可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ

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「──あれ? きみ、誰?」

 この国の第二王子であるヒューゴーは、目の前に立つリネットを見ながら、不思議そうに首を傾げた。慌てたのは、リネットの横に立つリネットの父親──ベッカー公爵だった。

「へ? あの、我が娘のリネットですが……。殿下は私の娘に一目惚れし、婚約を申し込んでくれたのですよね?」

「違うよ。姉じゃなくて、妹の方!」

「……いや、あの。これが妹の方のリネットなのですが」

「え?」

「名前も確認しましたところ、リネットで間違いないとのことだったはずでは……?」

 今度慌てたのは、ヒューゴーの方だった。

「だ、だって……城の舞踏会で見かけて、早く婚約しないと誰かに取られると思って……名前とかちゃんと知らなくて!」

 ヒューゴーは、びしっとリネットを指差した。

「この大きい方が妹だなんて、誰も思わないだろ?!」

 天使のような、愛らしい顔立ちの第二王子が叫ぶ。失礼過ぎる物言いに、リネットはピシッと眉間に青筋を立てた。密かに舞い上がっていた想いが、音を立てて崩れていくのがわかった。だいたい、同じ年のリネットを大きいと喚いているヒューゴーは、十七才の男性にしてはどう考えても小柄だった。

「……ぷ。あはは!!」

 ベッカー公爵家の応接室の扉が開き、笑い声と共に入ってきたのは、リネットの一つ違いの姉である、アデラだった。

「おっかしいと思ったのよねえ。私じゃくて、あんたに婚約話がくるなんて。でもまさか、そんな理由だったなんて」

 アデラが、なおも腹を抱えて笑う。すると、ヒューゴーが目を輝かせた。

「おお、あなたこそ! 僕が求めたお方です!」

 アデラは笑いを引っ込め、可愛らしく小さく微笑んだ。

「光栄ですわ、ヒューゴー殿下。私も前から、あなたをお慕い申し上げておりました」

 二人が見つめ合う。アデラは一つ年上だが、小柄のヒューゴーよりも、一回り小さかった。存在をまるっと無視され、むろん怒りはあったものの、婚約する前で良かったとリネットは思うことにした。

「どうやらわたしに用はないらしいので、部屋に戻ります」

 父親に告げ、さっさと応接室を後にしようとしたリネットだったが──。

「……待ちなさい、リネット」

 何故か父親に、止められてしまった。

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