死にたがり令嬢が笑う日まで。

ふまさ

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 二人目も、三人目も、四人目も。怒るか哀しむかのどちらかで、その場を去っていった。フラトン子爵が、嬉しそうに口角を上げる。

「チャンスだ。いいか。どのような惨い条件でも、はいと答えろ。断ることは許さん」

 小さく吐き捨てると、ニアの背を押した。ニアが、バルコニーで待つアラスターの元に足を進める。

「──きみで最後か」

「ニア・フラトンと申します」

 教わったばかりの、慣れないカーテシー。これまでの令嬢とは違い、さぞやぎこちなかったろうに、アラスターは、それについてはなにも言及してこなかった。

「わたしはこれから、最低なことを言う。でも、もう決めたことだ。決意は変わらない」

「はい」

「……わたしの愛する人の髪は栗色で、緑の瞳をしている。この意味が、わかるか?」

「いいえ」

「わたしは、愛する人としか、子をなすつもりはない。だが、平民の彼女の子どもでは、わたしの跡は継げない。だから……彼女と同じ特徴を持つきみと結婚して、世間的には、わたしときみの子どもとして、育てようと考えている」

 ニアは珍しく、僅かにだが目を丸くし、それから、なるほど、と呟いた。

「それはいいお考えですね」

 嫌味でもなんでもなく、ニアは素直に感心していた。やはり貴族は頭がいいなと、心で呟く。そんなニアに、アラスターの方がより大きく、目を見開いていた。

「……怒らないのか。哀しくはないのか」

「何故ですか? 愛する人としか、子作りはしたくない。それぐらい、わたしにだって理解できますよ?」

「これはわたしの、完全なる我がままだ」

「そうですか?」

 いつも理不尽にさらされてるニアにとって、納得できる出来事は、ほとんどなかった。だからこそ、アラスターの質問が不思議でならなかった。

「……そうまでして、伯爵夫人の座がほしいか」

 聞き取れない音量でぼやくと、アラスターは、ならばと口火を切った。

「本来、伯爵夫人としてしなければならない仕事のうち、伯爵となったわたしの仕事の補佐、および、召使いたちに指示を出し、屋敷を取り仕切るのは、きみではなく、わたしの愛する人になる。実際、わたしは屋敷を与えられ、両親とは別に暮らしているが、屋敷を取り仕切っているのは、彼女だ」

 淡々と、ニアが「はい」と答える。いささかの動揺も見せないニアに戸惑いながらも、アラスターは続ける。

「……きみには、表舞台。客人の対応や、社交界に出席するときだけ、夫人の役目を果たしてほしいと考えている」

 ニアは、はて、と首を傾げた。

「それだけでいいのですか? あ、あとは掃除や洗濯をすればいいのでしょうか」

 アラスターは、ギョッとしたように声を上げた。


「……確かにわたしは最低な男だが、そこまでしろとは言ってない!」

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