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「……そんな人を傷付け、あっさり捨てる会長に、責任がどうのと言われたくありません」

 ぐすっ。
 鼻を啜る若い女性従業員に、オーブリーはもう、なにも言い返すことはできなかった。

「……わかった。もう、止めない」

 オーブリーの台詞に、若い女性従業員は「お世話になりました」と頭を下げ、去って行った。

 水を打ったように静まり返る仕事場。オーブリーはそれを打ち破るように、こぶしを強く握ってから、従業員たちに告げた。

「しばらくの間、ナタリアが担当していた仕事を、みんなで分担してやってもらいたい。もちろん、リリアンには早急に、ナタリアが行っていた仕事を覚えてもらうから、安心して。リリアンはナタリアと違って浮世離れした貴族令嬢じゃないから、ナタリアよりもずっと、仕事を覚えるのは早いと思う」

 しん。返事はない。オーブリーは内心慌てていたが、悟られまいとつとめて明るい口調で続けた。

「見てもらったとおり、リリアンは絶世の美女だ。これまでよりきっと、リリアン目当てに客も増えて、忙しくなるよ。頑張ろう」

「……本当に、そう思いますか?」

 低い声色で発言したのは、オーブリーの父親が会長をしていたころ、右腕と評されていたほどの男だ。いまでも彼の知識や経験は、商会になくてはならないものとなっている。

「思ってるよ。誰だって、美人がいいに決まってる。男ならなおさら」

「顔だけで売り上げが伸びると?」

「か、可能性はあるだろ?!」

 そうですか。
 男性従業員はそのまま、口をつぐんだ。

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