1 / 1
明の怪物
しおりを挟む
授業が終わったことを知らせるチャイムが鳴る。
急いで用意を済ませて、軽い足取りで帰路を歩く。
全てから解放された気分になる。
いつも見ている電柱、小川、小鳥といったいつも見ている風景さえも輝いて見える。
日常にありふれている光景が輝き、希望に満ちているように思える。
「ただいま」
「おかえりなさい」
軽い玄関の扉を開けて家に入る。
家に入ると、母が出迎えてくれた。
安堵のため息を漏らす。
今この瞬間から僕は、あの震えるほど怖ろしい怪物から解放されたのだ。
「あんた、宿題早くやっちゃいなさいよ」
家に帰ると毎日言われることを今日も言われる。
いつもなら、テレビを見てゴロゴロとダラけて宿題はギリギリまでやらないでいる。
だが、今日はいつもとは違う。
手洗いを済ませてすぐに宿題を終わらせる。
あの怪物に怯えることなく、ゆっくりと過ごせる貴重な時間を過ごすために......
◇
スマホゲームをやりながら、あの怖ろしい怪物を倒す方法を考えてみる。
今までは怖ろしくて手も足も出なかったけれど、これからは違う。
今まで何も出来なかった分、一矢報いてやる。
考えれば考えるほどどうして良いのか分からなくなる。
あの怪物と戦っても勝てる方法が思いつかない。
現段階で考えられる手段をいくつかあげてみたが、有効打になりえるものはなさそうだった。
「お兄ちゃん、ゲーム一緒にやっていい?」
「いいぞ。今日は俺に勝てるつもりなのか?」
部屋でスマホゲームをしていると、妹の雫が話しかけてきた。
ここの所、連戦連勝である俺に戦いを挑むとは良い度胸だ。
今日も俺の勝ちは揺るがないだろう。
対戦するゲームは、最近流行っているオンライン対戦型のスマホゲームだ。
1vs1で対戦することが出来、課金要素はアバターなどの装飾品のみでキャラクターの強さには影響されない。
つまり、純粋なプレイ技術のみで相手と対戦を楽しむことが出来るのだ。
「お兄ちゃん少しは手加減してよ~」
コンボを決めて完勝をすると、妹がそう言った。
「すまんな雫、ゲームでも俺は手を抜かん!」
「けち~、そんなんだからモテないんだよ~」
「ぐっ。」
雫はゲームで勝てないからと精神的ダメージを与えてきた。
その後もゲームをポチポチと続けたが、最後まで妹が勝つことは無かった。
ゲームのついでだからと思い、妹にあの怪物のことを話してみた。
助言でも貰えれば、解決策が見るかるかもしれない。
「はあ?お兄ちゃんって馬鹿なの?」
経緯を伝えると、雫は呆れている様子だっ
た。
やれやれと言って雫はため息をつく。
「そう言うなって。俺は本気で悩んでるんだぞ」
「それなら学校に行かなければいいんじゃない?」
お母さんが許すわけもないけどね、小さく続けて妹が話す。
その瞬間、悩んでいた問題がちっぽけに思えた。
雫の何気ない一言のおかげで、絶望の中に小さな希望を見つけることが出来た気がする。
「その手があったか。ナイスだ雫!」
「はぁ。こりゃ重症だわ」
やってられん、と言い残して妹が部屋から出ていく。
俺は勘違いをしていたみたいだ。
あの震えるほど怖ろしく、どうやっても勝ち筋の見えない怪物に立ち向かおうとしていたこと自体が間違いだった。
勝てないなら逃げればいいじゃないか。
◇
「ダメです」
これからは学校には行かないと伝えると、母が短くそう言った。
母の顔を見ると、呆れている様子だった。
「そ......そんな」
膝の力が無くなり、土下座をするような形で床へと倒れ込む。
やっと見えた一筋の光が消え去ったように感じた。
「あんたこれから受験があるって言うのに、何あほなことを言ってるのよ。ダメなものはダメよ。そんなあほなことを言ってる暇があったら、成績でも上げてなさい」
母はそれだけ言うとキッチンの方へと行った。
これほど俺が悩んでいると言うのに、夕飯の支度の方が重要らしい。
悩みに悩んだ末に出た答えを否定され、足取りが重い中部屋へと戻る。
振り出しに戻り何をして良いのか分からなくてなった。
その後も解決策を考えるも、見つかるわけもなく食事と風呂を済ませてベットへと入る。
◇
太陽が昇り、部屋に日差しが入り込む。
ベットから出て学校に行く支度をしようとすると、パジャマが濡れていることに気付く。
どうやら、寝ている間に大量の汗をかいていたみたいだ。
それも仕方ないだろう。
昨日の夜から朝にかけてが、一番あの怪物の存在を感じる瞬間なのだから。
何もしても勝てず、逃げることさえも許されないあの怪物。
バタバタと物音が聞こえてくる。
どうやら雫が朝練に遅れないように急いで準備をしているみたいだ。
その音は、階段を走るように降りて来て玄関へと向かっている。
「お兄ちゃん先に行ってるよ~。行ってきまーす」
雫は、大きく元気な声でそう言って外へ出て行った。
まるで雫は、あの怪物を認識していないかのようだった。
「行ってきます」
それだけ言うと重い玄関の扉を閉めて外へと出る。
この瞬間、俺は敗北を悟った。
この先、何があろうとあの怪物に勝つことはないのだと。
だから俺は、今日も学校に行く。
急いで用意を済ませて、軽い足取りで帰路を歩く。
全てから解放された気分になる。
いつも見ている電柱、小川、小鳥といったいつも見ている風景さえも輝いて見える。
日常にありふれている光景が輝き、希望に満ちているように思える。
「ただいま」
「おかえりなさい」
軽い玄関の扉を開けて家に入る。
家に入ると、母が出迎えてくれた。
安堵のため息を漏らす。
今この瞬間から僕は、あの震えるほど怖ろしい怪物から解放されたのだ。
「あんた、宿題早くやっちゃいなさいよ」
家に帰ると毎日言われることを今日も言われる。
いつもなら、テレビを見てゴロゴロとダラけて宿題はギリギリまでやらないでいる。
だが、今日はいつもとは違う。
手洗いを済ませてすぐに宿題を終わらせる。
あの怪物に怯えることなく、ゆっくりと過ごせる貴重な時間を過ごすために......
◇
スマホゲームをやりながら、あの怖ろしい怪物を倒す方法を考えてみる。
今までは怖ろしくて手も足も出なかったけれど、これからは違う。
今まで何も出来なかった分、一矢報いてやる。
考えれば考えるほどどうして良いのか分からなくなる。
あの怪物と戦っても勝てる方法が思いつかない。
現段階で考えられる手段をいくつかあげてみたが、有効打になりえるものはなさそうだった。
「お兄ちゃん、ゲーム一緒にやっていい?」
「いいぞ。今日は俺に勝てるつもりなのか?」
部屋でスマホゲームをしていると、妹の雫が話しかけてきた。
ここの所、連戦連勝である俺に戦いを挑むとは良い度胸だ。
今日も俺の勝ちは揺るがないだろう。
対戦するゲームは、最近流行っているオンライン対戦型のスマホゲームだ。
1vs1で対戦することが出来、課金要素はアバターなどの装飾品のみでキャラクターの強さには影響されない。
つまり、純粋なプレイ技術のみで相手と対戦を楽しむことが出来るのだ。
「お兄ちゃん少しは手加減してよ~」
コンボを決めて完勝をすると、妹がそう言った。
「すまんな雫、ゲームでも俺は手を抜かん!」
「けち~、そんなんだからモテないんだよ~」
「ぐっ。」
雫はゲームで勝てないからと精神的ダメージを与えてきた。
その後もゲームをポチポチと続けたが、最後まで妹が勝つことは無かった。
ゲームのついでだからと思い、妹にあの怪物のことを話してみた。
助言でも貰えれば、解決策が見るかるかもしれない。
「はあ?お兄ちゃんって馬鹿なの?」
経緯を伝えると、雫は呆れている様子だっ
た。
やれやれと言って雫はため息をつく。
「そう言うなって。俺は本気で悩んでるんだぞ」
「それなら学校に行かなければいいんじゃない?」
お母さんが許すわけもないけどね、小さく続けて妹が話す。
その瞬間、悩んでいた問題がちっぽけに思えた。
雫の何気ない一言のおかげで、絶望の中に小さな希望を見つけることが出来た気がする。
「その手があったか。ナイスだ雫!」
「はぁ。こりゃ重症だわ」
やってられん、と言い残して妹が部屋から出ていく。
俺は勘違いをしていたみたいだ。
あの震えるほど怖ろしく、どうやっても勝ち筋の見えない怪物に立ち向かおうとしていたこと自体が間違いだった。
勝てないなら逃げればいいじゃないか。
◇
「ダメです」
これからは学校には行かないと伝えると、母が短くそう言った。
母の顔を見ると、呆れている様子だった。
「そ......そんな」
膝の力が無くなり、土下座をするような形で床へと倒れ込む。
やっと見えた一筋の光が消え去ったように感じた。
「あんたこれから受験があるって言うのに、何あほなことを言ってるのよ。ダメなものはダメよ。そんなあほなことを言ってる暇があったら、成績でも上げてなさい」
母はそれだけ言うとキッチンの方へと行った。
これほど俺が悩んでいると言うのに、夕飯の支度の方が重要らしい。
悩みに悩んだ末に出た答えを否定され、足取りが重い中部屋へと戻る。
振り出しに戻り何をして良いのか分からなくてなった。
その後も解決策を考えるも、見つかるわけもなく食事と風呂を済ませてベットへと入る。
◇
太陽が昇り、部屋に日差しが入り込む。
ベットから出て学校に行く支度をしようとすると、パジャマが濡れていることに気付く。
どうやら、寝ている間に大量の汗をかいていたみたいだ。
それも仕方ないだろう。
昨日の夜から朝にかけてが、一番あの怪物の存在を感じる瞬間なのだから。
何もしても勝てず、逃げることさえも許されないあの怪物。
バタバタと物音が聞こえてくる。
どうやら雫が朝練に遅れないように急いで準備をしているみたいだ。
その音は、階段を走るように降りて来て玄関へと向かっている。
「お兄ちゃん先に行ってるよ~。行ってきまーす」
雫は、大きく元気な声でそう言って外へ出て行った。
まるで雫は、あの怪物を認識していないかのようだった。
「行ってきます」
それだけ言うと重い玄関の扉を閉めて外へと出る。
この瞬間、俺は敗北を悟った。
この先、何があろうとあの怪物に勝つことはないのだと。
だから俺は、今日も学校に行く。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった
神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》
「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。
全3話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる