悪夢から目覚めたわたしは、気付かないふりをやめることにしました。

ふまさ

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「さて、降りようか」

 マケラ子爵が、護衛の男が開けた扉から、外に出た。振り返り、降りようとしないモリーとグレースに「早く降りなさい」と、強めの口調で告げる。

「だ、だって、お父様。ここは、なんです? あたしたちに見せたいものってなんなのですか?」

「ついてくればわかるよ」

 優しい笑みに、けれどモリーは、拒絶した。

「……私、傷が痛みますの。身体もまだうまく動かせませんし、こんな街外れのところではなく、早くお屋敷に戻りたいのですが」

 マケラ子爵は、少し沈黙したあと、仕方ないな、と呟いた。

「お前たちに、家具から調理器具までなにもかも揃えてやった部屋を見せてから告げようと思っていたんだが、まあ、いい。ここで話すとしよう」

 投げやりな口調。嫌な予感がして、モリーはマケラ子爵を真っ直ぐに見据えた。

「……どういう、意味ですか」

「モリー、きみとは別れる。言っておくが、それはつまり、離縁するということだ。きみはもう、私の妻ではなくなり、他人となる」

 モリーとグレースは、同時に目を瞠った。

「……冗談」

 モリーの呟きに、マケラ子爵は「ではないよ」と続けた。

「……私は同意しませんっ」

「それは正直、どうとでもなるんだが……そうだな。離縁に応じないというなら、用意してやって部屋も、家具もなにもかも、お前たちにはやらん。無一文で、屋敷を追い出してやるさ」

 モリーは「そのなことが許されると思っているの?!」と、声を荒げた。

「私のこの傷は誰のせいだと思っているの? あなたには、一生をかけて私に償う責任があるはずよ」

「これまで貴族の妻として、子として、なにも責任をなさないお前たちを、私がどれだけ庇ってきたと思う。どれだけ情けなく、恥をかかせられてきたかしれない。しかし、怪我をさせたことに罪悪感がないわけではないから、お前が入院しているあいだに、すべての用意をすませてやったんだ。感謝しろ」

 憤慨し過ぎて、声が出せないモリーから、マケラ子爵はグレースに視線を移した。

「グレース。ここの部屋の家賃は、三ヶ月分、すでに私が払った。そして、二人分の三ヶ月間の生活費をお前に渡そう。この意味、わかるか?」

 お金が入った袋をグレースに手渡したマケラ子爵が問うと、グレースは、弱々しく首を左右にふった。

「……わかりません」

「だろうな。お前の頭では、仕方ない。いいか、よく聞くんだ。私は、モリーと別れる。この先の面倒は、お前を含め、もう見てやれない。つまり三ヶ月のあいだに、お前は仕事を見つけて、自分でお金を稼がなければならないんだ」

 グレースの顔は、真っ青になっていたが、マケラ子爵は続けた。

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