幼馴染みに恋愛感情がないのは本当みたいですが、だからと言って何をしても許されるとは思わないでくださいね。

ふまさ

文字の大きさ
21 / 22

21

しおりを挟む
 そんなリックに、ネイトは僅かな希望を抱いた。

「リック……そうだ、お前ならわかってくれると思っていたよ。突然除籍なんて、あんまりだ。それにぼくが愛しているのは、エリンだって──」

 リックは手を伸ばしてくるネイトには目もくれず、一気に捲し立てた。

「今すぐにお返事をとは言いません。ですが、どうか僕を、エリン様の婚約者候補に加えてはいただけませんか?!」

 しん。
 応接室が、水を打ったように静まり返った。わなわなとこぶしを震えさせたのは、侯爵だった。

「お、お前まで馬鹿なことを言うな! こんなことをしでかした男の弟と婚約など、エリン様が望むと思うのか!?」
  
 リックはこぶしを握り、うつ向いた。

「わかっています。ですが、僕は前からエリン様を慕っていました……だから、少しの可能性にすがりたくなってしまったのです──申し訳ありませんでした。今の言葉は、どうかお忘れください」

 リックがゆっくりと腰を折る。侯爵も、続けて腰を深く折った。公爵と公爵夫人は、間にいるエリンにそっと顔を向けた。すると。

「……エリン、どうした。顔が少し赤いようだが」

 公爵の言葉に、リックと侯爵が勢いよく顔をあげた。確かに、先ほどまでの凛とした顔が緩み、僅かに頬が赤くなっているように見えた。

「──気のせいです」

 言いながら、リックと目線を合わせようとしないエリン。これほどまで真っ直ぐに想いをぶつけられたことなどなかったエリンにとって、これは完全なる不意打ちだった。まして、実の兄ではなく、ずっとエリンの味方をしてくれていたリックには、良い印象しかない。

 エリンの態度に、ネイトは目を見張った。胸のあたりが、妙にざわつくのを感じた。

「……なに、その顔。ぼくにアデラとのことを散々責めておいて、きみだって同じじゃないか。おかしいと思ってたんだよ。リックとやけに楽しそうにおしゃべりしていてさ」

 ネイトの顔が、醜く歪む。侯爵は、はあと息をつき、ネイトの前に立ちはだかった。

「お前、まだいたのか。さっさと出ていけ。謝罪をしたかどうか、明日、確かめるからな。もししていなければ、問答無用で警察ヤードにつき出すぞ」

「……父上はぼくが、野垂れ死にしてもよいと言うのですか」

「ああ、構わんさ。馬鹿なお前のために、一族を路頭に迷わせるわけにはいかんからな──おい。こいつを早く、屋敷から摘まみ出せ」
 
 命じられた男の使用人が二人、左右からネイトの両腕を掴んだ。ネイトが「待ってください!」と叫ぶ。

「お金は? まさか無一文で放り出すつもりじゃありませんよね?」

「そのまさかだが」

「……は? 馬車は? まさか徒歩で移動しろと!?」

「お前は平民なのだから、当然だろう。もう口を開くな。イライラして仕方ない」

 抵抗するも、ズルズルと屋敷の外まで連れ出され、ついには門の外に放り出されたネイトは、しばらくそのまま、茫然と立ち尽くしていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

私の夫は妹の元婚約者

彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

愛する人の手を取るために

碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」  わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

処理中です...