ロリーの尻尾

アズ

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08 VSカーペンター②

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「許さないだと?」
「そうだ。必ずお前達のボスの尻尾を掴んで世間の前に引っ張りだしてやる」
 男は鼻で笑った。
「その時には大勢の犠牲が出るだろう」
「そうはならない」
「何故言い切れる?」
「お前と同じだ。お前達のボスは誰かによって守られ日の光に当たらずに済んでいる。だが、一度日の光に当たれば、守り続ける意味はなくなる。組織と関係を持ち弱味を握られている人間が組織のボスを知った時、守るより先に消すだろう。つまり、お前達のボスですら状況によっては裏社会の尻尾切りにあい、全ての裏は世間に公表されることなく真相は深い闇の中に沈んでそれは一生浮上することがなくなる」
「お前はそれでいいのか? 組織さえ潰せれば」
「言っとくがお前達組織の方から俺にちょっかいをしたんだからな。順序を間違えるなよ」
 男は笑った。肺の奥が熱い。血が肺に入って炎症を起こしたか? いや、違う。胸の奥から込み上がる熱は、初めて経験する気持ちの高まりだ。これが、殺しじゃない、殺し合いなのか!
 男は指で丸い円を作った。
水中密室プール
 突然、署内の蛇口から水が大量に出ると、ロリーを捕らえた。ロリーは操られている水の中で呼吸が出来ずに苦しんだ。
 ロリーは最後の切り札、ビーストモードを使った。
 少年だった姿から一変、巨大な獅子の化け物に変貌を遂げると、獅子の持つ鋭い爪で水は弾け飛び、獅子は水の檻から出ると勢いよく男へ飛びかかった。
「それがお前の本当の力か!」
 男は腕をクロスしてガードの姿勢になった。
守護者フォートレス!」
 男の目の前に突然城壁が地面から天井を突っ切って現れた。だが、獅子は止まることなく城壁に頭から突っ込むと簡単に城壁を破壊し、大きな口を開いて逃げようとする男を喰らおうとした。
 男は巨大な口から避けきれず、右腕を鋭い牙に切断され持っていかれた。腕はまた生える。だが、再生が明らかに遅くなっていた。
 心臓がバクバク鳴っている。
 獅子は片腕を飲み込むと、異変が起こり咳き込み出すと獅子から徐々に少年の姿へと戻っていった。
「くそっ、食っちまった」
「そのモード、自分の意思でコントロール出来ないんだな。それはかなりのデメリットじゃないのか?」
「お前こそ再生が遅れてるぞ。他人の心配してる場合か?」
「生意気なガキだ」
「ガキじゃない。ロリーだ」
「俺はまだ名乗ってなかったな。カーペンターだ」
「そうか」
 ロリーはそう言って走る構えをとる。対してカーペンターは片手で片目を隠す。
鏡の部屋メイズ
 突然四方八方に鏡が出現した。ロリーは構わず鏡に向かって突っ込み破壊していく。
 カーペンターは「ルール違反だぞ」と言ったが、ロリーは「これは戦いだ。掟破りは当然」と言い放った。
 カーペンターの目の前の鏡が無くなり、ロリーの拳が振ってきた。
 カーペンターは殴られ後方に吹き飛ぶ。
「くそっ」
 唇が切れ血が出た。歯も何本かいった。ただの殴りではない。強化されたパンチは意識が一瞬持っていかれそうになっただけでなく、今も目眩が起こっていた。それでもふらつきながら男は立ち上がった。
「ガキのパンチじゃねぇ……」
 カーペンターは急いでロリーを目で追った。既にロリーは更に追撃へと既に動いており、ガードの余裕はない。
 カーペンターは親指を下に向けた。
解体工事ジ・エンド!!」
 すると、壁や天井が崩壊を始めた。壁には亀裂が走り、天井は照明ごと落っこち始める。上の階にあった物まで落下し始めロリーは上を気にしながら避けた。
「これで、とりあえず任務は達成だ」
「カーペンター! 建物を崩して俺を生き埋めに出来たとしても、俺はそんなんで死なないぞ」
「その後で火を放てばいい。お前の体は再生するだろうが肉体は瓦礫に挟まったままで身動き出来まい。お前は挟まったまま焼かれ続け、その度に再生の苦痛が続く。そして、お前は願う筈だ。早く楽になりたいと。お前の気持ちが弱まった時、お前は不死性を失い死ぬ!」
 だが、ロリーは拳をつくり落ちてくる瓦礫を一つ一つ殴っては破壊して粉々にしていった。
「カーペンター、人を挑発するのに一番効果的な方法が分かるか?」
「なんだ突然」
「こうやるんだ」
 ロリーはそう言って中指を立てた。
 これは挑発だ。あのガキが自分から言っていたじゃないか。俺がそんな安い挑発に乗っかれるほど
「!?」
 カーペンターは寸前で目の前に飛んできた瓦礫をギリギリで避けた。
 ロリーは瓦礫を蹴り飛ばしカーペンターにその瓦礫を当てにきたのだ。
「瓦礫メテオシュート」
 ロリーはそう言いながら次々に落ちていく瓦礫を蹴っては的確にカーペンターを狙って打ってきた。
「なんなんだアイツは!」
 カーペンターは思わず崩壊を止めてしまった。
「しまった」
 恐怖心。それが敗北の原因。そう敵に指摘されておきながら、俺はアイツの指摘通り敗北した。
 カーペンターの心臓にロリーの拳が貫通した。
 再生しない……ああ、俺は死ぬのか…… 。
 ロリーが片腕を抜くとカーペンターは崩れ落ちた。
 ロリーは暫く倒れた男を見ていたが、再生しないのを見ると、勝利を確信した。
 すると、カーペンターにいいようにされまくった建物は原型を保ってはいられなくなり、止まった崩壊が再び始まりだした。ロリーは急いで崩れて出来た壁の穴から外へと脱出した。



 カーペンターとの戦闘により崩壊した署は直ぐに救出が行われたが、残念ながら生存者はいなかった。
 複数の証言から署の襲撃の捜査が行われるであろうが、その実行犯は瓦礫の下敷きになっており、被疑者死亡で事件捜査が終了するのは目に見えて分かることだった。
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