23 / 28
23.
しおりを挟む「ど、どういう事……?」
ジョシュアがあまりにも冷静で自信満々なので、ローゼ様は完全に動揺していた。
だけど、そんな様子は私だって気になる。
「ジョシュア。何でそんなにはっきり断言出来るの?」
他にも気になる事はたくさんあったけれど、まずこれを聞かずにはいられない。
すると、ジョシュアは私の頭を撫でながら言った。
ナデナデ……
ローゼ様が「何しているの!!」と、今にも叫び出しそうな目で見てくるけれど、ジョシュアは無視して続けた。
ナデナデ……
「まずはユイフェに謝らないと。ごめん」
「え?」
なぜ謝られたのか分からない。
私が驚いた目で見つめ返すとジョシュアは申し訳なさそうに言った。
「バルコニーに来たのはわざとなんだ」
「わざ、と?」
「ローゼがこのパーティーにいると知ってから考えた計画なんだ」
「え?」
確か、バルコニーに出たのはジョシュアがたくさん口付けして来たから、頬が熱くなってしまってそれを少し冷まそうと私が言って……あれ?
「あの口付け口撃は」
「もちろん! ユイフェが可愛かったから!」
ジョシュア、満面の笑顔。違う! そうじゃない!
「……そうではなくて! たくさん見せつけよう……って」
「そうだよ。見せつける意味もあった。ユイフェは可愛い可愛い僕の妻だってね。でも、ちょっといつもよりたくさんしてユイフェの顔を火照らせたのは……うん、わざとだね」
「!」
「そうしたら、ユイフェの事だから、顔を冷やしに外に出たいって言うかな? って思ったんだ」
「ジョシュア……」
ジョシュアの思惑通りの行動をした私。
手のひらの上で転がされていた感がすごい。
「な、何でそんな事を?」
私の疑問にジョシュアは笑みを深めた。
「確実に僕かユイフェ……いや、僕達に冤罪をきせようと企むローゼの罪を人に見てもらう為だよ」
「え?」
「冤っ!? ……ちょっ……お従兄、様? やめて、何の話をしているの?」
ローゼ様は大きく動揺し、大きな目を更に大きく見開いてジョシュアを凝視する。
“冤罪”なんて言葉に、この場に駆け付けて集まった人達も動揺していた。
「ローゼのお得意の冤罪は、人気が無い所でやらないと意味が無いだろう?」
「……それは、そうだけど」
「会場の部屋にいてもローゼは決して騒いではくれないだろうからね。そういう意味でも、バルコニーはローゼにとって最適の場所だったわけだ」
「お、お得意!? 何でよぉ……」
ローゼ様が絶句している。
つまり、ジョシュアはローゼ様が確実に私達に何か仕掛けるはずだと思って、実はこっそり待ち構えていたという事?
「さすがにそこの壊れている柵の事なんて知らなかったから、ローゼがどんな手段に出るかまでは分からなかったけど。その分、ユイフェには怖い思いをさせた……すまない」
「……」
「何があっても僕はユイフェの事は全力で守ると決めていたから」
「ジョシュア……?」
ジョシュアが、軽く私の頬を一スリする。
「で、まぁ、予想通りローゼは本当にのこのこやって来た。そしてやっぱり冤罪をきせて来ただろう?」
そこは確かにジョシュアの言う通りだけれど、でも肝心な事が抜けている。
「酷いわ、お従兄様! 私が、わ、わざと罪を擦り付けたと仰るの?」
「そうだ」
「どこにそんな証拠があるの? まさか、ユイフェ様が証言者だとか言いませんよね? 一緒にこの場にいたユイフェ様では証人にはなれません!」
ローゼ様は先程まで流していた涙など嘘のように勝ち気な顔をしてジョシュアを責めだした。
その顔は気に入らないけれど、確かにローゼ様の言う通り。
ジョシュアの思惑通りに私達の前にやって来たローゼ様が、いくら騒いでも第三者に見てもらわないと意味が無い。
実際、証言者となる人がいないので、事態は私達が不利になっている。
「もちろん、そんな事は分かっているさ。けど、この場には、ユイフェ以外にも先程までのローゼの様子を全部、見て聞いていた人がいるんだよ」
「え?」
(──え?)
私の心の声とローゼ様の驚きの声が重なる。
これには集まった人達も同じ気持ちだったと思う。
「だから、ローゼの奇怪な行動や言動は証言出来る。と言うか、して貰わないとね」
「何ですって!?」
慌てるローゼ様とは対称にジョシュアはにっこり笑顔でそう言った。
(どういう事?)
「ジョシュア? ここに居たのは私達だけでしょう?」
「うん? あぁ、ユイフェもローゼもそう思っていたみたいだけど、気付かなかった? こっそりそこの死角にずっと隠れていた人がいるんだよ。今も出るに出れなくて動けずにいる」
「……え?」
そこに?
そう言われて私はジョシュアの指差した方向を見る。
そこはバルコニーの端。いくつかの観葉植物がずらっと並んでいる。中には背丈の高さほどの大きな物もあって──
(え? まさか!)
「はぁ? う、嘘っ……嘘でしょう!?」
ローゼ様も同じ事を思ったのか小さな悲鳴をあげる。
「ジョシュア……まさかそこの裏に人がいた……いえ、いるの?」
「そういう事だ。ずっと話を聞いていたのなら、そろそろ出て来てローゼの奇行について証言してくれると嬉しいなぁ」
ジョシュアがその方向に向かって声をかける。
ガサガサ……ガサッ
観葉植物が揺れ出した。だけど、その揺れ方は不自然だったのでこれは確かに人がいる……そう思わされた。
「特にそこの植物は背が高いからね。完全に死角になっているから気付かなくても仕方がないよね?」
「……!」
(つまり、ジョシュアはそれに気付いていた!?)
「……え、やだ、そんなはず……」
ローゼ様の動揺がすごい。
それもそのはず。彼女は他に人がいないと思ってあんな事をしたのだから思惑は大きく崩れる。
「はっ! いえ。待って? そこに人が居たとしてもお従兄様がわざと事前に仕込んだ人かもしれないでしょう? そんな人の証言は──」
「それは無いけどね。僕は今日、ローゼがこのパーティーに来る事は知らなかったわけだし。部屋の中でも僕はずっと可愛いユイフェを愛でていたから、他人と接触していない事は皆、知っていると思うけど?」
「なっ!」
(……め、愛でてって! ジョシュア、言い方!!)
確かにローゼ様が現れたから私達は一人にならないようにって、ずっと一緒にいた。
ジョシュアの行動の事もあり、皆、遠巻きに私達を見ているばかりだったから、その場で誰かに仕込みを頼む……というのも難しかった。
「それに、そこに隠れている人は公平に発言してくれると思うよ?」
「は? 何で?」
──ガサッ、ガサガサ……!
ローゼ様の驚きの声と共に、観葉植物も動揺していた。
「だって、僕の予測が正しければ、そこに隠れている人って記者だからね」
(──え!?)
ジョシュアのその言葉に、集まった人達もどういう事だと騒ぎ出す。
ローゼ様も「は? き、記者?」と固まっている。
──ガサッ、ガサッ、ガサガサッ!
(観葉植物がさっきより動揺しているわ!)
「まぁ、その人の目的はそもそも僕とユイフェだったと思うんだけど」
「え?」
(どういう事かしら?)
「……さぁ、そろそろ出てきて下さい」
ガサッガサッ、ガサガサガサ……
「ハ、ハワード公爵令息様……何で分かったんですかぁ……」
そんな情けない声と共に本当に観葉植物の影から一人の人が現れた。
127
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で終わるはずでしたのに、気づけば全部あなた方が崩れておりました
しおしお
恋愛
王太子カイルの婚約者だった公爵令嬢リディアナは、学園の舞踏会で突然婚約破棄を告げられる。
隣にいたのは、可憐に涙をこぼす義妹ミレイユ。
誰もがリディアナを捨てられた令嬢だと思った。
けれどその婚約破棄は、ただの恋愛沙汰では終わらなかった。
王太子は、自分が何に支えられていたのかも知らないまま婚約を切り、義妹と継母は、選ばれた側になったつもりで浮かれ上がる。
しかし一夜明けるごとに、王宮の実務は乱れ、社交界の空気は冷え、王太子の周囲からは人が消えていく。
一方、すべてを失ったはずのリディアナは、静かに身を引きながらも、崩れていく彼らを冷ややかに見つめていた。
選ばれただけでは、何者にもなれない。
肩書きだけでは、人は支えられない。
そして、誰かを踏みにじった代償は、ゆっくりと、けれど確実に返ってくる――。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が自ら騒がず、
勝ったつもりだった王太子、義妹、継母が、静かに自滅していくざまぁ恋愛譚。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
妹の方が好きらしい旦那様の前からは、家出してあげることにしました
睡蓮
恋愛
クレアとの婚約関係を結んでいたリビドー男爵は、あるきっかけからクレアの妹であるレイアの方に気持ちを切り替えてしまう。その過程で、男爵は「クレアがいなくなってくれればいいのに」とつぶやいてしまう。その言葉はクレア本人の耳に入っており、彼女はその言葉のままに家出をしてしまう。これで自分の思い通りになると喜んでいた男爵だったのだが…。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
『めでたしめでたし』の、その後で
ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。
手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。
まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。
しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。
ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。
そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。
しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。
継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。
それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。
シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。
そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。
彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。
彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。
2人の間の障害はそればかりではなかった。
なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。
彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる