悪夢から目覚めたわたしは、気付かないふりをやめることにしました。

ふまさ

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 愕然とするデイルに寄り添うように、グレースは優しく告げた。

「……お義姉様も、正式にペルソン伯爵家の養女になったみたいです。寂しいけれど、それが現実を受け入れられないお義姉様の唯一の逃げ道だったのなら、あたしはそれを受け入れようと思います。だからデイル様も、ね?」

「……グレース」

「ペルソン伯爵夫人もおっしゃっていたではありませんか。お父様に養子先を見つけてもらって、あたしと婚約しなさいと。あのままデイル様がペルソン伯爵家にいたら、あたしたちは結ばれなかった。ならきっと、こうなってよかったのです」

 気遣うような口調に、デイルの心が少しずつ浮上していく。

「……やっぱり優しいな、きみは」

「ふふ。惚れ直しました?」

「……ああ」

 二人のやり取りを微笑ましくみていたマケラ子爵夫人は、隣に座るマケラ子爵に視線を向けた。

「グレースの言うとおり、オリヴィアに思うところはありますが、結果的に、こうなってよかったのかもしれませんね。早く、デイルの養子先を見つけてあげなければ」

 マケラ子爵は頭を抱えていたが、やがて、そうかもな、と呟いた。

「……グレースと婚約してくれる貴族令息など他にいないだろうし、グレースをこんなに愛してくれているなら……」

「嫌だわ、ご冗談を。こんなに純粋無垢で可愛いグレースと婚約したい方なんて、きっとたくさんいるはずでしょう?」

 クスクス。クスクス。
 愉快そうに笑うマケラ子爵夫人に、マケラ子爵は諦めたように、そうだな、とだけ返した。

 それからデイルは、マケラ子爵の親戚の男爵の養子となり、グレースと正式に婚約した。


 
 夏期休暇も残り僅かとなったころ。ペルソン伯爵からデイル宛に、手紙が届いた。それを聞いたデイルは、期待に胸を膨らませた。

 頭は冷えたか。そろそろ戻ってこい。そんな内容かとドキドキしながら手紙を開封した。そこには、王都にあるペルソン伯爵家の別邸から、デイルとグレースの荷物を学園の寮にすべて運んだので、今後はそこから通学するようにという趣旨のことが書かれていた。

「ペルソン伯爵から、二人を今後も王立学園に通わせるのかという手紙が来たから、そのつもりですと返したんだが……これのための確認だったんだな」

 次はなんだと若干緊張していたマケラ子爵が、待ちきれずにデイルの斜め後ろから手紙を読むなり、そう言った。

「……そうですか」

 デイルは手紙を持った右手を、だらんと下げた。現実を突きつけられた気がして、寮ってどんなところかしらとワクワクするグレースの声など、まるで耳に入ってこなかった。

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