【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea

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21. こんな時間がずっと……

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「トラヴィス様がルウェルン国一の魔術師……」
「そうですわ」

 リリーベル様はにっこり笑って頷いた。
 私は驚かずにはいられない。

「あ、あんなにお若いのに!?」

 ───なるほど。
 本当にモテモテ要素が満載だわ。
 あの美貌に加えて、国一番の魔術師だなんて。

「確かにあの銀色の髪は美しいです……が」
「そうでしょう?」

 それでいて独身!  女性に放っておかれるはずがない!

(私ったら今、そんな凄い方に魔術を教わっているのね……!)

 そう思うと何だかとっても興奮してきた。

「……魔術が絡むとちょっと厄介な所もありますけれど、自慢の兄ですわ」
「リ、リリーベル様」

 リリーベル様の見せたその美少女の微笑みに私の方が悶えそうになった。
 それに、リリーベル様の髪もトラヴィス様に負けないくらい美しいのでリリーベル様もかなりの実力を持っているはず。

(すごい兄妹!)

「───俺がどうかした?」
「っっ!」
「まあ!  おかえりなさいませ、お兄様」

 私が悶えていたところにちょうど、トラヴィス様が現れた。
 出かけていると聞いていたけれど、お戻りになられたらしい。

「ふふ。ちょうど、お兄様が今朝頑張って並んで手に入れたお菓子をマルヴィナさんと一緒に頂いておりましたのよ」
「ああ!  あれか。マルヴィナ、どうだった?」
「ご、ご馳走様でした。美味しかったです。ありがとうございました」
「いや、マルヴィナのその顔が見られただけでも並んだ甲斐があったよ」

 私がお礼を言うと、トラヴィス様はそう言って嬉しそうに微笑んだ。
 その笑顔になぜか胸がドキッとする。

(……最近、いつも近くにいるせい?  眼鏡があっても表情が分かるようになってきた気がする……)

「ん?  マルヴィナ?  俺の顔に何かついている?」
「……え?  あっ、いえ……」

 思わずじっと顔を見つめすぎてしまった。

(何だか頬が熱い気も……する)

「そう?  あ、そうだ、マルヴィナ。明日はどこのお店のお菓子がいい?  希望があるなら聞くよ」
「え?  あ、した?」

 目が点になる私。
 その様子を見たリリーベル様が苦笑しながらトラヴィス様に呆れた表情を向けた。

「お兄様?  明日もどこかのお店の行列に並ぶつもりなんですの!?」
「当然だろう?  俺はマルヴィナの喜ぶ顔が見たいんだから」

(ひぇっ!?)

「よ、喜ぶ顔?  わ、私のですか?」
「ああ。俺はマルヴィナを甘やかすと決めた!  だから、思いっ切り甘えてくれ!」
「あ……」

(甘やかす!?  何でーーーー!?)

 サラッとそんなことを言われたので、ますます胸のドキドキが止まらなくなってしまった。



 トラヴィス様とリリーベル様いつも私と一緒に食事も摂ってくれる。
 和気あいあいとした雰囲気の食事の時間は、私が幼い頃から憧れていた光景そのもので、泣きそうになるくらいの幸せを感じる。

 昼間はポッカポカのお部屋で気持ちよく過ごせて、夜に眠るベッドもフッカフカ。
 嫌な夢を見ることもない。

 リリーベル様に勉強教えるのも楽しい。
 集中力が三十分と言っていたのは嘘ではなく、三十分たつと本当にソワソワし始めるリリーベル様は見ていて可愛らしくもあり面白い。


 そうして、気付けばあの頭痛も起きなくなっていた。


(───こんな時間がずっと続くといいな)

 私はそう願わずにはいられなかった。



❋❋❋



 その頃のクロムウェル王国───


「サヴァナ?  そんな不機嫌な顔をしてどうしたんだい?  せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「~~~クリフォード殿下ぁ!」

 いつものようにクリフォード殿下に会いに王宮にやって来たサヴァナは、クリフォードに声をかけられて泣きついた。

「サヴァナ?」
「もう、家にいたくありませんーーーー」

 なぜなら、あの日。
 姉のマルヴィナの部屋がすっからかんだったことが判明してから、屋敷の中がピリピリして居心地が悪い。
 お父様は、お母様のことも疑ったため、まず最初に二人の仲が険悪になった。

『あなた!  私を疑うんですの!?』
『お前ならやりかねん!  最近、欲しい宝石があるなどと騒いでいたではないか!』
『ひ、酷い……!』

 けれど、お母様は認めなかったし決定的な証拠もなかったのでお父様は次に使用人たちに辛く当たった。

『わ、我々は何も知りません』
『それにマルヴィナ様の部屋には近付くなと命令されて──』
『うるさい!  お前たち以外に誰がいる!  正直に名乗り出なければ全員首だ!』
『そ、そんな……』

 お父様は完全に暴走し、屋敷の外で仕事する庭師まで疑ったため、怒った庭師は即辞表を書いて辞めていった。
 使用人が一人、また一人と減っていくけれど犯人は謎のまま───……

「そんなわけで、もう伯爵家はめちゃくちゃなんですよ~」
「そ、そうか……そんなことが……」

 クリフォード殿下も困惑している様子だった。

「……サヴァナの心が不安定だからこんな状態なのだろうか」
「はい?」

 殿下が小さな声で何かを呟いた。
 上手く聞き取れなくて聞き返したら、殿下は何だかバツの悪そうな顔で言った。

「ほら、もうかれこれずっと雨が止まないじゃないか。だから……その……」
「?」
「お、王宮内でサヴァナは本当に……しゅ、守護の力の持ち主なのかと、う、疑う声が……」
「なんですって!?」

 みんなの前で水晶を光らせたのに、この私の力を疑う!?
 バカにしているの!?
 ムカムカと腹が立ってくる。

(あ、そうだわ!)

「いえ、殿下……それはきっと私たちが最近……その……」
「え?」

 私はポッと頬を赤く染めながら言う。

「ち、力を発揮するには、私たちが仲良くすること……と言われていたじゃないですかぁ……」
「サヴァナ?」
「でも、最近は……」

 そうよ。最近の殿下はずっと痛そうに頭を押さえていて、全然、前みたいに私に触れようとしてくれない!
 きっと、そのせいなんだわ!
 そう思った私はうるうるした瞳で殿下を見つめる。

「クリフォード殿下……」
「……サヴァナ」

(ふふ、やったわ!  久しぶりにいい雰囲気───)

 けれど、殿下の顔が近付いて来て、そっと瞳を閉じようとしたところで……

「……くっ!  痛っ」
「え……大丈夫ですか!?」

 またしてもいい所で殿下が頭を押さえて痛がってしまう。

(もう!  なんなのよ!  また頭痛?  すっごくいいところだったのに!)

 目の前で痛がる殿下を心配しながらも、ついそんな気持ちが浮かんでしまう。

「すまない……ちょっと僕は……休む」
「え、殿下!」

 そう言って私を置いて寝室へと向かおうとするクリフォード殿下。酷い!

「……っ!  す、すまないがサヴァナは適当に過ごして帰ってくれ……」
「か、帰ってくれって」

 何でよ~、家に帰りたくないアピールをして王宮に泊めてもらおうと思ったのに!

「───あぁ、そうだ。それから……」
「……!  な、なんですかぁ~?」

 殿下が考え直してくれたかも!  そう思った私は明るく答える。
 だけど───

「王宮の魔術師……筆頭魔術師がサヴァナが来たら自分の元に来て欲しい……そう言っていた」
「え?」
「……なんでも、改めて確認したいことがあるとかないとか……」
「確認したいこと、ですか~?」

 は?  今更、何の用かしら?

「水晶が……とか言ってたな…………くっ!」

(水晶?  それってあの魔力測定のかしら?)

 ……まさか、魔術師までも私を疑っているわけ?  
 あの場で文字が浮かんだのを目の当たりにしていたくせに!!



「私……私よ!  力を授かったのは……選ばれたのはお姉様なんかじゃない。私なんだから!!」

 私はそんな独り言をブツブツと呟きながら、殿下の部屋を出て仕方なく筆頭魔術師の元へと向かった。

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