【完結】“便利な女”と嘲笑われていた平凡令嬢、婚約解消したら幸せになりました ~後悔? しても遅いです~

Rohdea

文字の大きさ
3 / 53

第3話 婚約を決めたけど



 ダーヴィット様との顔合わせのお茶会のあと、私はお父様に婚約を受け入れると報告をした。

「え?  婚約の話を受け入れる?」
「はい……お受けしてもいいかな、と」

 そう口にしたところ、お父様が驚きの目を私に向ける。

「フィオナ……本当にいいのか?」
「はい……それに、公爵家からの申し出は断りづらいですし」

 お父様のことだから、私が嫌だと拒否すれば無理をしてでも断ってくれると思う。
 でも、そんな無茶はさせたくない。引き換えにアディオレ公爵家と確執が出来てしまう可能性があるから。

(社交界の派閥を考えると、それは望ましくないと思うのよね)

「フィ、フィオナが……婚約……」

 お父様が頭を押さえながらふらふらとフラつく。
 そんなお父様を見てお母様が慌てた。

「カ……カイン様!?  気、気をしっかり持って!」
「リ、リーファ……だって僕たちの可愛い娘が、よ、嫁に行くと……」
「嫁!?  落ち着いて!  まだ婚約よ!」
  
 お母様の言うように、まだ婚約の段階のはずなのに、今すぐ私を嫁に出すかのような心境になってしまったのか、涙ぐみ始めたお父様をお母様が必死に宥める。

「僕の可愛い娘……フィオナ……」
「お、お父様!  さ、さすがにまだそんなに早く結婚はしませんから!」

 私も必死に宥めにかかった。

「…………そ、そうだな!  だが、フィオナのウェディングドレス姿まで想像してしまった……可愛かったが辛い……」

 まさかの妄想までしていたお父様。

「それはさすがに気が早すぎるわ、カイン様!」
「分かっている。だが、花嫁を送り出す父親の心境というのは、こういうものなのかと……」

 お父様は大真面目な顔でそう語る。

「リーファ……僕らの結婚式の時に号泣していた君のお父上も、こんな気持ちだったのだろうか……」
「え?  それはどうなのかしら……ね。私のお父様とお母様両親はちょっと変わっているから……」

 お母様は自分の両親にあたる、私にとってはお祖父様とお祖母様を思い出して苦笑いする。
 確かにお母様の言うように、ちょっとあの二人は変わっていると言っていい。
 ただ、あそこまでお似合いの夫婦というのもなかなかいないと私は思っている。
 だからこそ憧れているのだけど。

(ダーヴィット様は、ちょっと胡散臭い気がするけれど、もしかしたら、これが私の素敵な恋になるかもしれないし……)

 仲良くじゃれ合うお父様とお母様の様子を見ながら、私も将来、ダーヴィット様とこんな風に過ごせるようになれたらいいな、と思った。


 ────


「───ええ!?  その赤い薔薇の花束を貰ったのですか?  これまた抜かりのない男ですね(油断ならん!)」
「え?  そうなの?」
「ニャー!  シャー!」

 私はダーヴィット様に貰った薔薇の花束をどう処理すべきか、強面で身体はムッキムキなのに性格は乙女で優しいお兄さん───庭師のボブさんのところに行った。
 すると、猫のにゃんこさんJrに引っ掻かれながらも、ボブさんは珍しく神妙な面持ちでそう言った。  

「その方は、フィオナお嬢様とはこれまであまり面識はなくほぼ初対面だったのですよね?」
「ニャー!」

 にゃんこさんJrが代わりに返事をしてくれたけど、その通りなので頷いた。

「そこにいきなり、赤い薔薇の花束とは……(胡散臭い!)」
「……やっぱり、あのプレゼントは普通ではないのかしら?」
「そうですね……何だか女性慣れしている男の空気を感じます」

 ボブさんは、うーんと考えながらそう答えた。

(女性慣れ……)

「ニャー!!  シャーー!」
「え?  ちょっ……にゃんこJrさーーん!?   い、痛っ」

 にゃんこさんJrはメスなので、女性慣れした男などという言葉がいけなかったのかもしれない。
 突然お怒りになられたにゃんこさんJrがボブさんにシャーと八つ当たりし始めた。



「……フィ、フィオナお嬢様……」
「?」

 にゃんこさんJrとの格闘を終えたボブさんが、私の顔をじっと見つめながら訊ねてきた。

「昔、私がお話したことを覚えていますか?」
「ニャーー!」
「え?」

(ボブさんと?  ───昔ってあれかしら?  いつか私も素敵な恋をするわ……って)

「ビビビッてやつかしら?」
「はい!  そ……」
「ニャーーーー!!」

 またまたにゃんこさんJrが会話に乱入したけれど、どうやらそれが正解だったらしい。
 ボブさんはにゃんこさんJrに再び手を噛まれながら私に言った。

「その婚約者となられる(キザ野郎な)男性と一緒の時間を過ごしてみればきっと自ずと分かりますよ」
「ビビビッが?」
「はい、ビビビッをです」

 ボブさんはいつものように、ニカッとした笑顔でそう言ってくれた。


◆◇◆


「とりあえず、ダーヴィット様に頂いた薔薇はボブさんが色々活用してくれるみたいなので良かったわ」

 貰った大量の薔薇をボブさんに預けて私は部屋へと戻った。

「……婚約、かぁ」 

 ついにその時が来たはずなのに、なぜだか全然実感が湧かない。

「そういえば、お母様やお祖母様はそれぞれの相手と出会って好きになってから、結婚したと聞いたけれど……私みたいに先に婚約をして後から好きになる、というのも……あり、なのかしら──?」

(素敵な恋……出来るわよね?)





 ────そして、お父様が婚約承諾の返事を送った翌日。
 なんとダーヴィット様が突然、私の元を訪ねて来た。

「───フィオナ嬢!  話を受けてくれて嬉しいよ、ありがとう!  居ても立ってもいられずこうして約束も無いのに訪ねて来てしまったよ」

 現れたダーヴィット様はとても嬉しそうな笑顔で私に向かってそう言った。
 そんなに喜んでもらえるなら、お話を受けて良かったなと思う。

「い、いえ、こ、こちらこそよろしくお願いします」
「ああ!  必ず君を幸せにすると誓う」

 ダーヴィット様がそう言いながら、私の手を取ってギュッと握った。

「───っ!」
「あ、す、すまない。突然触れられたら驚く、か……」

 突然、手を握られて私の身体がビクッと震えたのを感じたダーヴィット様は、そう言いながら慌てて手を離す。

「……い、いえ。私の方こそ……す、すみません」
「あ、いや。こちらこそ……すまない」
「……」
「……」

 私たちは何を話したらいいのか分からず、互いに無言になってしまう。
 そんな無言の空気の中で──

(……なんで?)

 私は、たった今、少しだけダーヴィット様に握られた自分の手をじっと見つめる。
 そして思った。

(…………どうして、ビビビッではなく、ゾワッとしたのかしら……?)

感想 231

あなたにおすすめの小説

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。 ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ
恋愛
 公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。  公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。  アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。  腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。  本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。  学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。    そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。  実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。  アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。  神に去られた国は徐々に荒廃していき……。  一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。  「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」 ・人外×人間、竜×人間。 ・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。 ・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。 「Copyright(C)2025-まほりろ」 ※タイトル変更しました(2025/05/06) ✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 ✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」 ◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」 ・2025年5月16日HOTランキング2位!  ありがとうございます! ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎