【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

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第27話 パーティー


◆◆◆


「ふっふっふ……パーティーですって!  お気に入りのドレスを持ってきて正解だったわ~!」

 私、エリシアは部屋で荷物を整理しながら笑いが止まらない。
 プロウライト国に到着した次の日。
 なんと、今夜!
 私たちを歓迎するパーティーを開いてくれると朝食の後、伝えられた。

(歓迎パーティー!  昨日の今日ですぐにこんな手配をしてくれるなんて!)

 ジュラール殿下……
 さすが、真面目で優秀で完璧王子と謳われるだけあるわ。
 気配りが完璧ね。

「妃が決まらずに残っているのが第一王子の方で良かったわ~~」

 自由奔放でいい加減な第二王子だったら即お断りよ。第二王子じゃ未来の王妃にもなれないしね。

(昨日、挨拶の場に第二王子はいたわね)

 子供のときの集まりには不参加だったから、昨日初めて顔を見たけれど……さすがジュラール殿下との双子。顔だけはいい。
 いつの間にか婚約者とは結婚していたようで、その妃は第二王子に腰を抱かれていた。

(第二王子の妃は、平凡って言葉がピッタリ合いそうな妃だったわ)

 毒にも薬にもならなそうな平凡な妃。
 これなら、私が王太子妃になっても驚異にはならず、大丈夫だと確信した。

「侯爵家の出身の令嬢だか何だか知らないけど、よくあんな悪い噂の王子と結婚したわよね……政略結婚なのかしら?  可哀想~」

 私は違うわよ。
 ちゃんと愛されて結婚するんだから!

「そのためにもパーティーでは積極的にジュラール殿下迫らないといけないわね。邪魔なシンシアは──……ま、大丈夫でしょ」

 パーティーにはシンシアも参加するという。
 ようやくのご対面ってわけだけど。
 昨日たっぷりとシンシアの悪い所を語っておいたから皆、どんな顔でシンシアを迎えるのかしらね。

(楽しみだわ~)

 そして、シンシアの目の前でジュラール殿下と私がいい雰囲気になればあの子のことだから、あっさり身を引くに違いない。
 ───そうして“当て馬姫”の記録更新よ。
 むしろ、ダラスを返してあげるだけ優しいと思って欲しいわね。

「なんて楽しみなパーティーなのかしら~~ふふふふふ」

 何も知らないエリシアは、派手なドレスを握りしめて愉快そうに笑っていた。



◇◇◇



「お化粧は派手すぎす……でも、シンシア様の美しさ、可憐さがより際立つように!」
「ドレスも派手さはないですけど……すごいいい生地……!  シンプルデザインなので様々なアレンジが可能……素敵!」
「髪型はフワフワは活かしたいわね」

 パーティーの前。
 支度をしてくれている王宮の侍女たちが、わたくしにお化粧を施しながらずっと興奮している。

(不思議……昔から、こうやってわたくしを着飾ってくれようとする人は皆、こんな感じで興奮しているのよね)

 サスティン王国の侍女たちもそうだった。
 国は違っても、皆こうして人を綺麗に着飾らせることが好きなのね、と思ってニコニコしていたら侍女の一人が頬を赤く染めながら訊ねてきた。

「シンシア様、嬉しそうですね?」
「ええ!  だって、こうしてとても可愛くしようとしてくれるんだもの。嬉しいわ。ありがとう!」

 わたくしが笑顔でそう言うと皆、どこか眩しそうに目を細めた。

「天使スマイル……」
「……天使がいる」

(……ん?)

 天使……がなんのことなのか気になったけれど、わたくしはそのまま続ける。

「そ、それに今日は……」

(ジュラールとイチャイチャするパーティーだから……)

「今日は……なんですか?」
「ジュ、ジュラールに、す、少しでもわたくしのことを可愛いと思ってもらえたら嬉しいなって……」
「「シンシア様ーーーー!」」

 わたくしが照れながらそう答えたら、侍女たちはまたしても興奮し始めた。

 ──可愛い、可愛い、可愛い……!
 ──え、ジュラール殿下……何してるの?  プロポーズは?  まさか逃す気なの?
 ──ヘタレ王子やってる場合じゃないわよね!?


(えっと……?  すごい早口で全然聞き取れない……)

「シンシア様!」
「は、はい?」
「──私たち頑張りますから!  会場の誰もが可愛いと声をあげるような可憐なシンシア様になるように!  ……そしてジュラール殿下をメロメロにしちゃいましょうね!!」
「メ、メロメロ!?」
「はい!  あー、腕がなります!」

(えぇ!?)

 さすがのジュラールもメロメロになんてならないと思うわ。
 というわたくしの言葉は侍女たちのやる気と気合いに押し込まれて届かなかった。



◆◆◆


 パーティーはもうすぐ開始時刻を迎える。
 僕はずっと朝からソワソワしていて落ち着かなかった。

「ジュラール?  落ち着いて?」
「エミール様、殿下はもう、ずっと立ったり座ったりを繰り返しているわ」
「そうなんだよ」

 エミールとフィオナ妃が呆れた顔で僕を見ている。

「わ、分かっているんだが……」

 今日は朝からバタバタしていてシンシアとはずっと顔を合わせていない。
 いや、昨日の「イチャイチャしてください!」「好きにしてください!」
 あのとんでもない発言の後からまともに会えていない。

(好きにしていいだと?  全くなんてことを口にしてるんだ……!)

「公認でイチャイチャ出来るなら、興奮はするよね」

 エミールがいいなぁ、という目で見てくる。
 隙あらばフィオナ妃とイチャイチャしているくせに何を言う!
 だが、今は先輩のエミールしか頼りになる人がいない。

「シンシア……本当に好きにして嫌われないかな?」
「ジュラールらしくないなぁ。そうだ!  もう皆の前でプロポーズすれば?」
「ぐっ……!」

 ちょっと弱気になっていた僕にエミールが更にとんでもない提案をする。

「素敵!  それなら、歓迎パーティーから婚約披露パーティーに変えちゃう?」

 それに乗っかるフィオナ妃。

「ま、待て!  こ、断られたらどうするんだ!」
「でも……ジュラール一度振られたくらいで諦められるの?」
「無理だ!」

 僕の好みのど真ん中の容姿で、性格まであんなにいい子とは二度と出会えない。
 シンシアとならこの先何があっても僕は頑張れる!
 何より、僕がこの手であの可愛らしい笑顔を守りたい。

「大丈夫。ジュラールのその気持ちはちゃんと届くよ」
「……」

 僕は静かに頷いた。

「それで?  入場はシンシア姫とは別々なんだっけ?」
「ああ。その方がエリシア王女たちは油断するだろう?  だから、シンシアにはちょっと遅れて会場に入って来てもらう」

 きっと、あの姉王女のことだから昨日の出迎えで僕とシンシアは上手くいっていないと思っているはずだからな。
 一緒に入場せず、僕からエスコートを受けていないシンシアを見てますます、自分の考えが当たっているとあの王女なら思い込むはずだ。

「シンシア様のエスコートは誰がするの?」
「アクィナス伯爵だ」
「まあ!  お祖父様が!?」
「だって……伯爵なら守りも完璧だろう?」

 その言葉にエミールとフィオナ妃が「それは確かに」と頷く。
 守りは必要だ。
 あのダラスとかいう男がシンシアに近付く可能性も捨てきれないからな。



────



「ジュラール殿下!  本日は私たちのためにありがとうございます!」
「……エリシア王女殿下」

 パーティーが開始するとすぐに僕の元にエリシア王女が婚約者と共に駆け寄ってきた。
 その姿を見て真っ先に思った。

(随分と華美なドレスだな……)

 そんなエリシア王女とダラスはキョロキョロと辺りを見回す。
 そしておそるおそる訊ねてきた。

「と、ところで、シンシアは……」
「ああ。ちょっと遅れているそうだがもうすぐやって来る」
「そうなんですね?  良かったです…………ふふ」

 王女は嬉しそうに僕のそばに擦り寄ってくる。
 あまりにも露骨過ぎて鳥肌が立った。
 そして思う。

(やっぱり僕の最も嫌いなタイプだ……)

「…………と、ところで、ジュラール殿下!」
「……」
「シンシアとのお見合いの件ですけど~」

 エリシア王女がそう言いかけた時、会場の入口が騒がしくなった。

(───来た!)
  
「え?  なに……」

 エリシア王女もダラスも気になって入口に顔を向ける。
 その視線の先に現れたのは───

「え……?  シ、ンシア……?」

 エリシア王女が、目を大きく見開いて驚きの表情を浮かべながら呟く。
 そう。
 もちろんこの場に現れたのは、伯爵にエスコートされた僕の愛しいシンシアだった。

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