【完結】あなたからの愛は望みません ~お願いしたのは契約結婚のはずでした~

Rohdea

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23.

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「ど、どういう事……?」

  ジョシュアがあまりにも冷静で自信満々なので、ローゼ様は完全に動揺していた。
  だけど、そんな様子は私だって気になる。

「ジョシュア。何でそんなにはっきり断言出来るの?」

  他にも気になる事はたくさんあったけれど、まずこれを聞かずにはいられない。
  すると、ジョシュアは私の頭を撫でながら言った。

  ナデナデ……

  ローゼ様が「何しているの!!」と、今にも叫び出しそうな目で見てくるけれど、ジョシュアは無視して続けた。

  ナデナデ……

「まずはユイフェに謝らないと。ごめん」
「え?」

  なぜ謝られたのか分からない。
  私が驚いた目で見つめ返すとジョシュアは申し訳なさそうに言った。

バルコニーここに来たのはわざとなんだ」
「わざ、と?」
「ローゼがこのパーティーにいると知ってから考えた計画なんだ」
「え?」

  確か、バルコニーに出たのはジョシュアがたくさん口付けして来たから、頬が熱くなってしまってそれを少し冷まそうと私が言って……あれ?

「あの口付け口撃は」
「もちろん!  ユイフェが可愛かったから!」

  ジョシュア、満面の笑顔。違う!  そうじゃない!

「……そうではなくて!  たくさん見せつけよう……って」
「そうだよ。見せつける意味もあった。ユイフェは可愛い可愛い僕の妻だってね。でも、ちょっといつもよりたくさんしてユイフェの顔を火照らせたのは……うん、わざとだね」
「!」
「そうしたら、ユイフェの事だから、顔を冷やしに外に出たいって言うかな?  って思ったんだ」
「ジョシュア……」

  ジョシュアの思惑通りの行動をした私。
  手のひらの上で転がされていた感がすごい。

「な、何でそんな事を?」

  私の疑問にジョシュアは笑みを深めた。

「確実に僕かユイフェ……いや、僕達にと企むローゼの罪を人に見てもらう為だよ」
「え?」
「冤っ!?  ……ちょっ……お従兄、様?  やめて、何の話をしているの?」

  ローゼ様は大きく動揺し、大きな目を更に大きく見開いてジョシュアを凝視する。
  “冤罪”なんて言葉に、この場に駆け付けて集まった人達も動揺していた。

の冤罪は、人気が無い所でやらないと意味が無いだろう?」
「……それは、そうだけど」
「会場の部屋にいてもローゼは決して騒いではくれないだろうからね。そういう意味でも、バルコニーはローゼにとって最適の場所だったわけだ」
「お、お得意!?  何でよぉ……」

  ローゼ様が絶句している。
  つまり、ジョシュアはローゼ様が確実に私達に何か仕掛けるはずだと思って、実はこっそり待ち構えていたという事?

「さすがにそこの壊れている柵の事なんて知らなかったから、ローゼがどんな手段に出るかまでは分からなかったけど。その分、ユイフェには怖い思いをさせた……すまない」
「……」
「何があっても僕はユイフェの事は全力で守ると決めていたから」
「ジョシュア……?」

  ジョシュアが、軽く私の頬を一スリする。

「で、まぁ、予想通りローゼは本当にのこのこやって来た。そしてやっぱり冤罪をきせて来ただろう?」

  そこは確かにジョシュアの言う通りだけれど、でも肝心な事が抜けている。

「酷いわ、お従兄様!  私が、わ、わざと罪を擦り付けたと仰るの?」
「そうだ」
「どこにそんな証拠があるの?  まさか、ユイフェ様が証言者だとか言いませんよね?  一緒にこの場にいたユイフェ様では証人にはなれません!」

  ローゼ様は先程まで流していた涙など嘘のように勝ち気な顔をしてジョシュアを責めだした。
  その顔は気に入らないけれど、確かにローゼ様の言う通り。
  ジョシュアの思惑通りに私達の前にやって来たローゼ様が、いくら騒いでも第三者に見てもらわないと意味が無い。
  実際、証言者となる人がいないので、事態は私達が不利になっている。
  
「もちろん、そんな事は分かっているさ。けど、この場には、ユイフェ以外にも先程までのローゼの様子を全部、見て聞いていた人がいるんだよ」
「え?」 

  (──え?)

  私の心の声とローゼ様の驚きの声が重なる。
  これには集まった人達も同じ気持ちだったと思う。

「だから、ローゼの奇怪な行動や言動は証言出来る。と言うか、して貰わないとね」
「何ですって!?」

  慌てるローゼ様とは対称にジョシュアはにっこり笑顔でそう言った。

  (どういう事?)

「ジョシュア?  ここに居たのは私達だけでしょう?」
「うん?  あぁ、ユイフェもローゼもそう思っていたみたいだけど、気付かなかった?  こっそりの死角にずっと隠れていた人がいるんだよ。今も出るに出れなくて動けずにいる」  
「……え?」 

  そこに?
  そう言われて私はジョシュアの指差した方向を見る。
  そこはバルコニーの端。いくつかの観葉植物がずらっと並んでいる。中には背丈の高さほどの大きな物もあって──

  (え?  まさか!)

「はぁ?  う、嘘っ……嘘でしょう!?」

  ローゼ様も同じ事を思ったのか小さな悲鳴をあげる。

「ジョシュア……まさかそこの裏に人がいた……いえ、いるの?」 
「そういう事だ。ずっと話を聞いていたのなら、そろそろ出て来てローゼの奇行について証言してくれると嬉しいなぁ」 

  ジョシュアがその方向に向かって声をかける。

  ガサガサ……ガサッ
  観葉植物が揺れ出した。だけど、その揺れ方は不自然だったのでこれは確かに人がいる……そう思わされた。

「特にそこの植物は背が高いからね。完全に死角になっているから気付かなくても仕方がないよね?」
「……!」

  (つまり、ジョシュアはそれに気付いていた!?)

「……え、やだ、そんなはず……」

  ローゼ様の動揺がすごい。
  それもそのはず。彼女は他に人がいないと思ってあんな事をしたのだから思惑は大きく崩れる。

「はっ!  いえ。待って?  そこに人が居たとしてもお従兄様がわざと事前に仕込んだ人かもしれないでしょう?  そんな人の証言は──」 
「それは無いけどね。僕は今日、ローゼがこのパーティーに来る事は知らなかったわけだし。部屋の中でも僕はずっと可愛いユイフェを愛でていたから、他人と接触していない事は皆、知っていると思うけど?」
「なっ!」

  (……め、愛でてって!  ジョシュア、言い方!!)

  確かにローゼ様が現れたから私達は一人にならないようにって、ずっと一緒にいた。
  ジョシュアの行動の事もあり、皆、遠巻きに私達を見ているばかりだったから、その場で誰かに仕込みを頼む……というのも難しかった。

「それに、そこに隠れている人は公平に発言してくれると思うよ?」
「は?  何で?」

  ──ガサッ、ガサガサ……!

  ローゼ様の驚きの声と共に、観葉植物も動揺していた。

「だって、僕の予測が正しければ、そこに隠れている人って記者だからね」

  (──え!?)

  ジョシュアのその言葉に、集まった人達もどういう事だと騒ぎ出す。
  ローゼ様も「は?  き、記者?」と固まっている。

  ──ガサッ、ガサッ、ガサガサッ!

  (観葉植物がさっきより動揺しているわ!)

「まぁ、その人の目的はそもそも僕とユイフェだったと思うんだけど」
「え?」

  (どういう事かしら?)

「……さぁ、そろそろ出てきて下さい」

  ガサッガサッ、ガサガサガサ……

「ハ、ハワード公爵令息様……何で分かったんですかぁ……」

  そんな情けない声と共に本当に観葉植物の影から一人の人が現れた。

  
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