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4. 第2王子に会いに行く
しおりを挟む──夢を見た。
懐かしい、とても懐かしいまだ子供だった頃の夢……
3人で無邪気にはしゃいでたあの頃の───
『ねぇ、リーツェ』
『なぁに? フォレックスさま』
『リーツェは僕とスチュアートどっちが好き?』
私は思ったわ。
フォレックス様ったらなんて難しい質問をするのかしらって。
『2人とも好き。比べる事なんて出来ないもん』
『そっか……』
そう答えた私にフォレックス様はちょっと悲しそうな顔をして俯いてしまったのよね……
でも、フォレックス様はすぐに顔を上げて私の目を見て言った。
『なら、リーツェ。もしも僕が……』
─────……
「ん……眩しっ…………て、朝ね」
朝の光で目が覚めた。
牢屋生活の暗い所で過ごしていたせいか朝の光を浴びると目が覚めてしまう。
ベッドから起き上がって少し身体を動かす。
「んー……懐かしい夢を見た気がする」
3人で遊んでいる時にフォレックス様がちょっとだけ真面目な顔をして話しかけて来た……
「…………あれ? あの後、フォレックス様はなんて言ったんだっけ……?」
どうしてかしら?
記憶にモヤがかかったみたいに思い出せない。
(すごくすごく大切な事を言っていたような気がするのに)
そんな事を考えていたら扉がノックされる音が聞こえた。
きっとシイラだわ。
(ふふん、今日も私の方が先に起きたわ! きっと驚くわね!)
時が戻ってからの私は早起きなのよ!
「おはようございます、お嬢様。起きー……」
「おはよう、シイラ!」
「お、お嬢様……! まさか、今日も起きていらっしゃる!?」
「えぇ、起こされる前に起きたわ!」
どうよ?
と、得意げな顔をして私はシイラを見る。
そんなシイラは、
「あぁ、本当にこんな日が来るなんて……神様に感謝致します……」
と、神様に感謝を述べ始めてしまった。
(そ、そんなに!?)
ちょっとだけ複雑な気持ちにさせられた。
だけど、また、シイラとこんな風に過ごせるなんて……これほど嬉しい事は無い。この事に関しては時を遡れた事に素直に感謝出来る。
何故ならシイラは……もうすぐ……
そこまで考えてハッと気付く。
(ちょっと待って? 最悪の未来を変えるのは、自分の事だけでなくてもいいはずよね? 私が動いたらあの未来は変わる?)
「お嬢様も成長するものなんですねぇ」
「!」
シイラがそう言いながら心から嬉しそうに笑う。
(前の人生全てを振り返っても初めて見たかもしれないわ……シイラのこんな笑顔)
こんな風に笑う人だったのね……
「……い、いいから、さっさと朝の支度をして頂戴!」
「えぇ、勿論ですとも!」
何だか気恥ずかしくて高飛車な物言いになってしまった気がするのにシイラは嬉しそうに支度を始めた。
そんなシイラの手によって朝の支度をされながら、私は頭の中で過去の記憶を必死に探る。
(私、今ならシイラを救えるかもしれない)
***
シイラの事は、まだもう少しだけ時間があるので対策を練る必要があるとして……今一番の問題は……
(フォレックス様には……話を聞くだけよ。それだけ……)
そう心に決めて学園に着くと馬車を降りる。
そして校舎へと向かって歩き出す。
「おはようございます、リーツェ様」
「えぇ、おはよう」
「今日もお綺麗ですね」
「ありがとう」
そんなお決まりの会話を繰り広げながら、私はある場所へと向かう。
(普段、教室にはあまりいないのだと前の人生で聞いた事がある)
何となくあそこにいる気がするのよね。
そんな事を考えながら、私は目的の場所に辿り着きそっと扉を開ける。
───いた!
間違いない。フォレックス様だわ。
屋上にいると思ったのよ。だってフォレックス様は空を見るのが好きだから。
フォレックス様は寝っ転がって空を見ていた。
スチュアート様と同じ金色の髪が日に透けてキラキラと輝いていて思わず見惚れた。
「……」
寝そべっているなんて……王子様が何をしているのですか!
本来ならそう言うべき所なのでしょうけど、この方の場合は何故か許せてしまうのよね……
(スチュアート様なら絶対にやらないわね。むしろフォレックス様を叱りそう)
双子なのに随分と違う二人なのよね。
そんな事を考えつつ私は深呼吸を一つしてから、そっと声をかけた。
「フォレックス様」
その声にフォレックス様がピクリと反応を示す。
そして声の主を確かめる様にゆっくりと起き上がり私の方に顔を向けた。
「……リーツェ」
そう呟くフォレックス様と目が合った。
「……」
「……」
(すごく久しぶりに顔を見た気がするわ)
フォレックス様の顔をこんなまじまじと見るのはいつ以来かしら?
前の人生では、彼は留学していたから最期の時も会えなかった。
「珍しい事もあるんだな……何の用だ?」
「……突然、ごめんなさい。聞きたい事がありましてお邪魔させてもらいました」
「俺に?」
「はい」
「……」
フォレックス様が無言で身体を動かしたので、これは座れの合図だと思い私は隣にハンカチを敷いてそっと腰かけた。
「……」
「……」
そして、沈黙。
私達はいつもこう。うまく話せない。
あの日からフォレックス様は私に対してよそよそしくなって、私達はうまく話せなくなってしまった。
昔みたいな笑顔は見せてくれない。
多分、私はあの日、彼に嫌われてしまった……そんな気がしている。
(そんな気持ちがあるから彼と話をする時には緊張するようになってしまったのよね……)
だから会うのを躊躇ってしまった。
(留学のお供は私だけでは無いからそれでも構わないと思ったけれど、フォレックス様からすれば迷惑だっただろうから取り止めで良かったのかも)
「…………それで? 俺に聞きたい事とは?」
沈黙を破ったのはフォレックス様だった。
「あ、はい。その……父からフォレックス様が留学を取り止めたと聞きました」
「……」
「そ、それで、わ、私はどうしてもその取り止めた理由が気になってしまって……」
しどろもどろになりながらもどうにか伝える。
「何でそんな事が知りたい?」
そりゃそう思うわよね……本来なら私には関係無い話だもの。
「えっと、出来れば私も一緒に留学したかったからです」
「えっ!?」
フォレックス様の声が裏返った。
これは相当驚いて、いる……?
(あぁ、私なんかが本気で留学して勉強する気なのか? って驚き……いえ、お前なんかに着いてこられたら迷惑だった……の驚きという可能性も……)
「リーツェ、分かってて言ってるのか? それは俺と一緒の留学だったんだぞ?」
(ほら! やっぱり……)
「……もちろん分かっていますよ」
「俺はスチュアートじゃない」
(ん?? あれ? 思ってたのと違う?)
「……? 当たり前じゃないですか」
「…………!」
フォレックス様は何を言ってるのかしら。
首を傾げながらした私のその返事を聞いたフォレックス様は、驚きと何故かどこか泣きそうな……そんな表情を浮かべた。
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