【完結】やり直しの人生、今度は王子様の婚約者にはならない……はずでした

Rohdea

文字の大きさ
28 / 38

27. やらかした二人



(ああぁぁ……)

 私は内心で嘆いていた。
 よりにもよってここで、登場するのが何でランドルフ殿下なの。
 もっと来るべき人がいるでしょう……

《お……おねえちゃん……こ、こわいひときた》
《っ!  だ、大丈夫よ、驚かせてしまってごめんなさい》

 怒鳴りながら乗り込んできたランドルフ殿下に脅え始めた彼女を抱きしめながら何とか必死に宥める。 

《おかお……こわい》
《大丈夫だから!》

「……ったく、声を荒らげてどうしたんだ?  フリージア……嬢?」
「ランドルフさ…………コホッ、殿下ぁ~聞いてくださいーー、突然そこの子供が私のドレスに汚い手で触ろうとしてぇ……」

 フリージアが甘ったるい声で、えーんとランドルフ殿下に泣きつく。
 違うと言ったのに!
 まだ、そんなことを言っているのかと私は反論した。

「フリージア!  そうじゃないと言っているでしょう!?」
「えー?  でも、お姉様。そんなことを言われても、私にはその子が何を言ってるのかさっぱり分からないんだもの」

 フリージアが全く聞く耳を持とうとしない。
 確かにフリージアにはヴェールヌイ王国の言葉は分からないから仕方がないのかもしれない。
 けれど……
 殿下なら!  
 一応、これでも王子だもの……来賓の顔くらい覚えているはず!

(言葉までは理解しなくても、さすがにこの子がヴェールヌイ王国の王族だということくらいなら分かるわよね!?)

 そんな一縷の望みをかけてランドルフ殿下の顔を私は見た。
 しかし……

「は?  どこの子供が紛れ込んだんだ!  子供なんて招待していないぞ。私のパーティーでこんな騒ぎを起こしやがって!」
《……っっ!》
「……!」

 まさかの発言。

(わ、分かってないーー!?)

 おそらくだけど、国王夫妻はこの子はまだ子供だし、ランドルフ殿下に簡単に挨拶だけさせて直ぐに下がらせるつもりだったのだと思う。
 ただ、きっと彼らが目を離した隙にキラキラしたフリージアに惹かれて引き寄せられてしまった。 
 それくらい、フリージアの今日のドレスは気合いが入っていてキラキラと輝いていた。

「───子供なんて私は呼んでない!  つまみ出せ!」
  
 その言葉に私は息を呑む。 

(な、なんてことを言うの!)

「ランドルフ殿下、お待ちください、この方は……!」

 とにかく落ち着いてもらわないと後々大きな問題になる……
 もう遅いかもしれないけれど、これ以上事を大きくしたくない!
 そう思って私はランドルフ殿下を止めようとした。

「うるさい!  フリージアのそのドレスはなんだぞ!?  それを汚い手で触ろうとする者が現れたとなれば子供であろうと黙ってなどいられるか!」

(───ん?)

 何だか今、聞き捨てならない言葉が聞こえた。
 殿下が贈った……?

「本当よ!  せっかくランドルフ様がお姉様には内緒で私の為に手配してくれた最高級のドレスなのに!」

(…………は?)

 私に内緒で手配した……?
 興奮している二人は、自分たちの発言に全く気付いていない。
 だけど、この発言をばっちり耳にしたの周囲の人達も唖然としている。

 ───おい!  聞いたか?  今、ドレスを贈ったと聞こえたぞ!
 ───待て待て……婚約者は姉の方だろう?
 ───どういうことだ?

 一気に騒がしくなる。

(そうよね……今の発言を聞いたら誰だってそう思うわよね……)

 ランドルフ殿下とフリージアのことだから、後々、私にこの話を暴露してショックでも与えるつもりだったのかもしれない。
 だけど……

(今は別の意味でショックを受けているわ……)

 何だかもう、ため息しか出なかった。

《おねえちゃん……まきこんで、ごめんなさい》
「え?」

 私の腕の中で彼女───ヴェールヌイ王国の王女様が震えていた。
 これは、ランドルフ殿下の剣幕にかなり脅えてしまっている。
 そもそもとして王女の目を離したヴェールヌイ王国の人にも文句を言いたい気持ちはある。
 けれど、それはまた別問題。
 今はこの子を落ち着かせなくては。

 私は王女様に向かって柔らかく笑う。
   
《ううん。私こそ、この国の人たちが怖い思いさせてごめんなさい》
《……ううん、だいじょうぶ……》
《でも、痛かったでしょう?》

 だって尻もちついて転んでいたもの。
 見た感じでは怪我は無さそうだけれど。

《びっくりしただけ……あっちのおねえちゃんにもあやまらなくちゃ…………でも》

 王女様の顔が二人には怖くて近付きたくないと言っていた。
 私はそっと王女様を抱きしめる。

《怖がらせてごめんね》
《おねえちゃん……》

 その時だった。

「おい!  ブリジット嬢、いつまで、そんな子供に構っているんだ?  そんな子供はさっさと親に引き渡せばいいだろう!」
「……殿下」

 ランドルフ殿下がチッと小さく舌打ちをする。

「全く、どこの子供なんだ……後で親共々キツく叱っておかねばならないな……」
「ええ!  本当に。私もそう思いますわ!」

 はぁ、とランドルフ殿下が大きな溜息をつき、フリージアが大きく同調した。
 その時───

「はて?  誰が誰をキツく叱るのだ?」
「──もちろん、その子供の両親に決まっている!」
「ほう?  お前が……叱れるのか?」
「当たり前だ、私はこの国の唯一の王子───って、ち、父上!?」

 国王陛下の登場にさすがのランドルフ殿下も驚いたのか声が裏返った。

「何やら騒がしいと思って来てみれば……ランドルフ。これはどういうことだ?」

 陛下が額に手を当てて息を吐きながらランドルフ殿下に事の次第を訊ねる。

「い、いえ、父上。実はそこのブリジット嬢が抱いている子供がですね……」

 ランドルフ殿下が騒ぎとなった理由の説明を始める。
 その説明を聞いた陛下の顔はどんどん怒りの顔に変わっていった。
 しかし、殿下はそのことにも全く気付かずに自らどんどん墓穴を掘っていく。

「フリージア嬢の美しさに惹かれたその子供は、悪さを企んだのです……なんと愚かなのか!」

 ランドルフ殿下が得意満面の笑みを浮かべてそう口にした時、とうとう陛下の堪忍袋の緒が切れた。

「阿呆!  ───愚か者はお前だ!  ランドルフ!」
「……は?  え?  父上?」
「お前は……お前と言うやつはなんということを!」
「え?  ち、父上?  いったいどうしたというのですか?」

 ランドルフ殿下は事態をまだ飲み込めておらず、首を傾げている。
 また、それはフリージアも同じだった。
 大きな目をめいっぱい見開いてキョロキョロしている。

「お前は……お前はこの国の王子だというのに他国の王族の顔も知らんのかーー!?」
「は、い?  他国の王族の顔ですか?」

 ランドルフ殿下は果て?  という表情になる。
 ここまで来ても本気で分かっていないことに私は心から呆れた。

「そもそも、本日のパーティーにも来賓で呼んでいることはちゃんとお前に話したはずだ!」
「え?  た、他国の王族を……ですか?  そ、そうでしたか?  ちょっと他のことに気を取られていまして話はあまり聞いていなかったような……」

 ははは、とランドルフ殿下は笑って誤魔化そうとする。

「なっっ!  つまりお前は話を聞いていなかった、と言うのか!?」

 陛下のその言葉に会場内はしんっと静まり返る。
 多くの軽蔑の眼差しがランドルフ殿下に注がれると、さすがにこれらの視線には焦ったのか、ランドルフ殿下がようやく陛下におそるおそる訊ねる。

「で、では、父上……ま、まさかあの子供は……」
「まだ、分からぬのか!  顔が分からずとも言葉を聞けば直ぐに分かっただろう!?」
「こ、言葉……」
  
 ランドルフ殿下が戸惑いの表情を見せる。

「彼女は来賓、ヴェールヌイ王国の王女殿下だ!」
「なっ!  ヴェールヌイ王国の……!?」
「ええ!?」

 ランドルフ殿下は頭を抱え、フリージアも驚きの悲鳴をあげた。

「そん……なっ!!」
「嘘ッ……その子が、お、王女……さま、ですって!?」

 フリージアは私と私の腕の中にいる王女様に視線を向けると、一気に顔が青ざめた。

感想 243

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。

青波鳩子
恋愛
ヴェルーデ王国の第一王子アルフレッドと婚約していている公爵令嬢のアリシアは、お妃教育の最中にアルフレッドから婚約破棄を告げられた。 その僅か三時間後に失意のアリシアの元を訪れたアルフレッドから、婚約破棄は冗談だったと謝罪を受ける。 あの時のアルフレッドの目は冗談などではなかったと思いながら、アリシアは婚約破棄を撤回したいアルフレッドにとりあえず流されておくことにした。 一方のアルフレッドは、誰にも何にも特に興味がなく王に決められた婚約者という存在を自分の足枷と思っていた。 婚約破棄をして自由を得たと思った直後に父である王からの命を受け、婚約破棄を撤回する必要に迫られる。 婚約破棄の撤回からの公爵令嬢アリシアと第一王子アルフレッドの不器用な恋。 アリシアとアルフレッドのハッピーエンドです。 「小説家になろう」でも連載中です。 修正が入っている箇所もあります。 タグはこの先ふえる場合があります。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避~ヒドインは酷いんです~

鏑木 うりこ
恋愛
 転生前あまりにもたくさんのざまぁ小説を読みすぎて、自分がどのざまぁ小説に転生したか分からないエイミアは一人で何とかすることを速攻諦め、母親に泣きついた。 「おかあさまあ~わたし、ざまぁされたくないのですー!」 「ざまぁとはよくわからないけれど、語感が既に良くない感じね」  すぐに味方を見つけ、将来自分をざまぁしてきそうな妹を懐柔し……エイミアは学園へ入学する。  そして敵が現れたのでした。  中編くらいになるかなと思っております! 長い沈黙を破り!忘れていたとは内緒だぞ!? ヒドインが完結しました!わーわー!  (*´-`)……ホメテ……

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。