5 / 21
4話 王子さま主催のパーティー
しおりを挟む
「ローラ、何かあったらすぐ戻って来ても良いんだからね」
「もう、大丈夫ですわお母さま。ここまで来たら、何とかなりますわ」
「そう? それなら良いんだけど......気をつけて行ってくるのよ」
アレックス主催のパーティー会場付近にいた。
母は会場近くまで見送りにきてくれて、最後まで励ましてくれました。
公爵領から馬車に乗ってここまで来てくれました。
この後は、王都にある屋敷で待っていてくれます。
心強いです。
「では、行って来ますね」
「ローラ、気をつけるのよ! 何かあったらすぐに戻ってくるのよ! 無理だけはしないようにね」
母の言葉を背中に受けながら、歩き続けました。
後ろ髪を引かれるような思いですが、公爵令嬢としてのマナーを忘れてはいけません。
ここからは公の場となる。
行動の一つ一つ、公爵家として責任のある振る舞いをしなければなりません。
たった一つのミスですら、家名を汚すことに繋がりかねません。
「失礼ご令嬢、招待状のお待ちですか」
アレックス主催のパーティー会場である建物の入り口。
護衛の兵士が、招待状の確認を求めて来ました。
私は、アレックスからの手紙を見せました。
「こ、これは......なるほど、分かりました。案内をしますので少しお待ち下さい」
「......?」
それだけ言うと護衛の兵士の一人が、どこかへと行ってしまいました。
あれ? 他の皆さんはすぐに建物に入って行くのに、私だけ止められてしまいました。
どういうことでしょうか。
「お待たせしました。ご案内しますので、足元に注意しながらついて来て下さい」
「ええ、ありがとう」
息を切らしながら兵士が戻って来ました。
私だけ対応が違うことに困惑しながらも、ついて行くことにします。
「こちらです」
案内されたのは、パーティー会場ではありませんでした。
小さな個室のようです。
「パーティーの時間になりましたら、案内の者を寄越します。それまではゆっくりとリラックスをしてお過ごし下さい。入り口に使いの者がいますので、何かあればそちらに」
では仕事がありますので、と兵士は立ち去ってしまいました。
◇
パーティー前には、個室から会場へと案内されました。
すでに会場には、多くの同世代の貴族たちが集まっていました。
今回のパーティーは、アレックス主催としか聞いていないので、何をするかは分かりません。
貴族たちは、自分たちで好き勝手に話しているようです。
「これはこれはアシュトン公爵家のローラさまではありませんか」
「あら、あなたはたしか——」
「我が家はアシュトン公爵には良くしてもらっています。お父上にはどうかよろしくお願いします」
声をかけて来たのは、見覚えのある貴族だ。
アシュトン公爵、お父さまの影響下にある家の貴族の一人です。
「では、私はこれで失礼させてもらいます」
少しだけ立ち話をすると、立ち去って行く。
社交の場でのマナーとしてのあいさつに来たみたいです。
その後も、お父さまの知り合いの家の人たちが来ました。
アシュトン公爵家との交流を深めるため、娘の私に声かけを忘れないようにです。
中には、全く知らない貴族もいましたが、交流のチャンスを狙ってのことのようです。
何人かの相手を終えて、私の元に来る貴族はいなくなりました。
周囲を見渡す余裕が出来たので、見渡していると。
ズキン。
胸が痛むのが分かりました。
エドガーとその恋人であるデイジーが、腕を組みながら仲よさそうに歩いているのを、目撃してしまいました。
ズキン。
やっぱり来なければ良かった......。
お母さまに言われて来たけれど、直接見ると思っていたよりもショックは大きかったです。
目が湿りはじめて、涙が出そうになって来ました。
その時、グイっ、と体を引き寄せられました。
「見たくないものを見る必要はない」
「ど、どなたですの」
「僕を忘れてしまったのかい、ローラ」
「ア、アレックスさま!」
私のことを引っ張ったのは、なんとアレックスでした。
アレックスは、エドガーとデイジーを見なくて済むように、私から二人を隠すように立っています。
「そこの君、彼女に何か飲み物を頼む」
「かしこまりました」
アレックスは、近くにいたメイドに指示を出しました。
「ありがとうございます。少しだけ落ち着きました」
「それは良かった」
私は、メイドが持ってきた飲み物をのんで、落ち着くことが出来ました。
アレックスのおかげです。
「まさか本当に君が来てくれるとは思わなかったよ、ローラ」
「本当は来るつもりはなかったのですが......」
先程のエドガーたちのことを思い出す。
「今はそれでも良い。だけど見たくないものを無理して見る必要はない。今日は君にこの空間を楽しんでほしいんだ」
アレックスと少しだけ雑談をしました。
なんてことはない会話だけれども、楽しいです。
「そうだ、最後にダンスを予定しているんだけど、ローラが良ければ一緒に踊ってくれないかい?」
「ええ、私で良ければ喜んで」
少しだけ悩んでから、答えました。
ダンスが始まりました。
周囲にいた貴族たちは、一斉に踊りはじめます。
私もアレックスと手を取って、踊りはじめました。
「君はダンスがうまいね」
「良き妻となるとように教えられましたから......」
「そうか、それもそうだね」
踊りながらアレックスと会話をしていきました。
少し時間が経って、視界にエドガーとデイジーがうつりました。
ズキン。
「今、この瞬間は俺だけを見てくれ」
「アレックスさま?」
「他のやつを見る必要はない。見るのは俺だけでいい」
アレックスは顔を真っ赤にしながら、そう言いました。
なんだが可愛いです。
私は先程の二人のことはすっかり忘れてしまっていました。
そんなやり取りを続けながら踊っていると、ダンスが終わってパーティーも終わりの時間になりました。
「今日はありがとうございました。アレックスさまがいなければ、この素晴らしいパーティーを知ることもありませんでしたわ」
「僕の方こそ感謝したいさ。ローラ、君が来てくれて嬉しかったよ」
アレックスに別れを告げて、パーティー会場を後にしました。
エドガーとデイジーはすでに会場にはいませんでした——。
「もう、大丈夫ですわお母さま。ここまで来たら、何とかなりますわ」
「そう? それなら良いんだけど......気をつけて行ってくるのよ」
アレックス主催のパーティー会場付近にいた。
母は会場近くまで見送りにきてくれて、最後まで励ましてくれました。
公爵領から馬車に乗ってここまで来てくれました。
この後は、王都にある屋敷で待っていてくれます。
心強いです。
「では、行って来ますね」
「ローラ、気をつけるのよ! 何かあったらすぐに戻ってくるのよ! 無理だけはしないようにね」
母の言葉を背中に受けながら、歩き続けました。
後ろ髪を引かれるような思いですが、公爵令嬢としてのマナーを忘れてはいけません。
ここからは公の場となる。
行動の一つ一つ、公爵家として責任のある振る舞いをしなければなりません。
たった一つのミスですら、家名を汚すことに繋がりかねません。
「失礼ご令嬢、招待状のお待ちですか」
アレックス主催のパーティー会場である建物の入り口。
護衛の兵士が、招待状の確認を求めて来ました。
私は、アレックスからの手紙を見せました。
「こ、これは......なるほど、分かりました。案内をしますので少しお待ち下さい」
「......?」
それだけ言うと護衛の兵士の一人が、どこかへと行ってしまいました。
あれ? 他の皆さんはすぐに建物に入って行くのに、私だけ止められてしまいました。
どういうことでしょうか。
「お待たせしました。ご案内しますので、足元に注意しながらついて来て下さい」
「ええ、ありがとう」
息を切らしながら兵士が戻って来ました。
私だけ対応が違うことに困惑しながらも、ついて行くことにします。
「こちらです」
案内されたのは、パーティー会場ではありませんでした。
小さな個室のようです。
「パーティーの時間になりましたら、案内の者を寄越します。それまではゆっくりとリラックスをしてお過ごし下さい。入り口に使いの者がいますので、何かあればそちらに」
では仕事がありますので、と兵士は立ち去ってしまいました。
◇
パーティー前には、個室から会場へと案内されました。
すでに会場には、多くの同世代の貴族たちが集まっていました。
今回のパーティーは、アレックス主催としか聞いていないので、何をするかは分かりません。
貴族たちは、自分たちで好き勝手に話しているようです。
「これはこれはアシュトン公爵家のローラさまではありませんか」
「あら、あなたはたしか——」
「我が家はアシュトン公爵には良くしてもらっています。お父上にはどうかよろしくお願いします」
声をかけて来たのは、見覚えのある貴族だ。
アシュトン公爵、お父さまの影響下にある家の貴族の一人です。
「では、私はこれで失礼させてもらいます」
少しだけ立ち話をすると、立ち去って行く。
社交の場でのマナーとしてのあいさつに来たみたいです。
その後も、お父さまの知り合いの家の人たちが来ました。
アシュトン公爵家との交流を深めるため、娘の私に声かけを忘れないようにです。
中には、全く知らない貴族もいましたが、交流のチャンスを狙ってのことのようです。
何人かの相手を終えて、私の元に来る貴族はいなくなりました。
周囲を見渡す余裕が出来たので、見渡していると。
ズキン。
胸が痛むのが分かりました。
エドガーとその恋人であるデイジーが、腕を組みながら仲よさそうに歩いているのを、目撃してしまいました。
ズキン。
やっぱり来なければ良かった......。
お母さまに言われて来たけれど、直接見ると思っていたよりもショックは大きかったです。
目が湿りはじめて、涙が出そうになって来ました。
その時、グイっ、と体を引き寄せられました。
「見たくないものを見る必要はない」
「ど、どなたですの」
「僕を忘れてしまったのかい、ローラ」
「ア、アレックスさま!」
私のことを引っ張ったのは、なんとアレックスでした。
アレックスは、エドガーとデイジーを見なくて済むように、私から二人を隠すように立っています。
「そこの君、彼女に何か飲み物を頼む」
「かしこまりました」
アレックスは、近くにいたメイドに指示を出しました。
「ありがとうございます。少しだけ落ち着きました」
「それは良かった」
私は、メイドが持ってきた飲み物をのんで、落ち着くことが出来ました。
アレックスのおかげです。
「まさか本当に君が来てくれるとは思わなかったよ、ローラ」
「本当は来るつもりはなかったのですが......」
先程のエドガーたちのことを思い出す。
「今はそれでも良い。だけど見たくないものを無理して見る必要はない。今日は君にこの空間を楽しんでほしいんだ」
アレックスと少しだけ雑談をしました。
なんてことはない会話だけれども、楽しいです。
「そうだ、最後にダンスを予定しているんだけど、ローラが良ければ一緒に踊ってくれないかい?」
「ええ、私で良ければ喜んで」
少しだけ悩んでから、答えました。
ダンスが始まりました。
周囲にいた貴族たちは、一斉に踊りはじめます。
私もアレックスと手を取って、踊りはじめました。
「君はダンスがうまいね」
「良き妻となるとように教えられましたから......」
「そうか、それもそうだね」
踊りながらアレックスと会話をしていきました。
少し時間が経って、視界にエドガーとデイジーがうつりました。
ズキン。
「今、この瞬間は俺だけを見てくれ」
「アレックスさま?」
「他のやつを見る必要はない。見るのは俺だけでいい」
アレックスは顔を真っ赤にしながら、そう言いました。
なんだが可愛いです。
私は先程の二人のことはすっかり忘れてしまっていました。
そんなやり取りを続けながら踊っていると、ダンスが終わってパーティーも終わりの時間になりました。
「今日はありがとうございました。アレックスさまがいなければ、この素晴らしいパーティーを知ることもありませんでしたわ」
「僕の方こそ感謝したいさ。ローラ、君が来てくれて嬉しかったよ」
アレックスに別れを告げて、パーティー会場を後にしました。
エドガーとデイジーはすでに会場にはいませんでした——。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる