21 / 66
21. こんな時間がずっと……
しおりを挟む「トラヴィス様がルウェルン国一の魔術師……」
「そうですわ」
リリーベル様はにっこり笑って頷いた。
私は驚かずにはいられない。
「あ、あんなにお若いのに!?」
───なるほど。
本当にモテモテ要素が満載だわ。
あの美貌に加えて、国一番の魔術師だなんて。
「確かにあの銀色の髪は美しいです……が」
「そうでしょう?」
それでいて独身! 女性に放っておかれるはずがない!
(私ったら今、そんな凄い方に魔術を教わっているのね……!)
そう思うと何だかとっても興奮してきた。
「……魔術が絡むとちょっと厄介な所もありますけれど、自慢の兄ですわ」
「リ、リリーベル様」
リリーベル様の見せたその美少女の微笑みに私の方が悶えそうになった。
それに、リリーベル様の髪もトラヴィス様に負けないくらい美しいのでリリーベル様もかなりの実力を持っているはず。
(すごい兄妹!)
「───俺がどうかした?」
「っっ!」
「まあ! おかえりなさいませ、お兄様」
私が悶えていたところにちょうど、トラヴィス様が現れた。
出かけていると聞いていたけれど、お戻りになられたらしい。
「ふふ。ちょうど、お兄様が今朝頑張って並んで手に入れたお菓子をマルヴィナさんと一緒に頂いておりましたのよ」
「ああ! あれか。マルヴィナ、どうだった?」
「ご、ご馳走様でした。美味しかったです。ありがとうございました」
「いや、マルヴィナのその顔が見られただけでも並んだ甲斐があったよ」
私がお礼を言うと、トラヴィス様はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔になぜか胸がドキッとする。
(……最近、いつも近くにいるせい? 眼鏡があっても表情が分かるようになってきた気がする……)
「ん? マルヴィナ? 俺の顔に何かついている?」
「……え? あっ、いえ……」
思わずじっと顔を見つめすぎてしまった。
(何だか頬が熱い気も……する)
「そう? あ、そうだ、マルヴィナ。明日はどこのお店のお菓子がいい? 希望があるなら聞くよ」
「え? あ、した?」
目が点になる私。
その様子を見たリリーベル様が苦笑しながらトラヴィス様に呆れた表情を向けた。
「お兄様? 明日もどこかのお店の行列に並ぶつもりなんですの!?」
「当然だろう? 俺はマルヴィナの喜ぶ顔が見たいんだから」
(ひぇっ!?)
「よ、喜ぶ顔? わ、私のですか?」
「ああ。俺はマルヴィナを甘やかすと決めた! だから、思いっ切り甘えてくれ!」
「あ……」
(甘やかす!? 何でーーーー!?)
サラッとそんなことを言われたので、ますます胸のドキドキが止まらなくなってしまった。
トラヴィス様とリリーベル様いつも私と一緒に食事も摂ってくれる。
和気あいあいとした雰囲気の食事の時間は、私が幼い頃から憧れていた光景そのもので、泣きそうになるくらいの幸せを感じる。
昼間はポッカポカのお部屋で気持ちよく過ごせて、夜に眠るベッドもフッカフカ。
嫌な夢を見ることもない。
リリーベル様に勉強教えるのも楽しい。
集中力が三十分と言っていたのは嘘ではなく、三十分たつと本当にソワソワし始めるリリーベル様は見ていて可愛らしくもあり面白い。
そうして、気付けばあの頭痛も起きなくなっていた。
(───こんな時間がずっと続くといいな)
私はそう願わずにはいられなかった。
❋❋❋
その頃のクロムウェル王国───
「サヴァナ? そんな不機嫌な顔をしてどうしたんだい? せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「~~~クリフォード殿下ぁ!」
いつものようにクリフォード殿下に会いに王宮にやって来たサヴァナは、クリフォードに声をかけられて泣きついた。
「サヴァナ?」
「もう、家にいたくありませんーーーー」
なぜなら、あの日。
姉のマルヴィナの部屋がすっからかんだったことが判明してから、屋敷の中がピリピリして居心地が悪い。
お父様は、お母様のことも疑ったため、まず最初に二人の仲が険悪になった。
『あなた! 私を疑うんですの!?』
『お前ならやりかねん! 最近、欲しい宝石があるなどと騒いでいたではないか!』
『ひ、酷い……!』
けれど、お母様は認めなかったし決定的な証拠もなかったのでお父様は次に使用人たちに辛く当たった。
『わ、我々は何も知りません』
『それにマルヴィナ様の部屋には近付くなと命令されて──』
『うるさい! お前たち以外に誰がいる! 正直に名乗り出なければ全員首だ!』
『そ、そんな……』
お父様は完全に暴走し、屋敷の外で仕事する庭師まで疑ったため、怒った庭師は即辞表を書いて辞めていった。
使用人が一人、また一人と減っていくけれど犯人は謎のまま───……
「そんなわけで、もう伯爵家はめちゃくちゃなんですよ~」
「そ、そうか……そんなことが……」
クリフォード殿下も困惑している様子だった。
「……サヴァナの心が不安定だからこんな状態なのだろうか」
「はい?」
殿下が小さな声で何かを呟いた。
上手く聞き取れなくて聞き返したら、殿下は何だかバツの悪そうな顔で言った。
「ほら、もうかれこれずっと雨が止まないじゃないか。だから……その……」
「?」
「お、王宮内でサヴァナは本当に……しゅ、守護の力の持ち主なのかと、う、疑う声が……」
「なんですって!?」
みんなの前で水晶を光らせたのに、この私の力を疑う!?
バカにしているの!?
ムカムカと腹が立ってくる。
(あ、そうだわ!)
「いえ、殿下……それはきっと私たちが最近……その……」
「え?」
私はポッと頬を赤く染めながら言う。
「ち、力を発揮するには、私たちが仲良くすること……と言われていたじゃないですかぁ……」
「サヴァナ?」
「でも、最近は……」
そうよ。最近の殿下はずっと痛そうに頭を押さえていて、全然、前みたいに私に触れようとしてくれない!
きっと、そのせいなんだわ!
そう思った私はうるうるした瞳で殿下を見つめる。
「クリフォード殿下……」
「……サヴァナ」
(ふふ、やったわ! 久しぶりにいい雰囲気───)
けれど、殿下の顔が近付いて来て、そっと瞳を閉じようとしたところで……
「……くっ! 痛っ」
「え……大丈夫ですか!?」
またしてもいい所で殿下が頭を押さえて痛がってしまう。
(もう! なんなのよ! また頭痛? すっごくいいところだったのに!)
目の前で痛がる殿下を心配しながらも、ついそんな気持ちが浮かんでしまう。
「すまない……ちょっと僕は……休む」
「え、殿下!」
そう言って私を置いて寝室へと向かおうとするクリフォード殿下。酷い!
「……っ! す、すまないがサヴァナは適当に過ごして帰ってくれ……」
「か、帰ってくれって」
何でよ~、家に帰りたくないアピールをして王宮に泊めてもらおうと思ったのに!
「───あぁ、そうだ。それから……」
「……! な、なんですかぁ~?」
殿下が考え直してくれたかも! そう思った私は明るく答える。
だけど───
「王宮の魔術師……筆頭魔術師がサヴァナが来たら自分の元に来て欲しい……そう言っていた」
「え?」
「……なんでも、改めて確認したいことがあるとかないとか……」
「確認したいこと、ですか~?」
は? 今更、何の用かしら?
「水晶が……とか言ってたな…………くっ!」
(水晶? それってあの魔力測定のかしら?)
……まさか、魔術師までも私を疑っているわけ?
あの場で文字が浮かんだのを目の当たりにしていたくせに!!
「私……私よ! 力を授かったのは……選ばれたのはお姉様なんかじゃない。私なんだから!!」
私はそんな独り言をブツブツと呟きながら、殿下の部屋を出て仕方なく筆頭魔術師の元へと向かった。
369
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。
夢草 蝶
恋愛
シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。
どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。
すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──
本編とおまけの二話構成の予定です。
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる