可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ

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「──わたしは、か弱い女性にあまり興味を持てなくてね」

「……え?」

「それに、わたしはいずれ父から王位を継ぐ身だ。そんなわたしの妻になる女性には、いくら教養があっても足りないと思っている」

 そう言って、キースはリネットと視線を交差させた。

「だからと言って、誰でもいいわけではない」

 真っ直ぐな瞳に、リネットの鼓動が一つ、跳ねた。

「きみのことが、もっと知りたい。駄目か?」

 手を差し出されたかと思うと、広間に曲が流れはじめた。呆然としたままキースの手にそっと右手を添える。そのまま、流れるように二人はダンスをはじめた。

「一つ確認しておきたいのだけれど、きみはヒューゴーとの婚約が解消されてもいいと思っているんだよね?」

「は、はい。構いません」

「ヒューゴーに未練はない?」

 リネットがきっぱりはっきり「それは、まったく」と答えると、キースは「わかった」と、口元を緩めた。


 次の日。
 日が傾きかけたころ。授業が終わり、図書室に行こうとしていたリネットは、ふと足を止めた。廊下の窓から学園の入り口あたりを見下ろす生徒たちの会話が耳に入ってきたためだ。

「あれ、王族の馬車じゃない?」

「確かに。見たことあるね。でも、何で学園に?」

「誰かに会いにきたのかなあ」

 リネットは図書室に向けていた足を反対に向け、階段をおりた。まさか。いや、違うかもしれないが、もしそうならお待たせするわけには。心で葛藤し、王族の馬車があるところへと足早に向かう。

 学内から外に出て、馬車との距離が近付いてきた。胸に期待を膨らませる。リネットの存在に気付いた馭者が、馬車の扉を開けた。

(! わたしを待っていてくれたんだ。なら、やっぱり)

 だが、馬車の中にいたのは期待していた人物ではなかった。

 ──そうか。そうよね。キース殿下はわたしがあまりに不憫だったから、同情してくれただけなのよね。

 期待して、馬鹿みたいだわ。リネットは急に、現実に引き戻されたような気分になった。顔をあげ、薄く笑う。

「……ヒューゴー殿下。お姉様なら、まだ学内にいますよ。呼んできましょうか?」

「いや。用があるのは、きみだから。ベッカー公爵家の馬車は先に帰ってもらったから、この馬車で、きみの屋敷まで送るよ」

「用、ですか。何でしょう」

 ヒューゴーに「いいから、乗って」と急かされ、リネットは仕方なく馬車に乗り込んだ。

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