこれでもかとさ迷った挙句、
『とーちゃくです!』
と、自信満々に物置部屋にご案内。
当初の目的地であるお宝が眠る物置部屋に着いたジョシュアはご満悦。
『あうあ~~』
『…………ぅっ!!』
『あう、ぷぁあ!』
すっかりジョエル捜しのことは忘れて、ベビーたちと楽しそうに物置を漁っていた。
こうして、自由人たち(ジョエル含む)のそれぞれの暴走により、大騒ぎとなったギルモア家───
「ホーホッホッホッ! 見て、ジョルジュ! 天使が三人よ!」
今、私の目の前には、先程まで思い思いの方向に暴走しまくったベビーたちが、気持ちよさそうにスヤァ……と眠っている。
たくさん暴れてさすがに疲れたのか眠ってしまった。
三人並んで眠る姿は天使そのもの。
「気持ちよさそうに眠っているな」
「……ええ、憎らしいくらい」
三人の寝顔を覗き込みながらホホホと小さく笑う。
「それにしても───三人の表情がそれぞれの今の感情を物語っているわねぇ」
「どういうことだ?」
首を傾げるジョルジュに私は順番に説明する。
「まず、微笑みの天使……いえ、悪魔のジョシュア。見て、眠っているのに顔がニッパニパ」
「…………よほど楽しかったのだろうな」
なるほどな、と頷くジョルジュ。
誰よりもジョシュアが張り切っていたのだから当然だ。
「…………あうあ」
その時、ジョシュアがうーんと寝返りを打つ。
「聞いた? 寝言も“あうあ”」
「ジョシュアだからな」
(そろそろ、“美しいおばーさま”とか言葉で聞いてみたいわ)
「本当にこの子は無邪気なんだか邪悪なんだか天使なんだか悪夢なんだか……」
「全部じゃないか?」
「……」
ジョルジュに即答されて私は苦笑した。
そんなジョシュアは今、両手に花の状態で眠っている。
まず、ジョシュアの左側で眠っているのは、我が家のお姫様、アイラ。
「アイラは眠っている時も無表情ね……」
「まさに“無” だ。ここまですごいと逆に感心するな」
「……」
(あなたやジョエルの血よ……)
「だが、目力がすごい。目力が」
「……ジョルジュ」
今、二回言ったわ?
でも分かる気がする。
ニパッと元気に笑って目立ちまくるジョシュアの影で、しれっとやべぇことするのがアイラ……
色んな意味で怖いかもしれない。
「今回は山で済んだけど……アイラがうっかり国が欲しいわ、なんて口にしようものなら……」
「シスコンジョシュアが張り切って国をプレゼントする、と」
「……」
「……」
私の脳裏に、満面の笑みで“あうあ~”と可愛く笑って周囲をメロメロにするジョシュアの顔が浮かんだ。
「…………ぅぁ」
アイラは寝言も小さい。
この無表情でどんな夢を見ているやら。
「そして、コックス公爵家のお姫様……」
続けてジョシュアの右側で眠るナターシャに視線を向ける。
「……」
「……」
「なぁ、ガーネット……この子、大丈夫か?」
ジョルジュがそう言いたくなる気持ちも分かる。
「…………あっぷぁぁぁぁ、ぅぁあぁぁ……うぁぁ」
うなされている!
どこからどう見てもうなされている……!
悪夢を見ているとしか思えない!
「さすが、エドゥアルトの子だ。寝言も長くて元気だ!」
「ホホホ! 夢でもジョシュアのこと追いかけてるんじゃないかしら……」
これだけ元気ならいつか本当に“ナターシャ川”を手に入れて笑っていそう。
(ちょっとジョシュアに振り回されるのは大変そうだけど────)
「ふふふ、ジョルジュ……私、この子の将来も楽しみよ」
「ん?」
「私の弟子……ねぇ」
思わずフッと笑う。
「オ~ホッホッホ! 森や川だなんて言わずに、いっそのこと国を一つ丸ごと手に入れられちゃうくらいの子に育ててみたいわ!」
「国! ガーネット! 君はついに国を潰すのか!」
「は?」
何故かキラキラ目を輝かせる夫、ジョルジュ。
「俺はずっとずっとずっとずっとずっと思っていた。ガーネット……君ならやれる」
「いや、あのね? 私じゃなくて……」
ジョルジュの顔が興奮し明らかにウキウキし始めた。
「どこの国にするんだ? 俺が留学していた国はなかなかのオススメだぞ! 気候も程よく過ごしやすく国の規模も───」
「待ちなさい! 何で自分が過ごした思い出の国を潰そうとしてるのよ!」
「……?」
なんでダメなんだ?
ジョルジュがそんな目で見てくる。
「俺の思い出の場所の中にガーネットも加わってくれたら嬉しいと思ったんだが」
「え!」
ジョルジュは少し遠い目をしながら言った。
「あの頃はガーネットのことを知らなかったからな」
「~~っ! 全く……あなたって人は!!」
「ガーネット?」
ジョルジュはキョトンとしていたけれど、私は必死に赤くなった頬を隠そうとした。
「あうあ~」
ニパッ!
────ベビーちゃん、次はいつあそび来るです? (訳:ジョルジュ)
「うあっぷぁあ! あぅ、あっああああぅあ~」
クワッ!
────ジョシュア! きょーのわたくしは色々とりみだしましたが、つぎからは、ぜったいに負けませんわ! (訳:ジョルジュ)
「あうあ!」
ニパッ!
────今度はまたボクが遊び行くです! (訳:ジョルジュ)
「ぅあうっう、あううあっあぅう!」
クワッ!
────いつか、あなたをわたくしの前にひざまずかせてみせますわ~~! (訳:ジョルジュ)
「あうあ~!」
ニパッ!
────お兄さん、お姉さん、また遊ぶです~! (訳:ジョルジュ)
「うぁっぷぁあ! あぅ、うあっあ~~!?」
クワッ!
────ジョシュアァァ! わたくしのはなし聞いているんですの~~!? (訳:ジョルジュ)
別れ際のジョシュアとナターシャの会話。
「……本当にどこまでも会話が噛み合わない子たちね」
私はホホホと苦笑する。
それに……
(ナターシャ、にこっ! がクワッ! に変わっているんだけど?)
ジョシュアお兄様~
と呼んでいたはずのにっこり笑顔が、今日一日で完全に敵を見る目になっている。
「あっうぁぅあっぅぅうううあっあ~~!」
────わたくしは、がーねっとさまにおしえをこいて、さいきょーのしゅくじょをめざしますわ~~!
ジョルジュによるとナターシャは帰宅のために馬車に乗る直前、最後にそう宣言していたという。
「────あうあ!」
見送りを終えたジョシュアがニパッ! と笑いながら話しかけてきた。
「なによ、ジョシュア」
「あうあ、あうあ、あうあ~」
「……ひざまずくってなんですか? とジョシュアは聞いている」
ジョルジュが素早く通訳してくれた。
「ホホホ……あなたちゃんとナターシャの話、聞いていたんじゃないの……」
「あうあ!」
ジョシュアは無邪気な笑顔でニパッと笑った。
そしてジョルジュから、“ひざまずく”体勢を教わったジョシュア。
後日、速攻ナターシャの前でそれを披露し……
『あっぷぅあぅあっ~~!!』
『あうあ~~!』
まだ、わたくしがさいきょーのしゅくじょになっていないのに早すぎですわ~~!!
と、怒られ踏まれていた。
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