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第53話 ナイフ
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アイシスやケルベ達と狩りをした翌日、リディとニケはアキュレティ家の邸宅へと招かれていた。キドナの取り調べを経て、事件の情報が揃ってきたため、まとめの作業を行うとのことだった。
会議は朝から始まった。ここ数日の取り調べで得られたキドナの証言とリディとニケ、そしてアイシスが知ることの照らし合わせを行い、ポリムとアキュレティ卿立ち会いのもとパズルのピースをはめていくように事件の経緯をまとめ、整えていく。
会議は昼食を挟んで昼過ぎまで続いた。
この場で話された内容は資料としてまとめられ、これからのキドナの量刑や同様の事件が発生した場合に備える対策の立案に用いられる。
リディとニケに関しては本日の会議をもってお役御免となり、明日以降イダンセを離れても良いことになった。
会議を終えたとき、アイシスの父ハイス・アキュレティ卿直々に礼を言われた。被害の拡大を防いだこと、そしてアイシスを助けてくれたことに対してだった。リディを貴族ではなく冒険者として扱っているからか、貴族の礼としては簡素なものであったが、仰々しくされるのを好まないリディは、アキュレティ卿の態度は好ましく思えた。
リディ達が会議をしていた応接室を離れ、使用人の先導で玄関へ向かうと、そこには仁王立ちしたアイシスが待っていた。
「来たわね。さぁ行くわよ!」
アイシスはリディとニケの姿を見ると、いきなりそう言い放った。
「どこへ?」
「買い物よ!」
聞けばリディとニケにお礼として旅立つ前に餞別の品を贈呈してくれるとのことだった。
リディはアキュレティ卿に礼を言われたから十分だと断ろうとしたが、アイシスは『お父様も同意の上よ!』と有無を言わせず、リディとニケはアイシスが用意した馬車に乗せられた。
(アキュレティ卿が口頭の礼だけだったのはこのことを踏まえてのことだったか……)
してやられたと馬車に揺られながらリディは思った。
リディとニケが詰め込まれた馬車は、アキュレティ家が所有する豪奢な馬車だった。以前ニケがアイシスと乗せられた荷車と幌だけで出来た馬車とは大違いだ。
車体は貴金属を使用した繊細な彫刻で彩られ、内装は上質な布で布張りされており、どこを触ってもさわり心地がよい。そしてなによりクッションの効いた座席は車輪が石を踏んでも尻が痛くならなかった。
「それで、どこに買い物に行くんだ?」
「まずは武器屋さんね。ニケ君のナイフを買いに行くわよ」
「ナイフ?」
「ニケ君、ナイフをなくしてから、リディに借りてるって言ってたから。自分のがあったほうがいいと思って」
「なくした?」
「……知らなかったの?」
「あ、あぁ。私と会ったときはもう持っていなかったから、初めから持ってなかったのかと」
ナイフはあれば便利だが、旅に必ず必要と言うわけでもない。主に使うのは料理や捕らえた獲物を解体する場面だが、木の実や魚、山菜などはナイフを使わなくても食べることができる。要は動物の肉を食べるときに刃物が重要となる。
ニケはあまり肉が好物という感じでもないので、ナイフを持たずに旅をしていたのかとリディは思っていたのだが、そうではなかったということを今ここで知ることになった。
アイシスが馬車でリディたちを連れてきたのはイダンセの中心街にある大きめの武器屋だった。憲兵やアキュレティ家の私兵、冒険者などもよく利用するイダンセで一番有名な武器屋である。品揃えは剣、ナイフ、槍、弓、杖など一般的なものは不足なく取り揃えている。
そして、武器屋とはいいつつも料理に使う包丁なども置いてある。要は鍛造されるもの全般を扱っていると言って良い店だ。
「うちの兵たちも、ほとんどがこの店で買ってるっていう話を聞いたから品質は確かだと思うのだけど」
「たしかに、品揃えはいいな」
3人は店の中を見回しながら、目的のナイフを探していく。商品にはランクがあるようで、無造作に樽に突っ込まれた剣から、美術品のように展示されたきらびやかな剣まであり、剣以外の武器もピンからキリの商品が取り扱われていた。
ナイフは店の奥側、弓の隣に陳列されていた。武器の主流である剣や槍は店の入口付近に、サブとして扱われることの多いナイフは店の奥にということだろう。
陳列されているナイフの形状も様々だ。細く鋭く、切るというよりも刺すことを目的とした形状のもの。刃にギザギザとした形状があしらわれた、いかにも危なそうなもの。威嚇するように反り返り、刃の部分が湾曲した形状のものなど、いろいろな種類のナイフが扱われている。
「アイシス、予算は?」
品定めに着手する前にリディがアイシスに予算を確認する。
「プレゼントにそんなこと聞く? ……そうねぇお父様から預かった分と私が出す分で30万ジルってところね。あ、二人でよ」
「そんなにか!?」
「公金を使ってもっと出してもいいのだけれど、それはリディが嫌がりそうだしね。私とお父様のポケットマネーを使うことにしたの。その反応を見ると正解だったみたいね」
「あぁ、その額でも申し訳なさすぎるぐらいだ」
アイシスに『遠慮して意図的に安い品を選ぶのはダメよ』と釘をさされて、リディは品定めを始めた。いくつかを手に取りながらニケが取り扱いやすそうなものを探していく。ニケの体に合わせると小さめのものがよい。そう考えて握ったときの手の馴染みや重さを確認しながらリディはナイフを見ていった。
「前に使ってたナイフはどんなのだったんだ?」
いくつか良さそうなのはあったが、本人の希望を聞いていないと思ってリディはニケに聞いてみた。前に使っていたものがあるなら、それに近いものの方が良いはずだ。
「えっと……このぐらいの長さで、ちょっと重めの」
ニケは両手を体の前にだしてナイフの長さを表現する。ニケの体のサイズからすると少し長めだ。男性の大人が扱ってちょうど良いぐらいのサイズだ。
「大きめのがいいのか?ちょっと使いづらいと思うが」
「うん。その大きさに慣れてるし、それに……」
「それに?」
「背、おっきくなるから……」
ニケは少し恥ずかしそうにそう言い、リディとアイシスは目を見合わせて柔らかい笑みを浮かべた。
その後、いくつかのナイフを見繕ってはニケの感触を確かめることを行ったが、納得の行くものは見つからなかった。形の良いものは重さが軽かったり、重さがちょうどよいものは握り手の部分が太かったり、ピッタリとくるものを見つけることが出来ていなかった。
そんなとき、ふと店の隅にあったナイフがニケの目に止まった。ニケは吸い寄せられるようにそのナイフの下へと近づく。それは黒いナイフだった。しかし、ただ黒いだけではなく、刀身には縞模様のような文様が浮かんでいる。不規則だが美しさのあるその文様にニケは惹きつけられた。
「珍しいナイフだな」
横から声をかけてきたのはリディだった。
リディの言う通り刀身にこういう文様が浮かんだナイフはあまり見ない。店の商品を見回しても、この一点だけのようだ。文様は完成後のナイフに後から書き足されたものではなく、製法によるものなのか、ナイフの金属自体がその文様を描き出していた。
「大きさや、重さはどうだ?」
ニケは手にとってそのナイフの重さなど、手への馴染み具合を確かめる。
「……大丈夫」
「じゃあ、それにするか」
購入する品を決めると、リディはアイシスを呼び、アイシスは店主を呼ぶ。
「これが欲しいのだけれど、おいくらかしら?」
「あぁ、それね。1万ジルだよ」
「あら? 安いのね」
「あぁ、まとめて仕入れた中に入っていたんだが、研いでもあんまり切れ味が良くなくてね。素材は良いものだとは思うんだが……」
店主の話によると、値段の安めのナイフは一定期間ごとにまとめて仕入れるのだが、このナイフはそのなかに紛れていたものだということだった。見た目や素材の質はよく見えるので、安ナイフよりは高く、高級ナイフよりは安いこの値段にしているのだと言う。
ただ、店主自身が刃研ぎをしてもなかなか良い切れ味は出ず。実際に使うよりも、部屋に飾るなど観賞用に向いていると、冗談めかして店主は笑った。
「って言ってるけどこれでいいの?」
「うん」
アイシスの質問にニケは迷いなく答えた。
「ニケ君がいいなら、いいけど……。予算が余っちゃうわね」
思ったよりもナイフが安く済んでしまったため、アイシスは顎に手を当てて考える。
「そうね。このナイフにピッタリのケースを作ってもらえるかしら。この子の腰につけられるものがいいわ。成長したときのことを見越して、長さは調整できるようにして頂戴」
他の店ではいつもこのような感じで注文しているのか、慣れたようにアイシスは店主に注文を告げる。店主は慌ててメモを取り出し、アイシスに言われたことを書き留めていく。アイシスはまだ貴族だと名乗ってはいないが、店主はその指示を出す雰囲気から感じるものがあったようで、すでにへりくだるような態度に変わりつつあった。
「ケースはオーダーメイドで作るといくらになるのかしら?」
「えっと、そうですね。この内容でしたら2万ジルってところでしょうか」
「今日中にできる?」
「きょ、今日中ですか!? さすがにそれは……」
「じゃあ、製作を急ぐ分の値段も入れて頂戴。ナイフ込みで15万を超えてしまうかしら?」
「い、いえ。それを込みでも10万もいただければ十分すぎるぐらいです」
「そう?それじゃあ、それでお願いするわ」
「えぇ、畏まりました」
その後、店主は職人を呼んでニケの腰回りの計測や、使い方の聞き取りなど、製作にあたって必要な作業を進めていった。ケースは急ぎで仕上げ、夜には出来上がるとのことだった。
「リディには別の店を案内するつもりだったけれど、ついでに剣も見ていく?」
店を出る前にアイシスはリディにそう声をかけた。リディには別の物を贈るつもりであったが、本人が欲しがるのであれば、ものとしては何でも良いと言うのが本当のところだ。アイシスの希望を優先して、リディが喜ばないものをプレゼントしても本末転倒だ。
「いや、剣はこれがあれば十分だ」
リディは腰に据えた剣を優しく撫でる。
「……そう?」
リディの表情からその剣が大切なものであることが伝わってくる。リディのその表情にアイシスはそれ以上は何も言わず、3人はそのまま店を後にした。
会議は朝から始まった。ここ数日の取り調べで得られたキドナの証言とリディとニケ、そしてアイシスが知ることの照らし合わせを行い、ポリムとアキュレティ卿立ち会いのもとパズルのピースをはめていくように事件の経緯をまとめ、整えていく。
会議は昼食を挟んで昼過ぎまで続いた。
この場で話された内容は資料としてまとめられ、これからのキドナの量刑や同様の事件が発生した場合に備える対策の立案に用いられる。
リディとニケに関しては本日の会議をもってお役御免となり、明日以降イダンセを離れても良いことになった。
会議を終えたとき、アイシスの父ハイス・アキュレティ卿直々に礼を言われた。被害の拡大を防いだこと、そしてアイシスを助けてくれたことに対してだった。リディを貴族ではなく冒険者として扱っているからか、貴族の礼としては簡素なものであったが、仰々しくされるのを好まないリディは、アキュレティ卿の態度は好ましく思えた。
リディ達が会議をしていた応接室を離れ、使用人の先導で玄関へ向かうと、そこには仁王立ちしたアイシスが待っていた。
「来たわね。さぁ行くわよ!」
アイシスはリディとニケの姿を見ると、いきなりそう言い放った。
「どこへ?」
「買い物よ!」
聞けばリディとニケにお礼として旅立つ前に餞別の品を贈呈してくれるとのことだった。
リディはアキュレティ卿に礼を言われたから十分だと断ろうとしたが、アイシスは『お父様も同意の上よ!』と有無を言わせず、リディとニケはアイシスが用意した馬車に乗せられた。
(アキュレティ卿が口頭の礼だけだったのはこのことを踏まえてのことだったか……)
してやられたと馬車に揺られながらリディは思った。
リディとニケが詰め込まれた馬車は、アキュレティ家が所有する豪奢な馬車だった。以前ニケがアイシスと乗せられた荷車と幌だけで出来た馬車とは大違いだ。
車体は貴金属を使用した繊細な彫刻で彩られ、内装は上質な布で布張りされており、どこを触ってもさわり心地がよい。そしてなによりクッションの効いた座席は車輪が石を踏んでも尻が痛くならなかった。
「それで、どこに買い物に行くんだ?」
「まずは武器屋さんね。ニケ君のナイフを買いに行くわよ」
「ナイフ?」
「ニケ君、ナイフをなくしてから、リディに借りてるって言ってたから。自分のがあったほうがいいと思って」
「なくした?」
「……知らなかったの?」
「あ、あぁ。私と会ったときはもう持っていなかったから、初めから持ってなかったのかと」
ナイフはあれば便利だが、旅に必ず必要と言うわけでもない。主に使うのは料理や捕らえた獲物を解体する場面だが、木の実や魚、山菜などはナイフを使わなくても食べることができる。要は動物の肉を食べるときに刃物が重要となる。
ニケはあまり肉が好物という感じでもないので、ナイフを持たずに旅をしていたのかとリディは思っていたのだが、そうではなかったということを今ここで知ることになった。
アイシスが馬車でリディたちを連れてきたのはイダンセの中心街にある大きめの武器屋だった。憲兵やアキュレティ家の私兵、冒険者などもよく利用するイダンセで一番有名な武器屋である。品揃えは剣、ナイフ、槍、弓、杖など一般的なものは不足なく取り揃えている。
そして、武器屋とはいいつつも料理に使う包丁なども置いてある。要は鍛造されるもの全般を扱っていると言って良い店だ。
「うちの兵たちも、ほとんどがこの店で買ってるっていう話を聞いたから品質は確かだと思うのだけど」
「たしかに、品揃えはいいな」
3人は店の中を見回しながら、目的のナイフを探していく。商品にはランクがあるようで、無造作に樽に突っ込まれた剣から、美術品のように展示されたきらびやかな剣まであり、剣以外の武器もピンからキリの商品が取り扱われていた。
ナイフは店の奥側、弓の隣に陳列されていた。武器の主流である剣や槍は店の入口付近に、サブとして扱われることの多いナイフは店の奥にということだろう。
陳列されているナイフの形状も様々だ。細く鋭く、切るというよりも刺すことを目的とした形状のもの。刃にギザギザとした形状があしらわれた、いかにも危なそうなもの。威嚇するように反り返り、刃の部分が湾曲した形状のものなど、いろいろな種類のナイフが扱われている。
「アイシス、予算は?」
品定めに着手する前にリディがアイシスに予算を確認する。
「プレゼントにそんなこと聞く? ……そうねぇお父様から預かった分と私が出す分で30万ジルってところね。あ、二人でよ」
「そんなにか!?」
「公金を使ってもっと出してもいいのだけれど、それはリディが嫌がりそうだしね。私とお父様のポケットマネーを使うことにしたの。その反応を見ると正解だったみたいね」
「あぁ、その額でも申し訳なさすぎるぐらいだ」
アイシスに『遠慮して意図的に安い品を選ぶのはダメよ』と釘をさされて、リディは品定めを始めた。いくつかを手に取りながらニケが取り扱いやすそうなものを探していく。ニケの体に合わせると小さめのものがよい。そう考えて握ったときの手の馴染みや重さを確認しながらリディはナイフを見ていった。
「前に使ってたナイフはどんなのだったんだ?」
いくつか良さそうなのはあったが、本人の希望を聞いていないと思ってリディはニケに聞いてみた。前に使っていたものがあるなら、それに近いものの方が良いはずだ。
「えっと……このぐらいの長さで、ちょっと重めの」
ニケは両手を体の前にだしてナイフの長さを表現する。ニケの体のサイズからすると少し長めだ。男性の大人が扱ってちょうど良いぐらいのサイズだ。
「大きめのがいいのか?ちょっと使いづらいと思うが」
「うん。その大きさに慣れてるし、それに……」
「それに?」
「背、おっきくなるから……」
ニケは少し恥ずかしそうにそう言い、リディとアイシスは目を見合わせて柔らかい笑みを浮かべた。
その後、いくつかのナイフを見繕ってはニケの感触を確かめることを行ったが、納得の行くものは見つからなかった。形の良いものは重さが軽かったり、重さがちょうどよいものは握り手の部分が太かったり、ピッタリとくるものを見つけることが出来ていなかった。
そんなとき、ふと店の隅にあったナイフがニケの目に止まった。ニケは吸い寄せられるようにそのナイフの下へと近づく。それは黒いナイフだった。しかし、ただ黒いだけではなく、刀身には縞模様のような文様が浮かんでいる。不規則だが美しさのあるその文様にニケは惹きつけられた。
「珍しいナイフだな」
横から声をかけてきたのはリディだった。
リディの言う通り刀身にこういう文様が浮かんだナイフはあまり見ない。店の商品を見回しても、この一点だけのようだ。文様は完成後のナイフに後から書き足されたものではなく、製法によるものなのか、ナイフの金属自体がその文様を描き出していた。
「大きさや、重さはどうだ?」
ニケは手にとってそのナイフの重さなど、手への馴染み具合を確かめる。
「……大丈夫」
「じゃあ、それにするか」
購入する品を決めると、リディはアイシスを呼び、アイシスは店主を呼ぶ。
「これが欲しいのだけれど、おいくらかしら?」
「あぁ、それね。1万ジルだよ」
「あら? 安いのね」
「あぁ、まとめて仕入れた中に入っていたんだが、研いでもあんまり切れ味が良くなくてね。素材は良いものだとは思うんだが……」
店主の話によると、値段の安めのナイフは一定期間ごとにまとめて仕入れるのだが、このナイフはそのなかに紛れていたものだということだった。見た目や素材の質はよく見えるので、安ナイフよりは高く、高級ナイフよりは安いこの値段にしているのだと言う。
ただ、店主自身が刃研ぎをしてもなかなか良い切れ味は出ず。実際に使うよりも、部屋に飾るなど観賞用に向いていると、冗談めかして店主は笑った。
「って言ってるけどこれでいいの?」
「うん」
アイシスの質問にニケは迷いなく答えた。
「ニケ君がいいなら、いいけど……。予算が余っちゃうわね」
思ったよりもナイフが安く済んでしまったため、アイシスは顎に手を当てて考える。
「そうね。このナイフにピッタリのケースを作ってもらえるかしら。この子の腰につけられるものがいいわ。成長したときのことを見越して、長さは調整できるようにして頂戴」
他の店ではいつもこのような感じで注文しているのか、慣れたようにアイシスは店主に注文を告げる。店主は慌ててメモを取り出し、アイシスに言われたことを書き留めていく。アイシスはまだ貴族だと名乗ってはいないが、店主はその指示を出す雰囲気から感じるものがあったようで、すでにへりくだるような態度に変わりつつあった。
「ケースはオーダーメイドで作るといくらになるのかしら?」
「えっと、そうですね。この内容でしたら2万ジルってところでしょうか」
「今日中にできる?」
「きょ、今日中ですか!? さすがにそれは……」
「じゃあ、製作を急ぐ分の値段も入れて頂戴。ナイフ込みで15万を超えてしまうかしら?」
「い、いえ。それを込みでも10万もいただければ十分すぎるぐらいです」
「そう?それじゃあ、それでお願いするわ」
「えぇ、畏まりました」
その後、店主は職人を呼んでニケの腰回りの計測や、使い方の聞き取りなど、製作にあたって必要な作業を進めていった。ケースは急ぎで仕上げ、夜には出来上がるとのことだった。
「リディには別の店を案内するつもりだったけれど、ついでに剣も見ていく?」
店を出る前にアイシスはリディにそう声をかけた。リディには別の物を贈るつもりであったが、本人が欲しがるのであれば、ものとしては何でも良いと言うのが本当のところだ。アイシスの希望を優先して、リディが喜ばないものをプレゼントしても本末転倒だ。
「いや、剣はこれがあれば十分だ」
リディは腰に据えた剣を優しく撫でる。
「……そう?」
リディの表情からその剣が大切なものであることが伝わってくる。リディのその表情にアイシスはそれ以上は何も言わず、3人はそのまま店を後にした。
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