可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ

文字の大きさ
14 / 20

14

「……言わずとも、わかるでしょう。アデラと違って、リネットは華やかさもなければ見目も良くありません。それに加え、並みの男よりも強く、教養があり過ぎるのです。こんな娘を、誰が好いてくれることでしょう」

 顔をうつ向かせ、ベッカー公爵が呟く。リネット付きの侍女が、静かに怒りを募らせていく。悪気がないのが、余計に腹立たしい。この男の馬鹿で配慮のない言葉に、リネットがどれだけ心を痛めてきたことか。

「……呆れて言葉もないな。貴殿はそれを、愛情だと思っているのか」

 リネット付きの侍女と同じように、双眸に怒りを宿したキースが吐露する。

「貴殿の言葉はただ、リネット嬢を傷付けているだけではないか。そんなこともわからないのか」

「な……っ」

「もういい。貴殿とアデラ嬢のことはよくわかった。行こう、リネット嬢」

 手を差し出されたリネットが「は、はい」と手を添えた。強く握られ、ゆっくりと引っ張られる。先を歩くキースを、滲む視界に捉えた。

 ──ああ、駄目だ。こんなの。もうわたしは、キース殿下のこと。

 高鳴る胸に、左手を添える。その早い鼓動は、なかなかおさまってはくれなかった。


 それから二人は、街中を歩いた。むろん、護衛付きではあるが。楽しかった。教養がある二人だからこそ出来る会話は時間を忘れて弾み、気付けばもう、太陽は真上にきていた。

「そろそろ昼食にしようか。何か食べたいものはあるかい?」

 キースに訊ねられたリネットは「食べたいもの、と言いますか……キース殿下とゆっくりお話出来るところがいいです」と、答えた。キースとこうして二人で出かけられるのは、これが最後かもしれない。だからこそ、もっと話したい。誰にも邪魔されずに。

(……キース殿下は目立たないようにずっとフードを被ってくださっているとはいえ、やっぱり目立つのよね)

 まとうオーラのせいか。護衛がいるにもかかわらず、キースはもう何度も、女性に声をかけられていた。

「確かにそうだな。じゃあ、わたしがよく行く店に行こうか。あそこなら個室もあるし」

 リネットはぎょっとした。行きつけの店を、まだたった二度しか会ったことのない女に教えていいのだろうか、と。

「い、いいのですか?」

「もちろん。帰国してからまだ一度も行ってなかったから、ちょうど行きたいと思っていたところだったんだよ」

 微笑むキースに、リネットは肩の力を抜いた。今日はとことん楽しむと決めていたから。リネットは「それは、楽しみです」と頬を緩めた。

あなたにおすすめの小説

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。 ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。 そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。

兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。 侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。 家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。 友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。 「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」 挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。 ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。 「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」 兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。 ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。 王都で聖女が起こした騒動も知らずに……

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。 家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。 国王の政務の怠慢。 母と妹の浪費。 兄の女癖の悪さによる乱行。 王家の汚点の全てを押し付けられてきた。 そんな彼女はついに望むのだった。 「どうか死なせて」 応える者は確かにあった。 「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」 幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。 公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。 そして、3日後。 彼女は処刑された。

私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?

百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。 だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……