真実の愛を見つけたからと婚約破棄されました。私も真実の愛を見つけたので、今更復縁を迫っても遅いです

ダイナイ

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3話 母の存在

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「どうしたのローラ、何か心当たりでもあるの?」

「ええお母さま。実は——」

 私は、小川でアレックスに会ったことを伝えました。
 もちろん、泣いていたことを黙ったまま会ったことを伝えました。
 いくらお母さまとは言え、恥ずかしいので内緒です。

「まぁ!」

 母は、手を口に当てて声を高くして言った。

「それで、王子さまから直接誘われたのね?」

「え、ええ」

「王子さまから誘われるなんて、めったにあることじゃないわ!」

 母は自分のことのように、はしゃいでいる。

「ローラ、早くお手紙を見てみましょう!」

 母は、乗り気のようで、早く早くと急かして来ます。
 だけど私はそうではありません。
 母のようには喜ぶことは出来ませんでした。

「どうかしたの?」

「ううん、なんでもないの。早く開けましょう」

 私は、丁寧に手紙を開けて行きました。
 手紙には、奇麗きれいな文字でローラ・アシュトン宛と書かれていた。

「まぁっ!」

 母は、先ほどよりも大きな声でそう言った。
 少し待っていて、とだけ言い残して部屋を出て行きました。



 しばらく部屋で待っていると、母が戻って来た。
 その手には、手紙のような物がありました。

「これわね、公爵家宛に届いた手紙なの」

 ここを良く見て、と指を指しながら手紙を見せて来た。
 あれ、同じ手紙が二通も来たの?
 それなら、アレックスがわざわざ送る必要はなかったんじゃないの。

「良く見て、アシュトン公爵家宛と書いてあるでしょう」

「ええ、たしかに書いてありますわ」

 母が持ってきた手紙の宛先は、私ではなくて公爵家となっていました。
 書いてあることは同じなのに、宛先が違うってどういうことでしょうか。

「これはどういうことですか? お母さま」

「今、私が持っているのが社交辞令として全ての貴族に送られたお手紙。そしてローラ宛に届いたお手紙は、王子さまがあなたにわざわざ出したものなの」

「ん? 何か違いがありますの?」

「良いローラ、本来であれば送る必要がないものなの。それをわざわざ送って来たということは、ローラ、王子さまはあなたに来てほしいってことなのよ」

 きっとそうに決まっているわ、と母はとても喜んでいます。
 母からしたら、王子さまに来て欲しいように見えたのかもしれません。

 だけど私はそうは思えませんでした。
 私には、この手紙は慰めの意味を持っているようにしか思えません。
 アレックスには、私が泣いている姿を見られています。

 だからこの手紙も、きっと社交辞令に過ぎないはずです。

「お母さまが喜んでいるところ、もう訳ないのですが......」

「どうしたのローラ」

「私は、私はパーティーは断ろうと思っています」

「ええっ! どうしてっ! それはもったいないわ」

 私は、パーティーを断ろうと考えていることを母に伝えました。
 行っても恥をかくだけではなく、エドガーにも会わなくてはなりません。

「何か理由はあるのかしら? もしかして......」

「ええ——」

 母に行きたくない理由を話しました。
 エドガーのこと、周囲からの視線が気になること。
 エドガーの恋人を見たくないこと、伝えました。

「お母さんはローラのつらさを感じてあげることは出来ないけれど、少しだけなら分かってあげることは出来るわ。でも、それでもパーティーには参加するべきよ」

「でも......」

「せっかく王子さまからお手紙をもらえたのよ。ローラが受け取ったお手紙それは、誰もがもえるものじゃないのよ。ほしくても手に入らない人だって、たくさん、それも物凄ものすごくたくさんいるの」

 母は、手紙がどれだけ貴重なものかを語ってくれました。

「人によってはどんな宝石よりも、黄金よりも価値のあるものかもしれないわ。それほどの物をローラは受け取ったの」

「そんなに価値があるのですか?」

「ええ。だから、行くだけ行ってみたらどうかしら? 行かないで後悔するよりも、行って後悔した方が後で受けるダメージは少なくて済むと思うの」

「......」

 今は、行きたくないという気持ちの方が強いです。
 私の考えは後で変わるのでしょうか。

 もし後で行っておけば良かったと思った時には、手遅れになっているかもしれません。

「大丈夫よ、お母さんも一緒に王都に行ってあげるわ」

 私が悩んでいるのを見ると、一緒に来てくれると言ってくれました。

「でもこれは未婚の者限定と書いてありますわ。お母さまは参加できません」

「お母さんは王都の屋敷にいるわ。何かあれば、すぐに帰って来ていいようにお父さんにもお願いしておくから。ローラ、行きましょう?」

「ええ......お母さまがそこまで言うなら、参加するだけしてみます」

 母からの強いお誘いに、私は折れました。
 王都に行けば、エドガーに会わなくては行けません。
 でもお母さまがいるのなら、心強いです。

「まぁ! それなら、ドレスにお化粧に準備することが多いわ! 特別なドレスを作らせましょう!」

 母はとても乗り気で、はしゃぎならそう言いました。
 私はそんな母の背中を見ながら、安心感を覚えました。


 パーティー、行くだけ行ってみましょうか。
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