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エピローグ
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「ミーア・グラハム、そして、ジョバンニ・ハウンド。二人は本日をもってそれぞれ家からは追放・廃嫡。そして、刑務所行きを命ずる! なお、刑期は無期」
その日、国王陛下が大勢の見物人が見守る中、ヒロインとジョバンニ様に処分を告げていた。
「え……け、刑務所!? せ、せめて修道院じゃないの!?」
「廃嫡!? 刑務所……な、何で……」
「あの令嬢たちは修道院って聞いたのに……! 何で私だけ……! しかも、実家は没落って聞いたわ!?」
「他の元側近たちは労働刑だろう!?」
二人はその決定に不服だったのか揃って仲良く顔を真っ青にして抗議の声をあげていた。
ヒロインは最初の断罪パーティーの後、修道院行きを泣いて嫌がったと聞いていたけれど、その時に大人しく入っていた方が良かったのでは? という事態になっていた。
「両名とも、自分のした事をよく振り返るがいい」
そんな二人の抗議を陛下はバッサリと切って捨てる。
ヒロインは周りに悪影響を与え過ぎた。ゲーム補正なのかヒロイン補正なのか……魅了体質? のようなものを利用して多くの人達を惑わせ罪人にまでした。
ジョバンニ様は、浮気……そのものは罪には問えないけれど、私への暴行未遂が大きく問題視されていた。
あと、実はいくつかヒロインの悪巧みの協力もしていたらしい。
(まぁ、ジョバンニ様への罰は少し私怨が入っているような気も……するけど)
なんて事を思いながら、私はチラッと横目で隣にいるグレイ様を見た。
「ん? クロエ、どうかした?」
「い、いえ、何も」
私の視線に気付いたグレイ様と目が合ってしまった。なので、私は笑って誤魔化した。
「……先に処分が決定していた人達も含めて、これで皆、処分が出ましたね」
「そうだね……今、騒いでいる二人もあれだけど、あそこの侯爵と伯爵の落ち込みは特にすごい」
「……あそこ?」
グレイ様に言われて視線を向けると、ハウンド侯爵(ジョバンニ様父)とブレイズリ伯爵(元父)がこの世の終わりみたいな顔をして座っていた。
「二人とも、実質、領地没収ですから……」
「まぁね」
ハウンド侯爵は嫡男だったジョバンニ様が廃嫡になった為、跡取り不在に。どうにか代わりに跡継ぎになれる人材を探したそうだけど、ジョバンニ様のせいで悪い噂が広がりすぎて断られ続けた結果、領地の返還を決めたという。
そして、元お父様はお母様との離縁が決定し、弟はお母様が連れていった。よって同じく跡継ぎ不在に。
度重なるショックで一気に十歳分くらい老け込んだお父様は廃人みたいになり、今後の領地経営は無理と判断された。
「……あの二人が更にショックを受けているのは、その跡地を私が継ぐからだろうなぁ……というか、何故こうなった……」
「グレイ様……」
王族から離れることを選んでいたグレイ様。
グレイ様は離脱を認められるだろうと思っていたものの、国王陛下が大きく反対した。
(最初の段階で処分が廃嫡だけで済んでいた時点でお察しだったのよね……)
王家は最初から、グレイソン殿下を手放す気なんてなかったのよ……
でも、このまま王族という身分では平民となった私とは結婚出来ない。だからグレイ様は絶対に譲らなかった。
そうして何度も何度も話し合いを重ねた結果、王族から離れる事は認められたものの、グレイ様は新たに公爵の地位を賜わる事に。
(貴族なら平民娶ってもギリギリオッケー! って事なのだろうけどそれでも前代未聞よ……)
そして与えられた領地があの二人から没収した領地……
そういうわけで、私は後々、公爵夫人になるらしい。
何かしら、こう……上手く言えないけれど、何だか何かの上でコロコロ転がされているような気分……
「でも、クロエと一緒にいられるなら私は幸せだ」
「グレイ様……」
その言葉だけで私も幸せ!
公爵夫人でも何でも……あなたの為なら私は何だってやれるわ!
「私も、幸せです!」
私も微笑んでそう答えた。
❋❋❋❋
そして、二年後───
「アビゲイル様! おめでとうございます!」
「クロエ? ふふ、ありがとう」
今日はレイズン殿下とアビゲイル様の結婚式。
ついに、あの二人が結ばれたとあってパレードはすごい大歓声だった。
(アビゲイル様……すっごくすっごくお綺麗!)
元々、お綺麗だったけれどここ二年の間に美しさに磨きがかかっている!
きっと、本当に好きな人と結ばれて愛情をたくさん注がれたからなのだろう。
(愛って凄いわ……!)
私がそんなアビゲイル様にうっとり見蕩れていたら、何故かクスクス笑われる。
「……? どうされましたか?」
「どうって……ふふ、次はあなたの番よ? クロエ」
「へ?」
アビゲイル様は持っていたブーケを私に手渡しながらそう言った。
「────へ? じゃないよ。次は私とクロエの結婚式だよ?」
「!」
後ろから手が伸びてきてそっと抱き込まれた。
振り向かなくても分かる。大好きなグレイ様。
「わ、私達……の」
「そうだよ。クロエがレイズンとアビゲイルが結婚するまではーーって言うから私は待った!」
「あ……」
「待って、待って、待って……待って、とにかく待った!」
何だかグレイ様がすごーーく待った事だけは分かった。
「何なら三年かかると言われていた二人の結婚を一年早く縮めたりもした!」
「え? そうでしたの? それはありがとうございます」
よ、よく分からないけれど暗躍もしていた!
公爵様としての仕事があるのにいつそんな事を!
「そういうわけで……クロエ、私の可愛い花嫁……」
「~~~!」
み、耳元で囁かれた声が甘い……! なんて甘いの!
二年間たっぷり愛の言葉を受けてきたはずなのに、まだ慣れない。
心臓が破裂しそうよ……
「絶対に幸せにする」
「……それは、私のセリフです」
「……」
「……」
私はそっと後ろを振り返ると、甘く蕩けそうな目で見つめるグレイ様と目が合った。
そして、私達はふふっと笑い合う。
「愛してるよ、クロエ」
「私もです!」
そっと、グレイ様の顔が近づいて来たので私はそっと目を閉じ……
「……きゃっ! どうしてここで始めるんですの!」
「本当ですよ、兄上! それは二人っきりの時にやってください!」
アビゲイル様とレイズン殿下。二人の声にハッとして私達は止まった。
「……」
「……では、もうすぐ私の花嫁となる可愛い可愛いクロエは、このまま私が攫っていくとしよう」
「え? グレイ様!?」
そう言ってグレイ様は私を横抱きにする。
これ、前にも無かったかしら??
なんて思っているうちに、グレイ様は私を抱えたまま飛び出して行く。
「グレイ様……ど、どこに行かれるんですかーー?」
「もちろん、二人になれる所だ!」
「……」
「……」
いつかのやり取りを思い出して私達は、静かに笑い合った。
────気付いたら、ここは乙女ゲームの世界で。
私は、ついでに婚約破棄されるはずのモブだった。
なのに、初めから全てのシナリオは狂いまくりで……
そうしたら、最高に素敵で最強な人と出会って愛されて……
────これはもうゲームにはない物語。
だけど、この先に続く私達の未来は絶対にハッピーエンドに間違いない───
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼
これで完結です。
最後までお読み下さりありがとうございました。
イチャイチャを予定より増やしたので、少し長くなってしまいましたが、ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
この話は“断罪、婚約破棄するヒーロー”が書きたくて始めた話でした。
てっきりテンプレのクズ王子かと思わせて実は……という感じで。
(あとは、いつも通りの話ですけど)
楽しんで貰えていたなら嬉しいです。
ちなみに、ヒドイン・ピンクですが、珍しく彼女は転生者ではありません。
転生者はクロエだけです。なので、あれは素でやべぇ奴でした。
感想も返信出来ておりませんが全て読んでいます!
ありがとうございました!
ジョバカンニ……とか皆様、本当に上手いことを言いますね 笑
お気に入り登録、感想、エール……全部ありがとうございました!
毎日の励みです。
そして、次作……
『“可愛げがない女”と蔑まれ続けた能面令嬢、逃げ出した先で幸せを見つけます ~今更、後悔ですか?~』
タイトルを寄せたのでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「“つまらない女”と棄てられた地味令嬢、拾われた先で大切にされています ~後悔? するならご勝手に~」
の、主人公の両親の話です。
特に誰かからリクエストがあったわけではなく……何となく頭に思い浮かんだので始めてみます。
※ヒーローとなるパパはムキムキになる前なので、ヒョロヒョロです。
前作未読の方も特に問題は無いと思うので、ご興味があれば……ぜひ!
それでは、ありがとうございました!
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