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第13話 北へ
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リディとニケ、そして3体の魔獣たちは連れ立って北へと向かっていた。
街を出てすぐはケルベたちの姿を隠すため、少し街道から外れ、森の中を歩いていたが、半刻も歩くと、前後に人の姿はなくなったため、今は堂々と街道を歩いている。
ヨルクル村のようになっては大変なので、リディはチラチラと街道の前後をたまに確認しながら歩みを進めていた。
天気は快晴、夏の日差しは強く降り注いでいたが、湿度は高くなく爽やかな風が二人の歩く街道をなでていった。
「ニケ、これから本格的に旅をするにあたって、一つお願いしたいことがあるのだが」
「……何?」
「ニケは私に対していろいろ遠慮しているな?」
「えっと……、うん」
リディはニケと会ってからずっと気になっていることがあった。
それはニケが常に遠慮がちに話すことだ。
ニケには人と関わるという経験が圧倒的に足りていない。だからリディに対して人見知りをしているのだろうし、人とどう話せばよいのか恐る恐る考えながら話しているのだろう。
そこで、リディは自分を使ってニケが人と関わるということを学んでくれれば良いと考えた。
「私に対しては、これからは遠慮しないでいい。話すのももっと気楽に喋ってみてくれ」
太陽を背にリディはそうニケに伝えた。そんなリディがニケには眩しく見えた。
「……頑張って、みる」
「あぁ、よろしくな。私もケルベたちと同じくニケと友達になりたい」
リディの真っ直ぐな目にニケは少し目をそらしたが、こうして二人はこれから絆を深めていくことを誓った。
北への街道は石畳ではないが、通る人も多いのかよく整地されていて歩きやすかった。
この国では北の要所として、イダンセという街が大きく発達しており、アサイクの酒場で噂に聞いた北の情報を集めるためにリディはまずはイダンセを目指していた。
イダンセまでの道のりには1日で歩ける距離の間に小さな宿場町が発展していて、そこで泊まるもよし、余裕があれば次の宿場町までノンストップで向かうということもできる。
順調にいけば10日もあれば余裕で到着できる見込みだった。
リディもニケも共に健脚で旅慣れており、旅程は実に順調だった。
太陽が天頂を過ぎ、少し傾き始めたぐらいで狩りの準備を始めるのを二人は日課とした。
宿場町に入れば食事はできるが、お金があまり残っていないことと、ケルベたちを連れて町に入ることもできないので、食事はなるべく狩りで間に合わせるようにしたのだ。
「ブータは昨日食べたし、今日は鳥でも狙ってみるか……、ニケもそれでいいか?」
「うん、任せる……」
リディは一人で旅をしていたときから、動物を捕らえて日々の食としていたので、狩りはお手の物だったが、ニケたちの協力を得て狩りはより簡単になった。
まず、グリフが森の上空を飛び獲物を探す、おおよその位置がわかったら、ケルベとリディで獲物を挟む位置に移動し、ケルベの一吠えにより飛び出した獲物をリディが仕留めるという具合だ。
ちなみに見晴らしが良い場所ではバジルが一睨みするだけで獲物が金縛りにあったように動かなくなるため、これが一番簡単な方法だった。
いつもの段取りで獲物を仕留めると羽抜きなどの下処理を行い、調理の準備に入る。
宣言したとおり二人分には十分と言える大きめの鳥を捕らえることができた。
そのへんで採ってきた食べられる草を仕留めた鳥の腹に適当に詰め、木の棒を通す。そして、焚き火の上に配置すれば丸焼きスタイルの完成である。
火が肉に回ってくると染み出した油が滴り落ちて、焚き火が『ジュー』という声を上げる。それを合図にリディはまんべんなく火が通るよう肉をくるくると回すようにしながら焼き目がつくのを今か今かと待ちわびていた。
「まぁ、こんなものか」
しばらくそうしたあとで、全体がほんのり茶色くなり、ところどころ軽い焦げ目がついたところで、リディは肉を刺した棒を焚き火からはずし、そのまま縦に地面に突き刺した。
「ニケ、ナイフ持ってるか?」
「持って、ない」
「じゃあ、私のを貸してやる」
ほら、とリディはナイフの柄をニケに向けて差し出した。
「適当に切って食べていいぞ、香草を落とさないように気をつけてな」
リディはそう言いながら、もう一つのナイフを取り出し、焼き上がった鳥の肉に刃を入れていく。手頃な大きさに肉を切り取ると、油の垂れる肉を口へと運んだ。
「ん~、急ごしらえの割にはなかなか」
上品と言える食べ方ではなかったが、リディは何度かこういう食べ方をしているのか、食べ慣れている感じが見受けられた。
ニケも見よう見まねで肉を切り取っていく。
「あつっ」
切り取った肉を取ろうと、肉に指を伸ばしたところで、熱さに驚き指を引っ込める。
「中はまだアツアツだからな、摘むなら端っこがいいぞ」
そう言って、リディが横から指を伸ばして肉をとってくれた。
ふー、ふーととった肉を冷ますように息を吹きかけると、『もういいだろ、ほら』と言ってつまんだ肉をニケに差し出した。
ニケはそのままリディがつまんでいる肉にかぶりつくと、口に広がる肉の味を噛み締めた。
「どうだ?」
「……おいし、い?」
「なんだ、疑問形か」
「なんか足りない」
ニケの感想は正直だった。肉の味はとてもまずいとは言わないが、アサイクの街で食べた料理に対して、決定的に何かが足りなかった。
「なかなかいい味覚をしているな。臭みは下処理と香草でとれるのだが、足りないのは塩気だろうな。値は張るがそのうち大きめの岩塩でも買っておくか」
塩があるとだいぶ変わるぞとリディは肉を口に運びながら教えてくれる。パクパクとたべ進むリディを横目に見つつ、ニケも自分の取り分を確保すべく、食事を進めていった。
ニケも今までの旅の中で自分で獲物を取り、食事をしていたが、下処理なども自分ではしていなかったので、塩気がなくともリディの食事は十分美味しいと感じられた。
こんな狩りと食事をしつつ、たまには町へも寄り、北への旅は順調に進んだ。
旅の中で予想外だったのは万一に備えてアサイクを出発するときに買っておいた保存食が、思いの外美味しかったことである。
『こんなに美味しいなら、もっと買っておけばよかった~』とはリディの嘆きである。
街を出てすぐはケルベたちの姿を隠すため、少し街道から外れ、森の中を歩いていたが、半刻も歩くと、前後に人の姿はなくなったため、今は堂々と街道を歩いている。
ヨルクル村のようになっては大変なので、リディはチラチラと街道の前後をたまに確認しながら歩みを進めていた。
天気は快晴、夏の日差しは強く降り注いでいたが、湿度は高くなく爽やかな風が二人の歩く街道をなでていった。
「ニケ、これから本格的に旅をするにあたって、一つお願いしたいことがあるのだが」
「……何?」
「ニケは私に対していろいろ遠慮しているな?」
「えっと……、うん」
リディはニケと会ってからずっと気になっていることがあった。
それはニケが常に遠慮がちに話すことだ。
ニケには人と関わるという経験が圧倒的に足りていない。だからリディに対して人見知りをしているのだろうし、人とどう話せばよいのか恐る恐る考えながら話しているのだろう。
そこで、リディは自分を使ってニケが人と関わるということを学んでくれれば良いと考えた。
「私に対しては、これからは遠慮しないでいい。話すのももっと気楽に喋ってみてくれ」
太陽を背にリディはそうニケに伝えた。そんなリディがニケには眩しく見えた。
「……頑張って、みる」
「あぁ、よろしくな。私もケルベたちと同じくニケと友達になりたい」
リディの真っ直ぐな目にニケは少し目をそらしたが、こうして二人はこれから絆を深めていくことを誓った。
北への街道は石畳ではないが、通る人も多いのかよく整地されていて歩きやすかった。
この国では北の要所として、イダンセという街が大きく発達しており、アサイクの酒場で噂に聞いた北の情報を集めるためにリディはまずはイダンセを目指していた。
イダンセまでの道のりには1日で歩ける距離の間に小さな宿場町が発展していて、そこで泊まるもよし、余裕があれば次の宿場町までノンストップで向かうということもできる。
順調にいけば10日もあれば余裕で到着できる見込みだった。
リディもニケも共に健脚で旅慣れており、旅程は実に順調だった。
太陽が天頂を過ぎ、少し傾き始めたぐらいで狩りの準備を始めるのを二人は日課とした。
宿場町に入れば食事はできるが、お金があまり残っていないことと、ケルベたちを連れて町に入ることもできないので、食事はなるべく狩りで間に合わせるようにしたのだ。
「ブータは昨日食べたし、今日は鳥でも狙ってみるか……、ニケもそれでいいか?」
「うん、任せる……」
リディは一人で旅をしていたときから、動物を捕らえて日々の食としていたので、狩りはお手の物だったが、ニケたちの協力を得て狩りはより簡単になった。
まず、グリフが森の上空を飛び獲物を探す、おおよその位置がわかったら、ケルベとリディで獲物を挟む位置に移動し、ケルベの一吠えにより飛び出した獲物をリディが仕留めるという具合だ。
ちなみに見晴らしが良い場所ではバジルが一睨みするだけで獲物が金縛りにあったように動かなくなるため、これが一番簡単な方法だった。
いつもの段取りで獲物を仕留めると羽抜きなどの下処理を行い、調理の準備に入る。
宣言したとおり二人分には十分と言える大きめの鳥を捕らえることができた。
そのへんで採ってきた食べられる草を仕留めた鳥の腹に適当に詰め、木の棒を通す。そして、焚き火の上に配置すれば丸焼きスタイルの完成である。
火が肉に回ってくると染み出した油が滴り落ちて、焚き火が『ジュー』という声を上げる。それを合図にリディはまんべんなく火が通るよう肉をくるくると回すようにしながら焼き目がつくのを今か今かと待ちわびていた。
「まぁ、こんなものか」
しばらくそうしたあとで、全体がほんのり茶色くなり、ところどころ軽い焦げ目がついたところで、リディは肉を刺した棒を焚き火からはずし、そのまま縦に地面に突き刺した。
「ニケ、ナイフ持ってるか?」
「持って、ない」
「じゃあ、私のを貸してやる」
ほら、とリディはナイフの柄をニケに向けて差し出した。
「適当に切って食べていいぞ、香草を落とさないように気をつけてな」
リディはそう言いながら、もう一つのナイフを取り出し、焼き上がった鳥の肉に刃を入れていく。手頃な大きさに肉を切り取ると、油の垂れる肉を口へと運んだ。
「ん~、急ごしらえの割にはなかなか」
上品と言える食べ方ではなかったが、リディは何度かこういう食べ方をしているのか、食べ慣れている感じが見受けられた。
ニケも見よう見まねで肉を切り取っていく。
「あつっ」
切り取った肉を取ろうと、肉に指を伸ばしたところで、熱さに驚き指を引っ込める。
「中はまだアツアツだからな、摘むなら端っこがいいぞ」
そう言って、リディが横から指を伸ばして肉をとってくれた。
ふー、ふーととった肉を冷ますように息を吹きかけると、『もういいだろ、ほら』と言ってつまんだ肉をニケに差し出した。
ニケはそのままリディがつまんでいる肉にかぶりつくと、口に広がる肉の味を噛み締めた。
「どうだ?」
「……おいし、い?」
「なんだ、疑問形か」
「なんか足りない」
ニケの感想は正直だった。肉の味はとてもまずいとは言わないが、アサイクの街で食べた料理に対して、決定的に何かが足りなかった。
「なかなかいい味覚をしているな。臭みは下処理と香草でとれるのだが、足りないのは塩気だろうな。値は張るがそのうち大きめの岩塩でも買っておくか」
塩があるとだいぶ変わるぞとリディは肉を口に運びながら教えてくれる。パクパクとたべ進むリディを横目に見つつ、ニケも自分の取り分を確保すべく、食事を進めていった。
ニケも今までの旅の中で自分で獲物を取り、食事をしていたが、下処理なども自分ではしていなかったので、塩気がなくともリディの食事は十分美味しいと感じられた。
こんな狩りと食事をしつつ、たまには町へも寄り、北への旅は順調に進んだ。
旅の中で予想外だったのは万一に備えてアサイクを出発するときに買っておいた保存食が、思いの外美味しかったことである。
『こんなに美味しいなら、もっと買っておけばよかった~』とはリディの嘆きである。
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