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「……嘘よ」
掠れた声で、カイラが繰り返す。
「嘘よ。あたしのアラスターが、そんなこと言うわけない。アラスターは、あたしだけを愛しているんだから」
アラスターはそんなカイラを一瞥したあと、他の三人に向き直った。
「金貸しと引き合わせるまでは、この屋敷にいてもらう。見張りをつけておくから、逃げても無駄だ。そのあいだに荷物はまとめておけ。なに。ほんの二、三日の辛抱だ」
ブリアナが「……カイラも、ですか」と、低い声で訊ねると、アラスターは、当然だろうと言い捨て、屋敷を後にした。
「──ただいま戻りました」
日暮れ。ここを出てからもう何時間と経っているのに、ニアと両親は、応接室にいたままだった。
変わっていたのは、オールディス伯爵夫人が、ニアの隣に席を移していたことだろうか。
「お、お帰りなさい。どうだった? お二人とは、お話できた?」
緊張した面持ちで、オールディス伯爵夫人が声をかけてきた。オールディス伯爵も、真剣な顔でこちらを見ている。ニアは無表情だったが、それでも、アラスターをじっと見詰めてきていた。
「兄の婚約者とは、無事に。ですが二人目の婚約者候補の方とは会えず、代わりに、子爵が対応してくれました。娘を傷付けたぶんの慰謝料をわたしとカイラたちに請求すると言われ、わたしは、それを了承しました」
「それでは、やはり……」
オールディス伯爵の重い声色に、アラスターは逃げることなく、ええ、と肯定した。
「ニア嬢と同じように、カイラたちは、彼女を傷付けていた。なのにわたしは、カイラの言うことだけを信じた。とても愚かな行為でした。どのような金額だろうと、甘んじて受け入れるつもりです」
「……もしや、カイラという者たちのぶんも、お前が」
「まさか。それは、自分たちで支払わせます。そのことについてお願いがあるのですが、わたしたちに、金貸しを紹介してもらえたらと」
オールディス伯爵が「わたし、たち?」と、僅かに目を見張った。
「お前も借金をするつもりか?」
「はい」
「馬鹿な。それぐらいの蓄えは、うちにはある」
「これは、わたしが招いた結果です。ですから慰謝料は、わたしが払います。借金は働きながら、少しずつ、返していきます」
「……それは、領主になってからということか?」
「いいえ。今回のことで、よくわかりました。わたしに、領主はとてもじゃありませんが、務まりません。その器もない」
「ど、どういうこと?」
オールディス伯爵夫人が震える声で問う。アラスターは薄く、小さく笑うと、
「わたしを、オールディス伯爵家から除籍してください」
と、深く頭を下げた。
掠れた声で、カイラが繰り返す。
「嘘よ。あたしのアラスターが、そんなこと言うわけない。アラスターは、あたしだけを愛しているんだから」
アラスターはそんなカイラを一瞥したあと、他の三人に向き直った。
「金貸しと引き合わせるまでは、この屋敷にいてもらう。見張りをつけておくから、逃げても無駄だ。そのあいだに荷物はまとめておけ。なに。ほんの二、三日の辛抱だ」
ブリアナが「……カイラも、ですか」と、低い声で訊ねると、アラスターは、当然だろうと言い捨て、屋敷を後にした。
「──ただいま戻りました」
日暮れ。ここを出てからもう何時間と経っているのに、ニアと両親は、応接室にいたままだった。
変わっていたのは、オールディス伯爵夫人が、ニアの隣に席を移していたことだろうか。
「お、お帰りなさい。どうだった? お二人とは、お話できた?」
緊張した面持ちで、オールディス伯爵夫人が声をかけてきた。オールディス伯爵も、真剣な顔でこちらを見ている。ニアは無表情だったが、それでも、アラスターをじっと見詰めてきていた。
「兄の婚約者とは、無事に。ですが二人目の婚約者候補の方とは会えず、代わりに、子爵が対応してくれました。娘を傷付けたぶんの慰謝料をわたしとカイラたちに請求すると言われ、わたしは、それを了承しました」
「それでは、やはり……」
オールディス伯爵の重い声色に、アラスターは逃げることなく、ええ、と肯定した。
「ニア嬢と同じように、カイラたちは、彼女を傷付けていた。なのにわたしは、カイラの言うことだけを信じた。とても愚かな行為でした。どのような金額だろうと、甘んじて受け入れるつもりです」
「……もしや、カイラという者たちのぶんも、お前が」
「まさか。それは、自分たちで支払わせます。そのことについてお願いがあるのですが、わたしたちに、金貸しを紹介してもらえたらと」
オールディス伯爵が「わたし、たち?」と、僅かに目を見張った。
「お前も借金をするつもりか?」
「はい」
「馬鹿な。それぐらいの蓄えは、うちにはある」
「これは、わたしが招いた結果です。ですから慰謝料は、わたしが払います。借金は働きながら、少しずつ、返していきます」
「……それは、領主になってからということか?」
「いいえ。今回のことで、よくわかりました。わたしに、領主はとてもじゃありませんが、務まりません。その器もない」
「ど、どういうこと?」
オールディス伯爵夫人が震える声で問う。アラスターは薄く、小さく笑うと、
「わたしを、オールディス伯爵家から除籍してください」
と、深く頭を下げた。
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