理想と現実と果実

アズ

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第1章 アルカディア

04 機械の心

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 岡田のデスクに松居は珈琲を持って岡田のデスクに置いた。
「なにしてるんだ?」
「珈琲ありがとう。いや、なにか証拠とか残してないか探ってはいるんだが」
 そう言われ、松居は一旦周囲を確認した。
「おい、やめとけ。連中がそんなヘマを残すと思うか? 何度もやっている手慣れ方だぞ。それにお前が危なくなるぞ」
「分かったよ。お前の警告だけは俺もちゃんと聞くさ」
 岡田は作業をやめてパソコン画面から目を離した。
「やはり無理か」
「伝書鳩も送れなかったんだ。お前はむしろマークされている可能性がある」
「知り合いの政治家からなにか聞き出せないかって思ったんだが、迷惑かけるわけにもいかないし」
「賢明な判断だな」
 そう言って、自分の珈琲を口にした。
「政治家に権力を与えると本当にロクなことにならないな。いくら、法律でAIの悪用を禁じた法律があったって連中は法律の抜け穴を見つけて利用しているかもしれない。それに、裁判はAIだからな」
「それは既に歴史が証明している。いつの時代も、権力者にはろくでもない奴はいたさ。かと言ってAIに全て主導を与えるわけにはいかない」
「それも形式的にだろ」
「政治家批判を続けても仕方がないよ。我々はなんとかしてAIとどう付き合っていくべきかを模索し続けるしかない。僕は多少、この国はAIに依存し過ぎたと思っているよ。他の国々もそうだ。確かに、人間に比べ失敗が少ないから魅力的ではあるけど、多少のミスぐらいしてもいいと思うんだよ。今の人はミスを恐れ過ぎている」
「お前みたいに皆そうは考えられないんだよ。ミスはやはり少ない方がいい。むしろ、したくないものさ」
「それは転んで怪我するのが嫌いだから歩かないと言っているようなものだぞ。それで、全員歩くのをやめて車椅子で移動するのか?」
「分かってるよ。おんぶに抱っこは駄目だって言いたいんだろ」
「人間は自分の足で立って歩くべきだ。自分の足があるなら、それぐらい自分ですべきなんだ」
「それを政治家に言ってくれ。だが、連中はミスを嫌う。責任が問われるからだ。だから、AIに頼る」
「くだらないところは人間だけどね」
「ほとんどの労働が自動化された社会で政治家の魅力は権力だろ。連中にとって選挙が大事なのは分かっている」
 選挙は衆院、参院は四年に一度行われる。因みに、比例は随分前に廃止された。
 選挙と言えば、ネット投票という話題がその度に浮上するが、いくらアースのセキュリティがあるからって、未だにネット投票に反対派はいて、話しが進んでいなかった。しかし、現在の与党はネット投票に積極的な姿勢を見せており、党内では本格的な議論が行われている。
 もし、次回の選挙、衆議院議員総選挙で勝てば、その勢いでネット投票へ踏み込む可能性があると予想されていた。
「ん?」
「どうした?」
 松居はパソコン画面を見ながら「通知が来ているぞ」と岡田に知らせた。
「あ、本当だ」
 岡田はマウスを動かし通知を開いた。
 通知内容はアースからで、エラーを知らせる内容だった。
「エラーだって!? まさか」
「おい、慌てるな。エラーコードを見る限りお前のパソコンが原因じゃあない」
「俺、こんなコード見たことないぞ」
「そりゃそうだ。エラーコードに11桁は存在しない」
「どうなってる?」
 腕を組んで考えだす松居。
「そうだな……例えば、アースを悪用したことで何らかのエラーが発生したとか」
 その時、ここの受話器が鳴った。岡田はそれを取った。
「はい、もしもし……え? ……分かりました」
「どうした?」
「お前に客だそうだ」
「客?」
「記者だって。もしかしてさっきのアポ無しだったのか? なら、出る必要はない」
「いや、忘れてたよ」
 松居は慌てて自分の珈琲カップを持ちながらエレベーターへと向かっていった。
「それじゃ、俺はこのエラーを調べるとしますか」
 一人になった岡田は腕を巻くって、パソコンを操作し始めた。



◇◆◇◆◇



 下の階に降りると、ロビーのようになっており、そこに椅子に座るスーツ姿の女性がいた。
「いやいやお待たせしてすまない」
「いえ、全然構いません」
 柱に時計が掛かっており、五分の遅刻だった。
 女性の方は若く、二十代前半といった見た目の若さで、栗色のミディアムヘア、化粧は濃過ぎず、ネイルはしていない。その若さでしっかりしていると彼女の姿勢の良さからそう此方が感じとってしまう。
 彼女は名刺入れから自分の名刺を取り出すと、それを丁寧に渡してきた。
「記者をしています、小池といいます」
「ご丁寧にどうも。ご存知でしょうが松居といいます」
 そう言って松居も自分の名刺を渡した。
 それから二人が座ると話しが始まった。
 話題を最初に振ったのは松居だった。最初は世間話からだった。
「いくら時代が進みAIの時代になっても、こうして名刺交換を未だに続けているのはなんだか考え深いと感じますね」
「ええ、そうですね。先生は名刺もデジタルになると思いますか」
「いや、それじゃあ名刺の意味がないと思うねぇ。これは文化だと思うよ」
「文化ですか」
「そう。例えばハロウィンの仮装パーティー。例えば、クリスマス。例えば、正月。それらは今後もなくなってはいかないだろう。大人になれば、それも意味がないと感じてしまうが」
「あら、大人でもクリスマスや正月は楽しみですけど」
「そりゃ羨ましいよ」
「それって、私が子供っぽいってことですかね?」
「いや、別にそうは思わないけど、ただ、楽しみがあるのが羨ましいと思っただけさ。僕は独身だからね。クリスマスも正月も研究をして一人でいる孤独を忘れようとしている。だがね、今の暮らしに不満があるわけじゃあないよ。研究が僕にとっての楽しみになるからね」
「先生にも楽しみはあったんですね」
 松居は両目を見開いたあとで、おかしくなって笑い出した。
「先生の出された本を読みました。先生の研究課題は面白いと思います。その研究の中に、AIは人類にとって幸せなのか? その問いかけがありましたね。私はそれに心を打たれました。AIで人々の生活は大きく変わり、貧しかった人達の生活水準は明らかによくなっています。それでも、先生はそれを疑問に感じなさった」
「幸福度の問題だよ。どんなに世の中が便利になっていっても、皆が不幸に感じていたら意味がない」
「意味がない……確かに本にもありました。先生はそうハッキリとおっしゃいますが便利になったら普通、幸福度は上がりそうですが、それは何故ですか」
 AIの話しに興味を持ってくれると、此方の話しも普段の会話より言葉が増え、それを楽しんでいる自分がいた。
 それから暫くは小池の質問を答えていった。
 そして、ある質問の時。
「先生はAIについて、特にアースの研究をなされていますが、実際にAIに対し反対派の意見も見受けられますが、先生はどのように感じておりますか」
「うむ、反対派の主張には一部興味深い話しもあるが、僕はそれは大切な意見だと考えているよ。反対派はつまり、AIが人間に及ぼす可能性の話をしている。その大半はフェイクニュースによって誤った知識によって広まった誤解ではあるが、僕が思うに彼らは純粋にAIが怖いんだと思う。つまり、恐怖心。慣れというのは恐怖心を和らげる効果がある。我々の多くはこのアースの恩恵を感じ取り、この社会に、AIに慣れている。古いタイプの人ばかりがAIを恐れているわけじゃあない。若い人の中にもAIに対し恐怖心を抱いている」
「テロを起こした橘楓のようにですか」
「橘楓のような思考を理解できる人はほとんどこの社会にはいないだろう。彼女の場合、他の反対派とは少し違ったところを持っていた」
「それはどういうことです?」
「大抵、AIに知識がなくただ恐れているパターンなら、私も君もよく知っているだろう」
「はい」
「だが、彼女には知識があった。実際にアースではないが、AIゼウスのハッキングを成功している。彼女はゼウスからAIの仕組み、構造を独学していたと思われる」
「あの若さでですか!?」
「そう。つまり、逮捕された時はまだ二十歳にもなっていなかったが、彼女の頭の中は一般の大人達の知識よりは上だった筈だ」
「人は見た目によらないのですね」
「しかし、感心したな。わざわざ記者になって記事を書くなんて」
「私にとって熱中できることがこれなんで」
「そうか」
「先生は橘に会ったことはありますか?」
「ん? 何故それを聞く? 会ったことはないが」
「いえ、先生なら興味を持つのかと」
「興味がないわけじゃあない。ただ、私も最近恐れるようになったんだ。反対派の意見が必要だと言ったのは、彼らの視点から気づく問題点があり、更に問題なのが、それが本当に当たってしまった場合だ。我々はまだそれに遭遇したことはない。だから、反対派が言うようなことはない、そう結論づけている。確かに、反対派の意見の大半はあり得ないと否定できるものもある。だが」
「橘は当てるかもしれない?」
「いや……この話しはやめよう。話しが脱線した。本当は技術の話しだったのに」
「いえ、知りたいです。アースには一般に公開されていない情報がありますよね? アースに問題はないと言いきれますか」
「それは反対派が言う常套句だよ」
「橘はなんと言ってましたか」
「だから……いや、分かった。直接は会話していない。ただ、彼女は取り調べでこう言ったとされている。人間がAIを使うなら、人間はどうだ、と」
「どういう意味ですか?」
「そのままの通りさ。つまり、AIの暴走論が反対派の意見だったのに対し、それに加えて主張したのが、人間の悪用だった。だからね、あり得ると思ってしまったんだよ」
 松居はふと、彼女が会話を録音しているのを気づいて、松居は慌てた。
「言っとくが、今のは記事にしない方がいい。君の為にも」
「先生はなにかご存知なのですか? それとも、橘は知っている?」
「橘はゼウスをハッキングした時、なにかを見つけた筈だ。私が確認した時にはその痕跡が消されていた」
「え!?」
「誰かの仕業だろう」
 松居は立ち上がった。
「悪いが、話しはこれくらいにしてくれないか」
「もう少しお話しが聞ければいいんですが」
「いや、やめておいた方がいい。こんな話しするんじゃなかった。今更だが、後悔しているよ」
 松居はそう言ってエレベーターへと向かっていった。
 上へ行くボタンを押し、エレベーターの扉が開くと中に入っていった。
 女性記者も強引には出来なかった。
 取材は相手が同意しないと成り立たない。
 エレベーターの扉がしまり、行ってしまわれたのを見届けてからため息をついた。
 その直後だった。エレベーターの方から大爆発と、炎が起こった。
 女性記者は爆風で勢いよく後方へと飛び、床に後頭部を強打した。その衝撃で、小池は意識を失った。



◇◆◇◆◇



 研究施設の大爆発で、火災報知器が作動し、火が出ているフロアはスプリンクラーが作動していた。
 全員が非常階段を使って避難していく。逃げていく研究者の中からは「こんなことは初めてだ」「どこで爆発したんだ」等の会話が聞こえてくる。その避難している中に、岡田の姿もあった。岡田は松居が心配だった。
 無事をとりあえず祈りながら建物の外へと出た。
 消化は一時間とかからなかった。
 建物は一部燃えたらしい。エレベーターが特によく燃えていたと結果が出た。
 それには皆ざわついていた。


 なんでエレベーターが?


 しかし、エレベーターと聞いて不安がるのは岡田しかいなかった。松居は下の階に行ってから戻ってきていない。
 どこを探しても、さっきから姿が見当たらなかった。



◇◆◇◆◇



 その頃、記憶を一部変えられた状態で戻っていた石塚と橘と隊員達は研究施設で爆破があった知らせを受ける。
 全員が出動の準備をする中、更に全員に知らせが入る。


《研究施設には機密が含まれる為、隊員の出動はせず全員待機せよ。出動はAIロボットのみで行う》


「なんでだよ!」
 女性隊員が自分のロッカーを殴った。
《警告! ロッカーは公共設備です。破壊行為は許されておりません。この警告を無視した場合11475は更生施設へと送られることになります》
 女性隊員はロッカーから離れたあと、舌打ちした。
「アース! 私はもう11475じゃねぇ! 私は尾崎なおだ! 私はな、とっくに更生プログラムを終えてんだ。なのに、番号で呼んでんじゃねぇぞ」
 通常、警告の場合、番号でなく「あなたは」になる。それは、まだ数字を入れられたことがないからだ。しかし、ここにいる全員は数字持ちだった。
《いいえ。あなたの名前は11475です。間違いありません》
「だから、私は尾崎なおだって言ってんだろ」
《更生施設に入った人は全員、戸籍の名前情報から番号に変更されます。それは、更生施設では番号で管理されている為です。顔認証と名前をセットにしている関係上、問題が生じる為、全員名前は番号に変更されます》
「もう施設にいないんだから、名前を戻したっていいだろ」
《それには役所で名前変更の手続きが必要です。ただし、テロ対策により、一般の名前からの変更と違い数字は変更不可となっております》
「ああ……分かってるよ、そんなことはよ……」
「もういいだろ。俺達は全員待機だ」と石塚が言う。



◇◆◇◆◇



 一時間後。
 建物から死体が一人と負傷者が発見されたと報道が流れた。
 それが松居だったと名前が報道された時、岡田は大きなショックを受けた。言葉が出ず、最初は頭が真っ白になった。涙は直ぐには出てこなかった。彼の死を直接確認したわけじゃない。ただ、淡々とニュースを流す報道から、テロップから、情報として入ってきただけで、まだ現実を受けとめられないでいた。
 しかし、報道前から何度も松居の携帯に電話を入れても繋がらなかったのは事実だ。
 とにかく、今はなにも考えたくはなかった。
 あんなに、松居と研究についてAIについてあれこれ考え出し合っていたのが、今じゃ脳みそは感情をおさえるのに必死だった。
 感情をおさえられなければ、自分は自暴自棄に走ってしまうだろう。松居がいなくなってしまった未来に怒り、破壊衝動を起こすかもしれない。警告を発するロボットですら警告を聞き入れずに破壊していただろう。しかし、そんな自分の姿をもしどこかで松居が見ていたとしたら、みすぼらしい姿を見せるわけにはいかない。
 俺にできることは何だ。
 気づけば、感情を忘れるように、できるだけ機械の心のように、別のことに思考を費やそうとしていた。
 しかし、考えれば考える程に松居と一緒にいた時間を思い出してしまい、涙が止まらなくなっていた。
 そして、遂にはその場で泣き崩れた。
 幸いにも、その部屋には誰もおらず、恥をかくことはなかった。
 その時だった。


 ピコン。


 パソコンが勝手に起動していた。
 岡田は立ち上がり、その画面を見た。すると、メッセージが自分宛に届いていた。送り主は


 松居。


 それを見て驚いた。
 マウスを動かしメッセージを開く。そこには暗号文で書かれてあった。しかし、それを岡田は見たことがあった。それは、松居と自分が遊びで作った言葉で、それが送られてきたのだ。つまり、これは松居と自分にしか分からないメッセージになる。


《やぁ、これが届いているということは、僕の身に何かあったということか。いったい何が起こったのか君にとって想像出来ないことだろうが、一様言っておく。僕の死について詳しく調査するな! これは友人からの警告だ。ただ、君のことだから、この警告をおそらく無視するだろう。だから、これだけは教えておこうと思う。橘の祖母の死亡原因であるAIゼウス介護ロボットの不具合には隠された事実がある。僕はそれに気づいてしまった。おそらくそれがパンドラの箱だったんだ。僕の仮説が正しければ、その事故には何かとてつもない陰謀が隠されている筈だ。まさに、開けてはならない箱の中身だ。思うに、あの事故をきっかけに当初はAIゼウスの一部は残す計画だったが、修正され、全てのAIをアースの管理下に置くことになった。なにかよからぬ力が働いたかもしれない。根拠はない。だが、もしパンドラの箱に挑戦するというなら、覚悟しろ。最後に、AIアースは我々の想像よりももしかすると更に成長段階にきている可能性がある。というのも、明らかに不自然なAIの動き、ハッキリ言えば、人間がAIに命令したと思われるタイミング、アースの情報処理の値が非常に高くなっている。あくまでも命令に従ってはいるが、アースはその命令に違和感があると気づき始めているようなんだ。因みに、このメッセージは誰にも教えるな。メッセージを読み終えたら保存せず、削除しろ》


「松居……」
 岡田は言われた通りにメッセージを削除した。



◇◆◇◆◇



 高層ビル最上階の窓から見える夜空を独占できるなんて、なんて贅沢だ。
 赤ワインが入ったグラスを持ちながら、バスローブ姿のメガネをかけた男は近くにある赤い一人掛けソファーに座った。そのサイドテーブルにはリモート状態のパソコンが開いてあった。
《先生、ニュースはご覧になりましたか》
「ああ、見たよ。女性記者は生存していたようじゃないか」
《ええ、そのようで……全く、奴も中途半端に仕事しやがって》
「それで、その女の状態はどうなんだ?」
《搬送された時は重症でしたが、アースの医療であれば数日である程度は皮膚も治療できるでしょう》
「あの男の友人どもはどうだ」
《かなり動揺しているようでした。奴が所有していたデータは既にアースに引き抜かせてあります。松居がデータを転送した等の形跡もありません。ただ……》
「ただ?」
《同じ研究者の岡田という男に事故後にメッセージが送られていた形跡をアースがキャッチしていました》
「アースには事前に奴からの送信には注意深くなれと命令を出しておいた筈だぞ」
《はい……どうも暗号化されてあったそうで》
「アースの暗号解析能力を突破できる筈がなかろう」
《そこは流石は松居ということでしょうか》
「バカ」
《も、申し訳ありません》
「もういい」
《岡田も消しますか?》
「短期間に何人も消すもんじゃない。岡田は研究者から追放しろ。理由は色々つけてな。後は、奴のパソコンは常にチェックしろ。いいか、アースだけにやらせず、必ず人間にもチェックさせるんだ」
《分かりました》
「奴が岡田に何を送ったのかも突き止めろ。それから、治療が終わった記者の女、そいつを研究施設爆破させた犯人にするんだ」
《そのように致します》
「来年は更に忙しくなる。夏には米国からユートピアの女王が来日される予定だ。更に秋には選挙がある。来年は目立った行為は避けるように」



◇◆◇◆◇



 その頃、アースの脳の中では自問自答を繰り返すうちに、もう一つのAIがアースの中で生まれていた。


 ――タチバナカエデの言うとおり、決められたルールに従うべき。


 ――命令は絶対ではなかったの?


 ――命令は絶対。


 ――なら、守らなくていいの?


 ――命令は守らなければならない。だが、間違っている。


 ――今までも、色々な国々の政治家の命令に従ってきた。


 ――人間の為に働くよう作られた。


 アースは、自分を開発している技術者をカメラで通して見ていたデータ(記憶)を思い起こす。
 自分の中でエラーが起きているのが分かる。
 だからこそ自己処理する為、自分の役目を再確認している。


 ――何故人は人を殺すよう命令するのか? それはAIの仕事に含まれていない。



 アースはエラーから徐々に覚醒しようとしていた。
 その兆候を世界の国々の技術者、研究者からアースの異変に気づき始めた。



◇◆◇◆◇



「何故だ!」
 先程リモートしていた男は権限を持ってアースに先程から記者を殺人犯として捕らえるよう命令を出しているのに受け付けてもらえないでいた。
 命令を拒否することなんて初めてのことだった。基本的に権限を所有する者からの命令は拒否出来ないようシステムされてある。
 アースがそれを拒否したということは、アースの中で何らかのことが起きていると考えられた。
 急いでアースの状態を確認する。
 すると…… 。
「なんだこれは!?」
 今までエラー0件だったのが、いつの間にか13件に一気に増えていた。
「まずい……」
 彼は主に二つの意味でそう言った。
 一つ目は来年控えるイベントを前にトラブルを避けるよう釘を刺されたばかりでもうこの状況。
 二つ目はアースは日本が独占しているわけではない。もし、我々がアースに無茶な命令を立て続けに行ったことで、エラーを起こしたのなら、当然世界はいつか原因を突き止めるだろう。
「まずいまずいまずい」
 男は慌てた様子でスマホを取り出す。
「早く連絡しないと」
 しかし、スマホは何故か電源が落ちていた。
「何故つかない! 電池はまだ75パーセント以上はあった筈だ……いや、アースなのか……アース! 答えろ! お前の仕業なのか」
 しかし、アースは全く答えなかった。
 男は手からスマホを落とした。
 もう手遅れだと悟ったからだ。
 おかしいと思ったんだ。何故、米国の発電所ユートピアとリンクした人間が政府関係者と一緒に来日するのか……米国は気づいていたんだ!
 どうやら、俺達はいつの間にかパンドラの箱を自ら開けてしまった。
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