わたしはただの道具だったということですね。

ふまさ

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 自分たちの席の前で立ち止まった人影がオーブリーだとわかるやいなや、元従業員の男は、見る間に顔を歪めていった。

「……なんの用ですか。まだオレをストーカー扱いするつもりなら、出るとこ出ますよ」

「い、いや。違うよ。ぼくはただ、話を聞きたくて……っ」

 元従業員の男が「いまさら」と吐き捨てると、オーブリーは、ごめん、と勢いよく頭を下げた。元従業員の男の友人らしき人物が、誰、と呟く。

「ビアンコ商会の会長」

 元従業員の男の言葉に、友人は「……へえ」と、見定めするようにジロジロとオーブリーを見た。

「あんたが、恵まれた人生を自ら放棄した男でしたか」

 馬鹿にされたような口調にカチンときたが、オーブリーはそれを収め、元従業員の男に視線を向けた。

「リリアンの本性って、なんなんだ。頼む。教えてくれ」

「やですよ。どうせ、リリアンはそんなことしないーとかほざくんでしょ? 勝手にあの女とイチャついてりゃいいでしょうよ」

「……リリアンは、ナタリアの代わりになるどころか、体調が悪いと言い訳して、仕事をさぼってばかり。あげく、家事もほとんどしなくって、外で遊び歩くようになってしまった。これが、リリアンの本性なのか? 前の夫も、これが原因でリリアンと別れ……いや、それは違うか。女好きでギャンブル好き。リリアンを勝手に保証人にして、借金を押し付けるような男だから、人のこと言えないし……もしかしてその反動から、リリアンはああなってしまったのかな」

 ぶつぶつ勝手に分析をはじめたオーブリに、男二人はキョトンとしたあと、互いに顔を見合わせ、声を上げて笑い出した。

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