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第8章 桜吹雪の下で
9話 尊く愛おしいもの**
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「、!?」
さっきとは反対の方向にぐるりと視界が回転し、晴弥と向かい合うように、胡座をかいた晴弥のひざを跨いで座らされている。
「それは、また今度だ」
「……!」
まるで幼い子どもが親にするような体勢に少し気恥ずかしさもあるが、それ以上に、初めて見るような晴弥の顔に鼓動が加速した。
——そ、っか……もう、これからはずっと、いっしょだから。
無言で蘇芳を見つめる熱を帯びた金の目は、獲物を捕らえた獣のようでもあり、それでいて大切なものを慈しむような情感にあふれてもいる。第二性としての本能以上の、晴弥自身の意思がそこにあるように感じて、たまらなくなって蘇芳は熱い吐息を漏らした。
「……、ん、」
晴弥の緩んではだけた着物の間から手を差し込み、もう一度熱い肌に触れる。
髪を梳くように差し込まれた晴弥の大きな手が心地よくて目を瞑ると、そっと唇を啄まれた。
宥めるような口付けに、限界まで発情してくらくらするのに、ぎりぎりまでそれに耐えて互いを余すところなく感じたくなる。本能に抗ってでも、互いを慈しみ心までを重ねたいと思うのは、自分たちがあやかしであると同時に人でもあるからなのかもしれないと蘇芳は意識の隅で思う。自分たちにしかできない愛し方で、混ざり合いたい。
蘇芳と晴弥は、静かな炎のように睦み合った。
「ふ、ぅんッ……、ぁ、あ……」
互いにもう袖を通しているだけになっていた布を肩から落とさせ、帯も解き、全てを取り去った素肌を隙間なく合わせて抱き合う。腹には天を仰いで濡れた劣情が擦れ合い、腰から下が溶けてなくなってしまいそうな甘いさざめきが広がった。
隔てるものがなくなり、晴弥の匂いが一層濃くなって、もう何も考えられない。
「ぁ……ッ」
腰を抱えられ、少し持ち上げられるようにして、ひたりと触れた熱さと硬さに息を呑む。
双丘の間をぬるぬると擦られるもどかしさに腰が揺れてしまう。
欲しい。欲しい。それだけで頭がいっぱいになる。
「晴弥、ッ……ん、それ、ほし、……ッあ、あああ!」
終いまで言わないうちに熱い塊に貫かれ、蘇芳がたまらず身体をしならせて声を上げた。
長大な晴弥のものを飲み込み限界まで広がった肉壁が、媚びるように吸い付き、うねる。
身体が勝手に跳ねて、蘇芳の屹立の先端からどろりと濁った体液が押し出されるように溢れた。
「く、ッ」
低く漏らされた晴弥の声が艶っぽくて、中を一層締め付けてしまう。
「食いちぎる気かお前……ッ」
顔を顰めて晴弥が蘇芳の腰を掴んだ手に力を込める。
「だってッ……あ、また、やだッ、なんかくるぅ……ッ!」
腰を掴まれたまま奥を捏ねられるとひとたまりもなく、なすすべもなく蘇芳はまた追い上げられた。
「はッ……は、ぁ……ッ」
見開いた目からぼろぼろと涙をこぼし、ただ与えられる快楽に翻弄される。
もう、そこに恐怖も不安もないのが、以前と違うことだった。
「ッあ、おく、いいッ」
嬉しくて、幸せで、怖いほど気持ちがいい。世界に祝福はされていなくても、互いがいるだけで、どれだけ力が湧いてくるだろう。
揺すり上げられ、もうずっと高みから降りてこられないような感覚に小刻みに身体を震わせながら、晴弥の首筋に蘇芳も吸い付いてみる。
——甘い……?
甘味のようなというより、新鮮な草木のような爽やかな甘みにずくんと身体が重く痺れた。途端に、晴弥の怒張を咥え込んでいる最奥が疼いて、きゅううう、と締め付ける。
「あ、だめッ、また……!」
ぞくぞくと背筋を駆け上がる絶頂の予感に、蘇芳は全身で晴弥にきつくしがみついた。
「はるや、ッおねが、噛んで……ッ」
必死にうなじを晒し、晴弥に懇願する。
「おまえ、」
「いいのッ、おれには、おれのつがいは晴弥しかいない、もう、何も怖くないから……ッ!」
「……ッ」
息を呑むような音が聞こえ、次いでうなじに圧倒的な熱を感じた。
「ぁあああ……ッ!」
予想したような痛みはまるでない。ただ晴弥の犬歯が食い込む熱さだけをありありと感じ、身体の隅々までそれが広がっていくのが鮮明に分かった。
——ああ、俺は、晴弥のつがいになったんだ……。
共に迎えた長い長い絶頂にびく、びくと身体が痙攣し、やがてくたりと晴弥にもたれるように力が抜けた。腹の奥に放たれた熱い飛沫にうっとりと満たされる。
たとえ子を成せないとしても、それは尊くて、愛おしかった。
さっきとは反対の方向にぐるりと視界が回転し、晴弥と向かい合うように、胡座をかいた晴弥のひざを跨いで座らされている。
「それは、また今度だ」
「……!」
まるで幼い子どもが親にするような体勢に少し気恥ずかしさもあるが、それ以上に、初めて見るような晴弥の顔に鼓動が加速した。
——そ、っか……もう、これからはずっと、いっしょだから。
無言で蘇芳を見つめる熱を帯びた金の目は、獲物を捕らえた獣のようでもあり、それでいて大切なものを慈しむような情感にあふれてもいる。第二性としての本能以上の、晴弥自身の意思がそこにあるように感じて、たまらなくなって蘇芳は熱い吐息を漏らした。
「……、ん、」
晴弥の緩んではだけた着物の間から手を差し込み、もう一度熱い肌に触れる。
髪を梳くように差し込まれた晴弥の大きな手が心地よくて目を瞑ると、そっと唇を啄まれた。
宥めるような口付けに、限界まで発情してくらくらするのに、ぎりぎりまでそれに耐えて互いを余すところなく感じたくなる。本能に抗ってでも、互いを慈しみ心までを重ねたいと思うのは、自分たちがあやかしであると同時に人でもあるからなのかもしれないと蘇芳は意識の隅で思う。自分たちにしかできない愛し方で、混ざり合いたい。
蘇芳と晴弥は、静かな炎のように睦み合った。
「ふ、ぅんッ……、ぁ、あ……」
互いにもう袖を通しているだけになっていた布を肩から落とさせ、帯も解き、全てを取り去った素肌を隙間なく合わせて抱き合う。腹には天を仰いで濡れた劣情が擦れ合い、腰から下が溶けてなくなってしまいそうな甘いさざめきが広がった。
隔てるものがなくなり、晴弥の匂いが一層濃くなって、もう何も考えられない。
「ぁ……ッ」
腰を抱えられ、少し持ち上げられるようにして、ひたりと触れた熱さと硬さに息を呑む。
双丘の間をぬるぬると擦られるもどかしさに腰が揺れてしまう。
欲しい。欲しい。それだけで頭がいっぱいになる。
「晴弥、ッ……ん、それ、ほし、……ッあ、あああ!」
終いまで言わないうちに熱い塊に貫かれ、蘇芳がたまらず身体をしならせて声を上げた。
長大な晴弥のものを飲み込み限界まで広がった肉壁が、媚びるように吸い付き、うねる。
身体が勝手に跳ねて、蘇芳の屹立の先端からどろりと濁った体液が押し出されるように溢れた。
「く、ッ」
低く漏らされた晴弥の声が艶っぽくて、中を一層締め付けてしまう。
「食いちぎる気かお前……ッ」
顔を顰めて晴弥が蘇芳の腰を掴んだ手に力を込める。
「だってッ……あ、また、やだッ、なんかくるぅ……ッ!」
腰を掴まれたまま奥を捏ねられるとひとたまりもなく、なすすべもなく蘇芳はまた追い上げられた。
「はッ……は、ぁ……ッ」
見開いた目からぼろぼろと涙をこぼし、ただ与えられる快楽に翻弄される。
もう、そこに恐怖も不安もないのが、以前と違うことだった。
「ッあ、おく、いいッ」
嬉しくて、幸せで、怖いほど気持ちがいい。世界に祝福はされていなくても、互いがいるだけで、どれだけ力が湧いてくるだろう。
揺すり上げられ、もうずっと高みから降りてこられないような感覚に小刻みに身体を震わせながら、晴弥の首筋に蘇芳も吸い付いてみる。
——甘い……?
甘味のようなというより、新鮮な草木のような爽やかな甘みにずくんと身体が重く痺れた。途端に、晴弥の怒張を咥え込んでいる最奥が疼いて、きゅううう、と締め付ける。
「あ、だめッ、また……!」
ぞくぞくと背筋を駆け上がる絶頂の予感に、蘇芳は全身で晴弥にきつくしがみついた。
「はるや、ッおねが、噛んで……ッ」
必死にうなじを晒し、晴弥に懇願する。
「おまえ、」
「いいのッ、おれには、おれのつがいは晴弥しかいない、もう、何も怖くないから……ッ!」
「……ッ」
息を呑むような音が聞こえ、次いでうなじに圧倒的な熱を感じた。
「ぁあああ……ッ!」
予想したような痛みはまるでない。ただ晴弥の犬歯が食い込む熱さだけをありありと感じ、身体の隅々までそれが広がっていくのが鮮明に分かった。
——ああ、俺は、晴弥のつがいになったんだ……。
共に迎えた長い長い絶頂にびく、びくと身体が痙攣し、やがてくたりと晴弥にもたれるように力が抜けた。腹の奥に放たれた熱い飛沫にうっとりと満たされる。
たとえ子を成せないとしても、それは尊くて、愛おしかった。
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