可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ

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「お嬢様、おかえりなさいませ。キース殿下からお手紙が届いておりますよ」

 屋敷に入るなり、リネット付きの侍女が嬉しそうに駆け寄ってきた。物心つく前から傍にいてくれる侍女は、リネットの母親のような存在であり、誰よりリネットを大切に想ってくれている。だからリネットも、侍女には全てを話している。あの日交わした、キースとの会話も話した。はっきりとした気持ちは伝えていないものの、リネットがキースに惹かれつつあることに、侍女は気付いていた。

 リネットの表情が一気に明るくなる。

「キース殿下から? 本当?」

「本当ですとも。ほら」

 侍女が、封のされた手紙を差し出した。受け取り、リネットは急いで封を開け、中に入っていた手紙を一読した。そして、ゆっくり口を開いた。

「……今度の休日、もしあいているのなら、デートをしようって書いてある……」

 侍女は「! まあ、まあ!」と、両手をぱんとならした。

「ほら、やっぱり私の言っていた通りでしょ? リネット様の良さは、そんじゃそこらの男にわかるはずないと」

「……ヒューゴー殿下は、王子様だけど」

「あんな見る目のない、甘ったれな王子様は、そんじゃそこらの男と何も変わりありませんよ──そんなことより、お洋服はどうしましょう。今から街に行きますか?」

 ウキウキしはじめる侍女。けれどリネットは「……でも。当日になってキャンセルされるかもしれないし」とネガティブ思考に入ってしまった。何せ相手は、誰もが憧れる第一王子のキース。今さらになって、どうしてわたしがという想いが強くなってきてしまった。つい先ほど、ヒューゴーに散々なことを言われたばかりだったせいもあった。

「──リネット様。キース殿下は、本当にそんなことをする方だと思いますか?」

 侍女はリネットの両手をそっと握り、優しい笑みを浮かべた。たった一度、会話をしただけだけれど。少なくともキースは、ヒューゴーのことを謝罪してくれた。アデラではなく、リネットとの会話を優先してくれた。それは、紛れもない事実。

 だから。

「……そうね。ありがとう。今は素直に、喜んでおくとするわ」

 リネットはわずかに頬を赤く染め、小さく笑った。

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