わたしはただの道具だったということですね。

ふまさ

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「ナタリアお嬢様。そろそろお時間が」

 お目付役の男に囁かれたナタリアが、いけない、と口元に手を当てた。

「オーブリー。わたし、これから彼と初デートなの。遅れるといけないから、もう帰って。今回は黙っていてあげるけど、今度わたしの目の前に現れたら、お父様に報告するから、そのつもりで」

 思考を停止したように「……デート?」と、小さく繰り返すだけのオーブリーに、ナタリアが、この際だから言っておくわ、と続けた。

「お父様は、あなたに──ビアンコ商会に、罰を与えようとしていた。でも、わたしが止めたの。残った従業員に、これ以上迷惑をかけたくなかったから」

「……? 罰なら、充分」

「屋敷を追い出されたとか、従業員が辞めたとかって話なら、罰でもなんでもないでしょ? 自業自得って言葉、知ってる?」

 冷たい言葉に、オーブリーが、酷い、と顔をくしゃっと歪めた。

「被害者ぶる前に、誰が元凶か、もう一度よく考えてみたら?」

「……ぼくは、なにもかも失ってしまった」

「聞いてる? そうだわ、最後に一つだけ聞いていいかしら。あなた、わたしがあなたの母親に無視されていたこと、知ってた?」

「……無視? きみに見下されている気がするから嫌いだって愚痴なら、よく聞いて──あ、いや」

 ナタリアが、そうなの、と薄く笑った。

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