40 / 49
第40話 公開……
(……思っていたより人が多いわね)
今日は私の公開聴取の場。
お父様が言うには、私に聞きたいことがある人たちが多くいるからってことで、ジュラール殿下の余計な入れ知恵のせいで開催が決まったとのことだけど。
(これ、傍聴だけの人数もかなり集まっていないかしら?)
コソッと覗いた様子だと、かなり多くの人が集まっている。
私は改めて自分の人気というものを実感した。
(そうよ……やっぱり私はみんなの人気者よ)
プロウライト国から帰国してから、お父様やお兄様の様子がおかしかったり、周囲も何か言いたげにこっちを見ていたりするけれど、きっと、気のせい。
そんなことを考えていたら、会場にシンシアが入って来る。
もちろん、隣にいるのはジュラール殿下。
そして、控えるはあの極悪人顔のムキムキ護衛……
(最近はシンシアに全然、近付けないのよね)
シンシアとジュラール殿下の婚約の話は着々と進んでいるという。
その座は私が代わりに座るはずだったのに……そう思うととにかく腹が立ってしょうがない。
(こういう腹が立つ時はシンシアを虐めてスッキリしてきたのに……)
シンシアは悪意に鈍いから告げ口もしないので、スッキリするのにちょうど良かった。
だから、これまでみたいに優しくする振りをしてさり気なく嫌味攻撃とかしてやりたいのに、今のシンシアはがっちり守られていて隙がない。
ジュラール殿下はシンシアを片時も離そうとしなかった。
それでも今なら! って時を見つけてシンシアに近付こうとすると、今度はあの極悪人顔のムキムキした護衛伯爵が、どこからともなくあの筋肉を揺らして猛スピードで飛んでくる。
護衛の鏡すぎる……
(どういう勘をしているのよ!)
おかげで苛立ちばかりが募っていく。
我が国とは比べ物にならない大国の王子との婚約が決まったシンシアは今や国民の中で大人気。
もともと顔だけはいいシンシアの人気は高かった。
それを陥れるため苦労してせっかく広めたはずの“当て馬姫”の名が、今は完全に霞んでしまっている。
(……この公開聴取では何としても優しい姉を演じつつ、シンシアの評判を落とさないと……!)
ジュラール殿下をシンシアから奪うのが無理なら……
せめて、これからの二人の仲がギクシャクするような所までは持っていきたい。
そう思ってシンシアとジュラール殿下の方を見ると……
(また、イチャイチャしてやがるわ!)
ジュラール殿下がシンシアの耳元で何かを囁いた。(イラッ)
すると、シンシアの顔が一瞬で赤くなる。(イラッ)
照れたシンシアを見て殿下が優しく笑う。(イラッ)
そして今度はシンシアが反撃に出てジュラール殿下に向かって手を伸ばして頬に触れる。(イラッ)
すると、今度は頬に触れられた殿下の顔が赤くなって───
最高潮にイライラしながら私は自分の唇を噛んだ。
─────
「エリシアに聞きたい。シンシアがプロウライト国に向かう際にルート変更の話が漏れていた件だが……」
そうして始まった公開聴取。
お父様からは、この間、どうにか納得してもらったはずの話を掘り返された。
「お、お父様! その話はもう……私がうっかりしていたという話で終わったはずですわ!」
「……エリシア。そうだな。確かにその時はそれで納得した。だが……」
お父様の神妙な顔にゴクリと唾を飲む。
「───実は全てエリシアが最初からわざと仕組んだ話ではないのか? そんな疑問の声が上がっているのだ」
「なっ!」
(どうして!?)
お父様のその発言に傍聴している人たちがざわついた。
「シンシアのプロウライト国訪問での予定ルートの変更報告漏れは、一歩間違えれば大惨事だった。シンシアが機転を利かせてくれたおかげで、事故も回避し予定も大きくずれることなく事は進んだが……」
「……」
あれは本当に驚いた。
シンシアは私が考えていたのと違う行動ばかり取りやがって……
「あのまま、当初のルートを辿っていたら我々はどうなっていたか……そんな苦情が護衛騎士たちから入っておる」
「……は?」
「本当にわざとではないのか? エリシア」
「……な」
なんで済んだ話を蒸し返すのよ~~
しかも、騎士たちからですって? 最悪じゃない。
「あ、当たり前です、お父様! どうして私がそんな可愛い妹を苦しめるような真似をする必要が?」
「……」
「シンシアはとっても可愛い可愛い私の妹なのよ?」
この発言の時は、少し目を潤ませて必死に訴えるのがコツ。
プロウライト国では上手くいかなかったけど、ここ……サスティン王国なら大丈夫!
これでだいたい皆、私を信じてくれる────あれ?
(どうし今日はてまだ、こんなに視線が冷たいの?)
すると、お父様がふぅ……とため息を吐いた。
その瞳はどこか悲しそうにも見えた。
そんなお父様の横ではお兄様も頭を押さえている。
……この反応は…………何?
「……エリシア。お前はいつもそうやってシンシアを可愛い可愛いというが、本当にそう思っているのか?」
「……え?」
「その……実はこんな意見もあってな」
「い、意見?」
お父様にそう訊ね返す自分の声が震えている気がした。
「そうだ。───エリシアはいつもシンシアのことを可愛い妹だと口にするが、あまりにもその発言回数が多いし、何だか薄っぺらく感じる。本当に可愛い妹と思っていますか? とな」
「────!」
(う、薄っぺらい!?)
どうしてよ?
これまではそんなことを言い出す人なんていなかったじゃない!
お父様たちだって、いつも私は優しくて妹思いだなぁって目で……
そこでハッと気づく。
そういえば、今日はお父様たちの私を見る目が違う。
(つまり、この意見を耳にしたから!?)
誰なの? いったい誰なのよ! そんな余計なことを言い出したやつは!
「───エリシア。色々と人に聞いてみたのだが……どうやら本当に妹が可愛いと思っているなら、わざわざそんな言い方はしないそうだ」
「え……? は?」
「もちろん言葉が必要な時もあるが、こういう人を大事に思う気持ちは言葉になんてしなくても、自然と態度に出るものだ、とな」
「たい……ど?」
「だが、エリシアからの態度はどうも……だから、不自然ではないか、と。そういう話だ」
私の背中を冷たい汗が流れていく。
なぜ? なぜ、急にこれまで築き上げたものが崩れていこうとしているの?
焦った私がキョロキョロと辺りを見回すと、そこでバチッと目が合った人がいた。
目が合った瞬間、その人の口角が微かに上がった気がした。
「────っ!」
その男はとても私のことを冷ややかな目で見ていた。
シンシアの前では優しく微笑んだり、照れて赤くなったりしているのに────
全然違う。
(どうしてそんな目で私を見ているの?)
その男────ジュラール殿下が私に向ける視線は、明らかに“敵意”だった。
あなたにおすすめの小説
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます
タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。
領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。
奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。
(完結)私はもう他人です!
青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。
マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。
その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。
マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・
これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)