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キースとデートすることは、父親とアデラには当日まで黙っておこう。リネットはそう決め、夕食時、今度の休日は学友と出かけることにしたとだけ伝えた。父親は、あからさまなため息をついた。
「……お前。せっかくヒューゴー殿下が学園まで迎えに来てくださったのに、デートの約束も取り付けられなかったのか」
「それは仕方ないですよ。リネットは、殿方とデートしたことすらないのですから」
庇うようで、いつものようにリネットを馬鹿にすることを忘れないアデラ。慣れたもので、リネットは綺麗にスルーする。カチャ。ナイフとフォークを皿に置くと、リネットは静かに立ち上がった。
「では。わたしは部屋に戻ります」
「もう食べ終わったのか」
「やだわ。がっついて、はしたない」
父親とアデラの言葉に、あなたたちと少しでも長く一緒にいたくないからですよと心で呟きながら、リネットは食堂を後にした。
──翌朝。
食堂に入るなり、やけにご機嫌なアデラがリネットに近付いてきた。その背後には、席に座ったまま頭を抱える父親の姿。何事かと訊ねる前に、アデラが口火を切った。
「今朝、ヒューゴー殿下から私宛のお手紙が届いたの。それがね。何と。デートのお誘いだったの!」
ふふふ。
アデラが背中に隠していた手紙をリネットに押し付けてきた。読め、ということなのだろう。仕方なく一読すると、そこには確かに、今度の休日にデートしようと書いてあった。リネットは密かに、ほっとしていた。
(良かった……これならもう、ヒューゴー殿下の相手をしなくてすみそう)
「……やはり、お前には無理だったか。最後の機会かもしれなかったのに」
父親の嘆きは無視し、リネットはアデラに向き直った。
「良かったですね、お姉様。ぜひ、楽しんできてください」
「あら。もっと悔しがってくれるかと思ったのに、残念。まあ、あなたは最初から諦めていたものね。仕方ないか──ねえ、お父様。私、デートのための新しいお洋服が欲しいの」
愉快で仕方ない。そういった風に、アデラが笑う。勝ち誇ったように。
それから休日になるまで、アデラはこれ見よがしに新しい洋服を父親にねだったり、ヒューゴー殿下は何処に連れていってくださるのかしらと、わざわざリネットの前で語ったりした。
──そうして迎えた、休日の朝。
「……お前。せっかくヒューゴー殿下が学園まで迎えに来てくださったのに、デートの約束も取り付けられなかったのか」
「それは仕方ないですよ。リネットは、殿方とデートしたことすらないのですから」
庇うようで、いつものようにリネットを馬鹿にすることを忘れないアデラ。慣れたもので、リネットは綺麗にスルーする。カチャ。ナイフとフォークを皿に置くと、リネットは静かに立ち上がった。
「では。わたしは部屋に戻ります」
「もう食べ終わったのか」
「やだわ。がっついて、はしたない」
父親とアデラの言葉に、あなたたちと少しでも長く一緒にいたくないからですよと心で呟きながら、リネットは食堂を後にした。
──翌朝。
食堂に入るなり、やけにご機嫌なアデラがリネットに近付いてきた。その背後には、席に座ったまま頭を抱える父親の姿。何事かと訊ねる前に、アデラが口火を切った。
「今朝、ヒューゴー殿下から私宛のお手紙が届いたの。それがね。何と。デートのお誘いだったの!」
ふふふ。
アデラが背中に隠していた手紙をリネットに押し付けてきた。読め、ということなのだろう。仕方なく一読すると、そこには確かに、今度の休日にデートしようと書いてあった。リネットは密かに、ほっとしていた。
(良かった……これならもう、ヒューゴー殿下の相手をしなくてすみそう)
「……やはり、お前には無理だったか。最後の機会かもしれなかったのに」
父親の嘆きは無視し、リネットはアデラに向き直った。
「良かったですね、お姉様。ぜひ、楽しんできてください」
「あら。もっと悔しがってくれるかと思ったのに、残念。まあ、あなたは最初から諦めていたものね。仕方ないか──ねえ、お父様。私、デートのための新しいお洋服が欲しいの」
愉快で仕方ない。そういった風に、アデラが笑う。勝ち誇ったように。
それから休日になるまで、アデラはこれ見よがしに新しい洋服を父親にねだったり、ヒューゴー殿下は何処に連れていってくださるのかしらと、わざわざリネットの前で語ったりした。
──そうして迎えた、休日の朝。
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