【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

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第43話 ショックで豹変する姉王女



 伯爵は、強くなりたいと言ったわたくしのために色々教えてくれた。
 そして、お姉様に精神面だけではなく物理でもボコボコにする気があるならと、その時の注意までしてくれた。



『もし、大勢の前でその拳を使って姉王女をボッコボコにしたいのなら、先に相手に攻撃させるんだ』
『先に……?』
『そうだ!  絶対にシンシア王女の方から先に殴りかかっては駄目だ』

 伯爵は厳しい顔でそう言った。
 もしもわたくしが先に殴ってしまった場合、お姉様みたいな性格の人は必ず被害者面をして大きく騒ぎ立てるから、と。

 ───私は何もしていないのに……シンシアがいきなり殴って来たのよ!  ほら、皆も見たでしょう?  酷いわ、シンシア……!

(なるほど……)

 大勢の前でそう喚き散らすお姉様の姿が容易に浮かんだ。

『……確かにお姉様は特に騒ぎそうです』
『そうだろう?』
『だから、必ず誰が見ても正当防衛だという状態を作り上げろ!  そして───』




(────そこで、防御すると見せかけて渾身のパンチを喰らわせるんだ!)

 ですよね、伯爵?
 伯爵の教えを思い出しながら、わたくしは振り下ろされたお姉様の手を避けて、代わりに自分の拳をお姉様にぶつけた。


 ……メリッ
 何だか変な音と、思っていたのと違う感触がした(気がした)

(────あ!)

 お姉様の身体を狙ったはずのわたくしの拳は、思っていたよりお姉様の動きが大きかったせいなのか身体ではなく……

(大変!  顔……を殴ってしまったわ!)

 ゴフッと変な声がしてお姉様がその場から軽く吹き飛んだ後、よろけてドサッと倒れ込んだ。

「……」
「……シ、シンシア!  手……手は大丈夫か───」

 ジュラールがわたくしの手を取ると優しくさすってくれる。
 その向こうでは伯爵がとてもいい(厳つい)笑顔で頷いてくれた。
 その顔はいい拳だった……
 そう言ってくれている気がする。

「だ、大丈夫です……けれど、さすがにわたくし自身がびっくりしてしまいました」
「うん。すごい華麗に決まったから、僕もついつい見惚れちゃったよ」

 ジュラールがうっとりした顔でそんなことを言う。

「み、見惚れ……」
「そういえば、あの男も吹き飛んでたし、シンシアは見た目以上に力があるのだろうか?」
「どうなんでしょう……?」

 それに、ダラスもお姉様もたまたま上手くいっただけのような気も……
 なんて、そんな話をジュラールとしていたら、お姉様がムクりと起き上がった。
 わたくしの拳が入った頬を手で押さえている。

「……」

 最初はポカンとしていたお姉様だったけれど、徐々に何が起きてこうなったのかじわじわと来たのか怒りの形相となり、ついには怒鳴り始めた。

「────こんの……あんた!  シンシア!  この私に向かってなにしてんのよっ!」
「お、お姉様……?」
「殴ったわね!?  ……ざけんじゃないわよ!」
「……え、え?」
「この……〇×△□~~!!   お前なんか───……」

(ええーーーー?)

 これまで聞いたことのない口調と言葉遣いのお姉様の姿にわたくしは、心の底から驚いた。
 だけど、驚いているのはわたくしだけじゃない。
 お父様もお兄様も、あと滅多なことでは動じないお母様も目を大きく見開いてお姉様のことを凝視している。
 もちろん、公開聴取に来た人たちも……唖然とした様子でお姉様のことを見ていた。

(は、半分以上、お姉様が何を言っているのか分からなかったわ……)

 そんな呆然とするわたくしの横でジュラールがコソッと耳打ちする。

「すごいな、これはもう完全に姉王女の化けの皮が剥がれているよ」
「は、剥がれたというより……」

 まるで別人のよう。
 そんな会話をしている間もお姉様はわたくしに向かって怒鳴っていた。

「シンシアなんて───昔からちょっとだけ私より顔が可愛いからっていつでも調子に乗りやがって!」
「……!」
「───そうそう。いつだったかしら?  お父様がとても大事にしていたガラス細工、あれ割ったの私なのよ?  なのに泣きながらシンシアがやったのって言ったら皆、簡単に信じちゃって……ふふっ」

 あれは冤罪だった。
 違う、知らない、わたくしじゃない、と言っても聞いてもらえなくて……結局、わたくしが怒られた。

「あの頃からだったかしら?  私、思ったのよ。シンシアは使える子だってね!」
「!」
「そうしたら、本当に私の思惑通り!  みーんな騙されてるの。バカよねぇ」

 オーホッホッホと高笑いするお姉様。
 もはや、興奮しすぎて、自分が何を口走っているのか分かっていないのではないかと思う。
 お姉様に向けられる目は、しらけていて冷たい目ばかりなのに、お姉様は全く気にすることなく、これまで繰り広げてきた自分の悪事について自慢げに語り始めた。

 皆の前で自分のしたことを認めてください、とは言ったけれど……
 わたくしが想像したのとは違う形でお姉様の本性が皆の前で暴かれていく。

(……ああ!  お父様が……!)

 また、お姉様の変貌ぶりに相当ショックを受けたのか、お父様がどんどん項垂れていた。

「エリシア!  落ち着け!」
「離してよ、お兄様!  ポンコツ王子のくせに口を出さないで!」
「なっ、ポン……」

 項垂れて尋問どころではなくなったお父様の代わりにお兄様がお姉様の元に近付いて、止めようとしていた。
 だけど、お姉様は家族───お兄様の言うことすらも聞こうとしない。
 さらにあろうことか、お兄様にまで暴言まで吐く始末。

 その光景を眺めていたらジュラールが言った。

「よっぽど、シンシアに殴られたのがショックだったんだろう」
「わたくしに?」
「エリシア王女は、いつだってシンシアを貶めて自分が優位に立ちたかった。なのに格下だと思っているシンシアに殴られ無様に吹きとんで倒れ込んだ……かなり屈辱だったんじゃないか?」
「……お姉様」

 チラッとお姉様を見ると、もう誰がどう聞いても“妹思いの姉”が口にするとは思えないような顔でわたくしを罵っていた。

「伯爵の言うように、単なる嫉妬が始まりだったということだな……見苦しい」

 ジュラールは吐き捨てるようにそう言った。

(さすがにこれで、皆のお姉様への見かたも変わったはず……)

 そう思ってわたくしは集まっているの人たちの反応を確かめた。

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