【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

文字の大きさ
32 / 49

第32話 プロポーズ



「ジュラール?」

 急にどうしたのかしら、と思って早く立ち上がるように促そうと思った。
 だけど、顔を上げたジュラールの真剣な瞳を見てわたくしは固まった。

「……シンシア」
「えっと、あ、あの……?」

 戸惑うわたくしを見て、ジュラールは甘く優しい微笑みを浮かべる。
 そして、そのままジュラールはそっと手の甲にキスを落とした。

(え、えぇぇえぇえ!?)

 そのままジュラールは顔を上げる。その顔は微笑みが消え、真剣な面持ちだった。

「───シンシア・サスティン王女」
「え?  は、はい!」

 急にかしこまって名前を呼ぶなんて……本当にどうしたの?  と思った時だった。

「好きだ───シンシア。僕は君のことが好きだ」
「──!?」

 わたくしが驚きいっぱいに目を見開くと、ジュラールの真っ直ぐで真剣な瞳と目が合った。

(嘘や冗談……なんかじゃない。この目は……本気、だわ)

 すると、ジュラールは次に柔らかく微笑んだ。
 わたくしの胸がドキッと跳ねる。

「シンシア……君と初めて会ったのは子どもの頃だったね」
「え?」
「会ったのはその時の一度だけだったけれど、キラキラしていたシンシアのことは覚えている」
「ち、違うわ!  ……キラキラしていたのはジュラールよ?」
「ははは、シンシアは僕を“王子さま”と呼んでくれたもんね」

(お、覚えていたの!?)

 恥ずかしい……
 何度思い返しても恥ずかしい。

「その時のキラキラした純粋な目や、はしゃいでいる姿がとっても可愛い……そう思ったんだ」
「か、可愛いって……」

(は、はしゃいでいたのはとっても素敵な“王子さま”を見つけたから……)

「そうして今回、僕との縁談の話が持ち上がり、プロウライトにやって来た君は、ますます美しく綺麗になっているのに中身も変わらず可愛くて可愛くて……とにかく可愛くて……」
「っっ!」

 ジュラールの口にする“可愛い”の多さにわたくしの顔が赤くなる。
 そんなわたくしを見てジュラールが笑う。

「そうしてすぐに赤くなって照れた顔も好きだ」
「ジュラー……」
「海で無邪気にはしゃいでいた時の楽しそうな笑顔も好きだ!」
「……ル」
「何事にも真っ直ぐで一生懸命なシンシア……君が好きだ……大好きで大好きで大好きなんだ」

 ジュラールが畳み掛けるように“好きだ”と言うので、ますますわたくしの顔は赤くなる。

「でも…………君に恋をした僕は、本当にポンコツに成り下がっていて」
「え?  ポ、ポンコツ……?」
「そうだよ。まともに告白の一つも出来ない情けない男……真面目で優秀……完璧王子……これまで作り上げたはずの顔がシンシアといると簡単に崩れてしまうんだ」

 そう言ってジュラールが恥ずかしそうに笑う。

「でも、それが本当の僕。シンシアといると、僕は“本当の僕”でいられる」
「あ……」

 ───ピリッ!

 わたくしの手を握るジュラールの手にギュッと力が入る。

「───シンシア。どうか僕の妃になって欲しい」
「ジュラ……」
「僕は君を望んでいる!  これからの人生をシンシアと一緒に生きていきたい!  だから、どうかこの先も僕の隣にいてくれないか?」

(ジュラールが……わたくしを妃に……?)

 これは夢……夢なのかしら?
 もちろん、ジュラールに妃に選んでもらえるように頑張ることには決めた。
 だけど、わたくしはまだまだダメダメで……

「シンシア……心配はいらない」
「え?」
「確かに僕のこの手を取ると、将来はこの国の王妃に……そんな重圧を背負わせてしまうことにはなる」
「……」
「でも、シンシアは一人じゃない」
「一人……じゃない?」

 わたくしが聞き返すとジュラールはチラッと視線を後ろに向けた。
 その視線の先にいるのは……エミール殿下とフィオナ様。

「……!」

 ジュラールの顔は“あの二人がいるって、最強だろう?”そう言っている。
 そこは“僕がいる”ではないのね?

(でも、それがジュラールらしい!)

 思わずクスッと笑ってしまった。

「シンシア……」

 ジュラールは立ち上がるとそのままわたくしを抱きしめた。

 ───ピリリッ!
 その時、これまでで一番大きな電流が身体に流れた。
 わたくし達の身体がほぼ同時にビクッと跳ねた。

「ずっとずっと僕が探していた運命の人は君だ、シンシア───愛している」
「……んっ」

 ジュラールが身元でそんなことを囁くものだから、頭がおかしくなりそう。
 でも、わたくしだってちゃんと伝えなくちゃ。

「ジュラール……あの」
「うん」
「わたくし……はここには“初恋の王子さま”に会いに来たのです……」
「え?  初恋……?」

 ジュラールが、きょとんとした表情になる。
 どうやら分かってないみたい。

「王子様に向かって“王子さまみたい”なんて、バカなことを言ったわたくしに優しくしてくれた王子様にですよ?」
「ん?  それって……?」
「わたくしの……初恋です、ジュラール」
「……」

 間を置いたジュラールの顔が一瞬で真っ赤になる。

「え、ええぇえ!?  待っ、いや……え?」
「……初恋の王子さま……は真面目で格好よくて“完璧”でした」 

 その言葉にジュラールがハッとする。

「で、ですが……わたくしが今……好きなのは目の前にいる“あなた”です、ジュラール」
「……シン、シア?」
「この国に来て数日。ジュラールと共に過ごしながら、わ、わたくしは、は、初恋の人にまた新たに恋をしました」

 ジュラールの目が大きく見開く。

「真面目で優秀で完璧じゃなくたって構いません。ポ、ポンコツ?  どんと来いです!  だってジュラールはジュラールですもの!」
「シンシア……」
「わたくしに足りないところはこれから一生懸命頑張ります……ですから───」

 わたくしはギュッとジュラールの背中に自分の腕を回す。

「この先、あなたの隣にいるのはわたくしでありたい……です!」
「……!!」

 ボンッとジュラールの顔がさらに赤くなった。
 そんなジュラールは、強く強くわたくしを抱きしめ返す。

「──もちろんだ、シンシア以外は要らない!  僕の妃は君だけだ」

 その言葉が嬉しくてわたくしはとびっきりの笑顔をジュラールに向けた。
 すると、ジュラールも嬉しそうに笑い返してくれた。

「……シンシア!  また一緒に海に行こう?  今度は手を繋いで!」
「はい!」
「それから、街にも行こう!  僕が案内するよ。この国には美味しいものが沢山あるんだ。シンシアにもぜひ味わって欲しい!」
「はい!!」

 ───嬉しい!
 ジュラールとこの先を“約束”出来ることが、たまらなく嬉しい。
 これから先もずっと一緒にいられる───
 そのことを想像して微笑み合っていたら……

「───う、嘘だぁぁ!  シンシア、何でだ、俺っは………………ゴフォッ」
「軟弱小僧!  見て分からんのか!  今は超絶いいところなんだぞ!  邪魔をするなっ!!」

 突然、叫び声を上げたダラスをすかさず伯爵がムキムキの腕で殴ってその場に沈める。

(……い、痛そう……)

 すごい瞬間を目撃してしまったわ……ダラス、生きてる?
 そう思った時、ようやくわたくしはお姉様の存在を思い出した。

(いけない!  また、忘れてしまっていたわ!)

 ジュラールとの二人の世界に入ると、どうも存在を忘れがちになってしまう。

 ───お姉様の目的がなんであれ、わたくしはジュラールとこの国で生きていくんだから!
 絶対に負けない!
 そう思ってお姉様に視線を向けた。

感想 358

あなたにおすすめの小説

夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?

里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。 そんな時、夫は陰でこう言った。 「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」 立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。 リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。 男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。 *************************** 本編完結済み。番外編を不定期更新中。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

(完結)私はもう他人です!

青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。 マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。 その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。 マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・ これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。