【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

文字の大きさ
47 / 49

第47話 意外と過激派でした



「シンシア……!  い、色々と、す、すまなかった……」
「ダラス……」

 今、わたくしの目の前で、ダラスが額を床に擦り付けそうなほどの勢いで頭を下げている。

(突然現れていきなり頭を下げられても……わたくしにどうしろと?)

 そんな思いでわたくしの横にいるジュラールに視線を向けると、何だかとてもいい笑顔で微笑まれた。

(……ええっと?  面白いからそのまま放っておけ?)

 ジュラールのそんな心の声が聞こえた気がした。



 訪問者はジュラールかもとドキドキして期待していたところ、応対した侍女はわたくしにこう言った。
 ───ジュラール殿下とディフェルト公爵令息がお越しです、と。
 どういう組み合わせ!?
 そう思って慌てて部屋の入口に向かってみれば……
「シンシア!」といつもの優しくて甘い笑顔を向けてくれるジュラールと、その横でお腹を押さえて苦しそうにしているダラスがいた。



「……ジュラール」
「うん?」
「これは、どういう状況なのですか?」

 突然現れたダラスは、わたくしの姿を認めるなり、突然の謝罪を始めた。
 わたくしとしては……
 なぜ、二人揃って部屋に訪ねてきたの?  とか、なぜ、ダラスはお腹を痛そうに押さえていたの?  などなど、気になることがたくさんありすぎた。
 すると、ジュラールが説明してくれる。

「……シンシアと別れて部屋に戻ろうとしたのだけど」
「はい」
「なんて言うのかな……悪い予感?  虫の知らせ?  とにかく、今すぐ自分の部屋ではなく、シンシアの元に行くんだ!  そんな衝動にかられたんだ」
「え……」

 まるで何かのお告げのようだわ、と思った。

「それで、慌ててシンシアの部屋の前まで来てみれば……」
「みれば?」

 そこで一旦言葉を切ったジュラールがチラリとダラスに視線を向けて見下ろす。
 ちなみにダラスは“顔を上げていい”とわたくしが口にしていないため、まだ、床に頭を下げたまま。

「そこの男がシンシアの部屋の前でチョロチョロしていてね……」
「なっ……」

 わたくしもダラスに視線を向ける。
 頭を下げたままのダラスの身体はビクッと震えた。

「この期に及んで、まだシンシアを諦めていなかったのかと思ったら、ついつい手が自然と動いていたよ……」

 ジュラールはそう言って自分の拳をわたくしに見せた。

(なるほど!  ダラスがお腹を押さえていたのはそういう……)

 伯爵が見たらさぞかし喜んだでしょうね……と思った。

「それで、まぁ……倒れこんだ所を起き上がらせて、何をしているんだと問い詰めたら」
「わたくしに謝罪に来た……と?」
「まぁ、その男の言い分はそういうことらしいけど──」

 ジュラールが面白くなさそうな顔をする。

「僕という婚約者がいる女性……しかも王女の元を、下心もなく普通は訪れたりしないよなぁ、と思ってね」

 本当に油断も隙もない……とジュラールはダラスを睨みつける。
 ジュラールも思っていたよりも過激派だったわ、という事実に驚きながら、わたくしはふぅ、とため息を吐いてダラスに声をかける。

「一応、あなたからの謝罪はもう受けていたはずですけど?」

 お姉様がスクワット百回の刑をしていた時に、わたくしが受け続けた謝罪の中にはダラスもいたはずだ。
 そんなわたくしの質問にダラスがピクッと反応した。

「……っ!  そ、それだけでは足りない……と思っ……」

(ああ、そういうこと……)

「───ディフェルト公爵に言われたのね?  わたくしにもう一度謝って許しの言葉をもらって来い……と」
「───!」

 ダラスは分かりやすく身体を震わせた。

(やっぱりね)

「わたくしとの婚約を白紙にしてまで選んだはずのお姉様とも婚約破棄……ディフェルト公爵は相当お怒りだったということかしら?」
「……」
「もしかして、わたくしの許しを得て怒りを解かないと廃嫡……も示唆された?」
「…………っ」

 ダラスは答えない。
 でも、その無言状態こそが肯定しているも同然だった。

 わたくしは、みんなからの謝罪を受けた時、家族も含め誰に対しても“許す”とは一言も口にしなかった。
 だから、みんな今も“シンシア王女はお怒りのままだ”と思っている。

 そして、そんな許しの言葉が得られなかった彼らが最も恐れているのは、“サスティン王国の第二王女”の怒りではない。
 “プロウライト国の未来の王妃”の怒りを恐れている。

 ジュラールの手を取って横に立つというのはこういうこと……
 それなら、わたくしはもっと強くならなくちゃ、と更に思わされた。

「ダラス。何度頭を下げられても今、私があなたに言えることは、先程と変わらないわ」
「……っ」
「あなたは、お姉様がわたくしのことを“当て馬姫”と呼び始めたことを知っていたのだから。その事実は消えないわ」
「……くっ……す、すまない……」

 伯爵による筋力トレーニングのおかげ?  で、少し目が覚めたらしいダラスは公開聴取の場で、お姉様がわたくしのことを“当て馬姫”と呼び始めた時のことを証言してくれた。
 そこから更にお姉様への風当たりは強くなったわけだけど……

(許す許さないはまた別の話……)

 わたくしが彼らを許すかどうかは、この先の行動次第だと決めているから。


─────


 思った成果を得られなかったので、落ち込みながらすごすご帰っていくダラスの後ろ姿を見送っていたら、後ろからジュラールに抱きしめられた。

「きゃっ!?」
「……シンシア」
「もう、ジュラールったら……どうしたの?」

 ジュラールはギュッと強く抱きしめてきた。
 同時に身体にもピリッと刺激が走る。

「僕は、やっぱりシンシアが好きだなぁって改めて思っていたところだ」
「なっ!?  なにを急に……」

 突然のそんな言葉に頬がジワジワと熱を持っていく。

「そうやってすぐに赤くなるところなんて、たまらなく可愛いし……」
「~~~っ」
「シンシア…………大好きだ」

 耳元でそんな愛情こもった言葉を囁かれたのでわたくしは腰が砕けそうになってしまう。
 そこをなんとかジュラールが支えてくれた。

「わ、わたくしも……ジュラールが、大好き……」
「───うん」

 ジュラールは照れながらも嬉しそうに笑ってくれた。
 そうして、わたくしたちは見つめ合うとそのままそっと唇を重ねる。

(出発の準備……しなくてはいけないのに……)

 頭の片隅にそんな考えが過ぎるも、目の前の愛しいヒトには勝てず、そのまま甘い甘い時間に突入した。




 ───そうして、翌日。
 わたくしたちはプロウライト国に向けて出発……
 その道中、わたくしは思い切って伯爵にお願いをしてみた。

「むっ?  帰国したらリアに会いたい?」
「は、はい!  ぜひ。それから愛読書?  も読んでみたいのです」

 わたくしがそうお願いしたら、伯爵は「リアが喜ぶ!」と、とても厳つい顔で嬉しそうに笑ってくれた。
 伯爵夫人に会える許可を貰えたので、ジュラールにプロウライト国に着くのが楽しみ!  と笑顔で言ったら、なぜか苦笑されてよしよしと頭を撫でられた。

感想 358

あなたにおすすめの小説

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?

里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。 そんな時、夫は陰でこう言った。 「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」 立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。 リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。 男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。 *************************** 本編完結済み。番外編を不定期更新中。

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

(完結)私はもう他人です!

青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。 マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。 その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。 マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・ これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。