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「あー疲れた」
「私、もう歩けないわよ」
「俺も疲れました」
俺たち三人は、ダンジョンから探索者ギルドに戻っていた。
疲れてはいるけれど、報告は今日の内にしなければならない。
探索者ギルドの受付へと向かう。
「お疲れ様です」
今日の受付にいるのは、瑞奈さんではないようだ。
初めて見る男性の職員だった。
その職員は、ぼっーとした様子でやる気が感じられない表情をしている。
やる気は無さそうだけど、一応受付はしてくれるみたいだ。
探索者ギルドの受付は、暇過ぎるのかもしれないな。
「ほら舞花、お前はよく見ておけよ」
「はーい」
師匠は、舞花にダンジョン探索後の手続きを教えている。
俺の時は適当だったのに、舞花はしっかりと教えているみたいだ。
まぁ、あの時は仕方ないと言えば仕方ないか。
「透、地図出せ」
「あ、はい」
考えごとをしていると、師匠が話かけて来た。
今回のダンジョン探索では、俺が地図担当になった。
とてもじゃないが、舞花が描いた地図を出すわけにはいかない。
「これで事務手続きは終了です。どうぞ、報酬と社会探索報酬です」
「へー、こんなの貰えるのね」
舞花は、受付の男性から魔道具を受け取った。
もちろん俺は前回受け取っているので、俺の分はない。
「前回よりはお金貰えてますね」
「あたしはいらないから、二人で分けな」
「やった! お金!」
今回のダンジョン探索で貰えた報酬は、前回よりは多くなっていた。
だけどそれでも、まだ生活していけるレベルではない。
師匠もそれを考えか、二人で報酬を分けて良いと言ってくれる。
「二人とも打ち上げに行くぞ!」
「え? 私お金ないわよ」
「あたしが奢ってやるから心配するな」
「師匠、ありがとうございます」
ダンジョン探索の報告も済ませたので、探索者ギルドの外へと出る。
舞花は奢って貰える嬉しさから、わーいと言いながら回っている。
そんなに喜ぶくらいだから、余程お金に困っているのだろう。
「こっちだ。着いて来な」
俺と舞花は、師匠の案内に着いて行くことにした。
奢って貰えるのだから、どこの店でも良いだろう。
「ここの店だ」
「結構高そうな店ですね」
「まあな。入るぞ」
案内されて来た場所は、居酒屋だった。
だけど、良くあるような学生が多くいるような店ではない。
外観からして、客を選びそうな見た目をしている。
舞花は後ろでまだ喜んでいた。
店内に入ると、席に案内される。
個室になっているので、人目を気にせずに食べられるようだ。
暫く食事を食べ続けていると、師匠が口を開いた。
「二人に言いたいことがある」
「言いたいこと?」
「なんですか?」
俺と舞花は、食べるのを辞めて師匠の方を向く。
師匠もお箸を置いて、俺たちの方を見る。
「お前たち二人の指導はここまでだ」
「え?」
「どういう事ですか?」
いきなりのことに、質問をした。
師匠が言ったことの意味が良く分からなかったのだ。
「そのまんまの意味だ。ここからはそれぞれ自立しろってことだ」
「えっ」
「そんないきなり言われても......」
どうやら、俺たちに対する指導は終了らしい。
ここからは師匠に教えて貰うことは出来ず、一人でやって行かなければならないということだ。
「ちょっと待って。透はまだ良いとして、私なんてまだ一回しかダンジョンに潜ってないわよ?」
「俺だってまだ全然分かりませんよ」
「教えられることはある程度教えたつもりだ」
俺だって舞花だって、まだまだ探索者としてやって行く自信はない。
罠解除やモンスターへの対応については学んだ。
それでも、一人でやって行けるだけの技術があるとは言えないだろう。
師匠はコップを手に取り、お酒を飲んだ。
ずっと話をしていたから、喉を潤したのだろう。
それからまた口を開く。
「あたしだって本当はもっと教えてやりたいさ。だが、探索者は常に人手不足なんだ。一人に長い時間かけることは不可能だ」
「そんな......」
「そうですか......」
探索者が人手不足なのは聞いていた。
だけど、ここまでとは思ってもいなかった。
「あんたたちは恵まれている方だ。あたしたちの頃なんて、指導者なんて存在はいなかったからな」
「え、そうなの?」
「あぁ」
師匠は、懐かしむように遠い目をする。
ダンジョンが出来たのは、数年前。
初期の頃は、みんなが自分のことに必死だっただろう。
それに、経験なんてものも無かっただろう。
その頃と比べると、俺たちは確かに恵まれている。
とてもじゃないけど、わがままは言えない。
「二人にはこれをやる」
「何これ?」
「何ですか?」
師匠から、小さな袋に入ったものを渡された。
何かは分からないけれど、見たことのないものだ。
「それは、ダンジョンで発見された魔道具だ」
「魔道具?」
「あぁ。詳しいことは魔道具屋に行けば分かるだろう」
師匠から渡されたのは、ダンジョン産の魔道具だった。
ダンジョン産の魔道具は、鑑定をするまでは性能は分からない。
だけど、その分強力なものも多い。
売ればお金にだってなるだろう。
そんなものをくれるなんて、とても有り難い。
「それを売っても良いし、使っても良い。あたしからの餞別だ」
「師匠、ありがとうございました」
「私も、ありがとう」
そう言って師匠は、会計を済ませて外へと言ってしまう。
師匠が座っていた席には、食べ終わった皿が置かれていた。
「行っちゃったわね」
「そうだね......」
俺と舞花は、互いに見つめ合う。
これから先、どうしたら良いのか分からない。
それは舞花も同じだろう。
俺のスキル【危機察知】があれば、探索者としてやって行けるかもしれない。
だけど、それは確実ではない。
一人だと危険だってあるし、俺には経験がない。
いくら【危機察知】で危険を回避出来るとは言え、探索者としてやって行くには不安が残る。
それは舞花も同じのようだ。
舞花は困った顔をしている。
舞花の【探知】も、うまく使えば探索者としてやって行けるだろう。
だけど、俺よりも経験がない。
しかも回数制限がある以上は、一人でダンジョンに潜るのは危険だ。
そのまで考えて、俺は一つの結論を出した。
「あのさ」
「ねぇ、透」
舞花に話かけようとしたら、発言が被ってしまった。
「先に言っていいよ」
「透の方こそ何よ」
「俺たち、パーティを組まない?」
「パーティ?」
一人で不安があるなら、一緒にダンジョンに潜る仲間を見つければ良い話だ。
俺と舞花のスキルなら、どんなダンジョンだってなんとかなるかもしれない。
それに、一人で無理でも二人なら何とか出来る。
そう思って舞花にパーティを組むことを提案した。
「うん、パーティ。一緒にダンジョンに潜る仲間になって欲しい」
「そ、そう。パーティ。透がどうしてもって言うなら組んでも良いわよ」
舞花は笑顔になり、パーティを組むことに同意してくれた。
断られるかもしれないと思っていたけれど、大丈夫だったみたいだ。
「良かった。後は、探索者ギルドでパーティ申請をすれば、パーティになれるよ」
「それなら後で行くわよ」
探索者のパーティは、探索者ギルドに申請することで組むことが出来る。
ネットなどで調べたので、間違いはないだろう。
詳しいことは、瑞奈さんに聞けば良い。
「ところで、舞花は何か言いかけて無かった?」
「え? あ、良いのよ。特に言うほどのことでもないわ」
「そう、それなら良いんだけど......」
「それよりも、店出るわよ!」
会話を一時中断して、店を出ることにした。
会計は既に師匠が済ませてくれたので、する必要はない。
店を出た所で、舞花が振り返る。
「ねぇ透、これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
舞花は笑顔でそう言った。
これからダンジョン探索を行うパーティを組むのだ。
だけど、舞花と一緒なら何とかなるだろう。
師匠からノウハウを学び、探索方法はある程度分かった。
後は、それを実践して行くだけだ。
俺たちのダンジョン探索は、これから始まる。
「私、もう歩けないわよ」
「俺も疲れました」
俺たち三人は、ダンジョンから探索者ギルドに戻っていた。
疲れてはいるけれど、報告は今日の内にしなければならない。
探索者ギルドの受付へと向かう。
「お疲れ様です」
今日の受付にいるのは、瑞奈さんではないようだ。
初めて見る男性の職員だった。
その職員は、ぼっーとした様子でやる気が感じられない表情をしている。
やる気は無さそうだけど、一応受付はしてくれるみたいだ。
探索者ギルドの受付は、暇過ぎるのかもしれないな。
「ほら舞花、お前はよく見ておけよ」
「はーい」
師匠は、舞花にダンジョン探索後の手続きを教えている。
俺の時は適当だったのに、舞花はしっかりと教えているみたいだ。
まぁ、あの時は仕方ないと言えば仕方ないか。
「透、地図出せ」
「あ、はい」
考えごとをしていると、師匠が話かけて来た。
今回のダンジョン探索では、俺が地図担当になった。
とてもじゃないが、舞花が描いた地図を出すわけにはいかない。
「これで事務手続きは終了です。どうぞ、報酬と社会探索報酬です」
「へー、こんなの貰えるのね」
舞花は、受付の男性から魔道具を受け取った。
もちろん俺は前回受け取っているので、俺の分はない。
「前回よりはお金貰えてますね」
「あたしはいらないから、二人で分けな」
「やった! お金!」
今回のダンジョン探索で貰えた報酬は、前回よりは多くなっていた。
だけどそれでも、まだ生活していけるレベルではない。
師匠もそれを考えか、二人で報酬を分けて良いと言ってくれる。
「二人とも打ち上げに行くぞ!」
「え? 私お金ないわよ」
「あたしが奢ってやるから心配するな」
「師匠、ありがとうございます」
ダンジョン探索の報告も済ませたので、探索者ギルドの外へと出る。
舞花は奢って貰える嬉しさから、わーいと言いながら回っている。
そんなに喜ぶくらいだから、余程お金に困っているのだろう。
「こっちだ。着いて来な」
俺と舞花は、師匠の案内に着いて行くことにした。
奢って貰えるのだから、どこの店でも良いだろう。
「ここの店だ」
「結構高そうな店ですね」
「まあな。入るぞ」
案内されて来た場所は、居酒屋だった。
だけど、良くあるような学生が多くいるような店ではない。
外観からして、客を選びそうな見た目をしている。
舞花は後ろでまだ喜んでいた。
店内に入ると、席に案内される。
個室になっているので、人目を気にせずに食べられるようだ。
暫く食事を食べ続けていると、師匠が口を開いた。
「二人に言いたいことがある」
「言いたいこと?」
「なんですか?」
俺と舞花は、食べるのを辞めて師匠の方を向く。
師匠もお箸を置いて、俺たちの方を見る。
「お前たち二人の指導はここまでだ」
「え?」
「どういう事ですか?」
いきなりのことに、質問をした。
師匠が言ったことの意味が良く分からなかったのだ。
「そのまんまの意味だ。ここからはそれぞれ自立しろってことだ」
「えっ」
「そんないきなり言われても......」
どうやら、俺たちに対する指導は終了らしい。
ここからは師匠に教えて貰うことは出来ず、一人でやって行かなければならないということだ。
「ちょっと待って。透はまだ良いとして、私なんてまだ一回しかダンジョンに潜ってないわよ?」
「俺だってまだ全然分かりませんよ」
「教えられることはある程度教えたつもりだ」
俺だって舞花だって、まだまだ探索者としてやって行く自信はない。
罠解除やモンスターへの対応については学んだ。
それでも、一人でやって行けるだけの技術があるとは言えないだろう。
師匠はコップを手に取り、お酒を飲んだ。
ずっと話をしていたから、喉を潤したのだろう。
それからまた口を開く。
「あたしだって本当はもっと教えてやりたいさ。だが、探索者は常に人手不足なんだ。一人に長い時間かけることは不可能だ」
「そんな......」
「そうですか......」
探索者が人手不足なのは聞いていた。
だけど、ここまでとは思ってもいなかった。
「あんたたちは恵まれている方だ。あたしたちの頃なんて、指導者なんて存在はいなかったからな」
「え、そうなの?」
「あぁ」
師匠は、懐かしむように遠い目をする。
ダンジョンが出来たのは、数年前。
初期の頃は、みんなが自分のことに必死だっただろう。
それに、経験なんてものも無かっただろう。
その頃と比べると、俺たちは確かに恵まれている。
とてもじゃないけど、わがままは言えない。
「二人にはこれをやる」
「何これ?」
「何ですか?」
師匠から、小さな袋に入ったものを渡された。
何かは分からないけれど、見たことのないものだ。
「それは、ダンジョンで発見された魔道具だ」
「魔道具?」
「あぁ。詳しいことは魔道具屋に行けば分かるだろう」
師匠から渡されたのは、ダンジョン産の魔道具だった。
ダンジョン産の魔道具は、鑑定をするまでは性能は分からない。
だけど、その分強力なものも多い。
売ればお金にだってなるだろう。
そんなものをくれるなんて、とても有り難い。
「それを売っても良いし、使っても良い。あたしからの餞別だ」
「師匠、ありがとうございました」
「私も、ありがとう」
そう言って師匠は、会計を済ませて外へと言ってしまう。
師匠が座っていた席には、食べ終わった皿が置かれていた。
「行っちゃったわね」
「そうだね......」
俺と舞花は、互いに見つめ合う。
これから先、どうしたら良いのか分からない。
それは舞花も同じだろう。
俺のスキル【危機察知】があれば、探索者としてやって行けるかもしれない。
だけど、それは確実ではない。
一人だと危険だってあるし、俺には経験がない。
いくら【危機察知】で危険を回避出来るとは言え、探索者としてやって行くには不安が残る。
それは舞花も同じのようだ。
舞花は困った顔をしている。
舞花の【探知】も、うまく使えば探索者としてやって行けるだろう。
だけど、俺よりも経験がない。
しかも回数制限がある以上は、一人でダンジョンに潜るのは危険だ。
そのまで考えて、俺は一つの結論を出した。
「あのさ」
「ねぇ、透」
舞花に話かけようとしたら、発言が被ってしまった。
「先に言っていいよ」
「透の方こそ何よ」
「俺たち、パーティを組まない?」
「パーティ?」
一人で不安があるなら、一緒にダンジョンに潜る仲間を見つければ良い話だ。
俺と舞花のスキルなら、どんなダンジョンだってなんとかなるかもしれない。
それに、一人で無理でも二人なら何とか出来る。
そう思って舞花にパーティを組むことを提案した。
「うん、パーティ。一緒にダンジョンに潜る仲間になって欲しい」
「そ、そう。パーティ。透がどうしてもって言うなら組んでも良いわよ」
舞花は笑顔になり、パーティを組むことに同意してくれた。
断られるかもしれないと思っていたけれど、大丈夫だったみたいだ。
「良かった。後は、探索者ギルドでパーティ申請をすれば、パーティになれるよ」
「それなら後で行くわよ」
探索者のパーティは、探索者ギルドに申請することで組むことが出来る。
ネットなどで調べたので、間違いはないだろう。
詳しいことは、瑞奈さんに聞けば良い。
「ところで、舞花は何か言いかけて無かった?」
「え? あ、良いのよ。特に言うほどのことでもないわ」
「そう、それなら良いんだけど......」
「それよりも、店出るわよ!」
会話を一時中断して、店を出ることにした。
会計は既に師匠が済ませてくれたので、する必要はない。
店を出た所で、舞花が振り返る。
「ねぇ透、これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
舞花は笑顔でそう言った。
これからダンジョン探索を行うパーティを組むのだ。
だけど、舞花と一緒なら何とかなるだろう。
師匠からノウハウを学び、探索方法はある程度分かった。
後は、それを実践して行くだけだ。
俺たちのダンジョン探索は、これから始まる。
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