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第二章
02 悪
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マーク・バーナードは退屈な会議を終え、白い円盤で飛行し自分の所属基地へと帰還していた。離着陸エリアでは見慣れた銀色の円盤もいる。過去の失態もあって警備は厳重となっており、必ず数名はコックピット内で待機している。先程乗ってきた白い円盤は銀色より新モデルで、コックピット内の操縦、機能に大きな違いはないが、シールドが発明され最初はその銀色の円盤に取り付けられたが、そもそも頑丈につくる必要がなくなった為に後に白い姿となった。後輩達は逆に白に慣れており、銀色世代はすっかり年寄り扱いだった。
過去、自分達の未来では宇宙開発の競争が激化していて、資源のある星を見つけいかにその星の開発の権利を得られるかで、血なまぐさいこともあったりした。それは世間の目には触れることはなかったが、他国との宇宙を巡る争いは度々緊張感をもたらし、銀色の円盤はまさに新時代の戦闘機として発明された。
だが、それはまさに過去の話し。自分達の星の危機にようやく世界が団結し、移住計画が立案、実行された。これまで対立が成長という競争を加速させてきたが、不可能とされた同盟は共通の最大の問題に立ち向かう上で可能にしていった。そのように人類を突き動かしたのは生存という欲だろう。
まずは移住にあたって食料問題と、自然破壊から回復へ先住民を大幅に減らし、更に我々の技術を利用し短期的にそれは達成された。今では飢えの心配はこの世界にはない。自然災害も全ては我々の気象データと、自然を管理するドーナツ型の円盤ネイチャーが食料被害を最小限におさえている。更に一部自動化された食料開発によって不測の事態に備えている。いや、むしろその逆で先住民の労働こそが不測の事態と言うべきか。これも過去のこと。テロリストが自動化の進んだ農業のシステムを乗っ取りダウンさせ食料問題が再び人類に襲いかかった。人類の科学の進歩によって飢餓の克服をしたかと思えば、人類の驚異(飢餓以外にも例えば戦争など)は歴史の中で克服しては現れてきた。その度に知恵を結集させ再び克服に至るわけだが、今回は完全に上手くいっていると思われる。
因みに会議の内容は古い世代の銀色の円盤の現役をそろそろ引退させる方針を決定する内容だった。円盤の数を調整することでメンテナンスの部品や費用の削減するのが目的で、それは事前に知らされた通り確定した。
あとは先住民の状況報告等々。先住民には監視がされ、特に科学の知識を持たせない為に禁忌とした科学の内容部分の情報を得ようとすれば見せしめに公開処刑が行われた。反乱させる知恵を与えない為でもある。だが、そんなことをしなくても先住民が我々の技術に抵抗出来る科学を連中が持っている筈もなかった。多くの科学者もその技術も我々の移住計画によって破壊されたからだ。連中を恐れる必要はなかった。
つまり、現時点でマークがすべきことはほとんど達成しており、軍も含め暇になっていた。
いい加減、パイロットを常にコックピットに待機させるのもバカバカしいのでやめさせたいぐらいだ。例の正体不明のパイロットのようにそう何度も我々の機体を訓練無しで扱える程容易くはない。怯える対象はもうないのだ。それでも先住民に機体を奪われた失態の落ち度があって中々上層部にはそう言える立場に私はなかった。
負けると分かっていても戦い続けた先住民は結局敗北し、今では我々の支配下だ。しかし、それは生存という欲望からそう選択した方が賢いと連中の頭の中でそう判断したらであろう。彼らが再び自分達の土地の返還を我々に求めることは現実的ではないのは明らかだ。
我々が時間旅行という航海技術を可能にし先住民を虐殺するあたりは歴史を彷彿させる。大航海時代にやった人類の歴史とだ。そして、奪われた土地の返還が認められないのも、差別が無くならなかったことも似ている。
唯一違うのは科学の進歩にコントロールを試みたところだ。過去、資本主義に対して倫理を求める声が現れた。弱者を正当化するメディアにうんざりしつつも、弱者が強者へと目指す上で善を求めるべきだという考えが、単なる権力者や金持ちを悪と見る薄っぺらい善悪から脱却し、より倫理のある成長へと変化しようとしていた。きっかけは環境や格差による問題だったわけだが、人々の本性はそう簡単に変わるものではなく、それは理想に終わった。原因は環境問題を取り組む上で人類は遅すぎた等があげられる。科学の急激な進歩や、ロボットにどんどん似た人類にはもはや損得での思考から脱却できず、倫理から遠ざかった人類に対する処方箋ではなかった。例えるなら、癌は転移し末期癌となった社会の未来には死という運命からは逃れられない状態にあった。かと言って今更アンチ科学は解決策にならない。むしろ、今まで人類が科学の進歩によって病気をこれまで治療法を見つけてきたように、更なる科学の進歩に可能性を委ねる他なかった。しかし、それはこれまでの考えでは解決に導けない。思い切った想像力でなければ人類に救いはなかった。過去の移住計画はまさにそれだった。やり直すチャンスを得た我々はこの新転地で今度こそ科学に倫理を求めようと考えた。だが、先住民に対して大量虐殺に使った我々に今更倫理とか馬鹿らしいと思う。我々は間違いなくあの世に天国と地獄があるなら、我々は地獄へと落とされるだろう。子孫達も我々の血を引き継ぎ、先住民を見下している限りは子孫もまた地獄へ落ちるだろう。私が原罪を支持し、人類が性悪説であると信じる理由もその考えがあるわけで、自分達を善と見ていないからだ。つまり、我々は結局善を見失っていた。善を知るにはそもそも元々善を持っていなければならない。我々が善を見失ったように、これまで人類の歴史上善を見失ったように、これからの人類もまた善を見失うであろうが、それも人類に善など端からなく、人が悪であるからに違いないのだ。だから、私とカリラは衝突した。私は、カリラ以上に人間の歴史を知っているからだ。だからこそ失望し、ならばと吹っ切れたからこそ軍人になれ、更に虐殺にも抵抗がないのだ。私を人として見なくても、それは人類がロボットに似た未来の末路に過ぎない。
世界全体が善へ向かうことが現実的でなかったのは、人が善であることが現実的でないのに等しい。それが人間なのだ。
弱者に同情し支持すれば、弱者が量産されるだけであり、人はむしろ同情ではなく強く生きなければならない。しかし、そこに善を求めても善を見失う人間は単に凶暴化し、危険な存在にしかならない。それは傲慢な権力者が誕生し、それは歴史上繰り返される。例え独裁でない民主主義であっても権力の裏には損得が見え隠れし、利益を追求する。政治家に不正や腐敗が止まないのは当たり前なことだ。人間は力を求め、それは決まって良からぬことに使い、理由は人は善を見失うからであり、それは完璧な善を知らないからで、その理由は人は善でなく悪だからだ。
もし、聖人君子を求めているなら、自分自身に問うてみれば分かる。自分が聖人君子でないのなら、何故他人にはそれを求められる?
それでも、世界は存在し回り続け、人類は未だ生きている。神が存在するなら、人類はそれでも生かされていると考えることが出来る。ならば、自ら人類は滅亡へ向かう必要はない。生存という欲求のまま人類は悪の道を更に進み続ける。宇宙という広大な暗闇の中でポツンと小さく生き続け終わるその時まで悪を進む。時に思うのだ。これだけ苦痛のある世界で生きるこの世界こそが楽園から追放された人類にとっての地獄ではないのかと。もし、地獄なら人類が悪である理由に説明がつく。悪だからこそ地獄に落とされ、でなければ楽園に追放されることはなかったのだと。
過去、自分達の未来では宇宙開発の競争が激化していて、資源のある星を見つけいかにその星の開発の権利を得られるかで、血なまぐさいこともあったりした。それは世間の目には触れることはなかったが、他国との宇宙を巡る争いは度々緊張感をもたらし、銀色の円盤はまさに新時代の戦闘機として発明された。
だが、それはまさに過去の話し。自分達の星の危機にようやく世界が団結し、移住計画が立案、実行された。これまで対立が成長という競争を加速させてきたが、不可能とされた同盟は共通の最大の問題に立ち向かう上で可能にしていった。そのように人類を突き動かしたのは生存という欲だろう。
まずは移住にあたって食料問題と、自然破壊から回復へ先住民を大幅に減らし、更に我々の技術を利用し短期的にそれは達成された。今では飢えの心配はこの世界にはない。自然災害も全ては我々の気象データと、自然を管理するドーナツ型の円盤ネイチャーが食料被害を最小限におさえている。更に一部自動化された食料開発によって不測の事態に備えている。いや、むしろその逆で先住民の労働こそが不測の事態と言うべきか。これも過去のこと。テロリストが自動化の進んだ農業のシステムを乗っ取りダウンさせ食料問題が再び人類に襲いかかった。人類の科学の進歩によって飢餓の克服をしたかと思えば、人類の驚異(飢餓以外にも例えば戦争など)は歴史の中で克服しては現れてきた。その度に知恵を結集させ再び克服に至るわけだが、今回は完全に上手くいっていると思われる。
因みに会議の内容は古い世代の銀色の円盤の現役をそろそろ引退させる方針を決定する内容だった。円盤の数を調整することでメンテナンスの部品や費用の削減するのが目的で、それは事前に知らされた通り確定した。
あとは先住民の状況報告等々。先住民には監視がされ、特に科学の知識を持たせない為に禁忌とした科学の内容部分の情報を得ようとすれば見せしめに公開処刑が行われた。反乱させる知恵を与えない為でもある。だが、そんなことをしなくても先住民が我々の技術に抵抗出来る科学を連中が持っている筈もなかった。多くの科学者もその技術も我々の移住計画によって破壊されたからだ。連中を恐れる必要はなかった。
つまり、現時点でマークがすべきことはほとんど達成しており、軍も含め暇になっていた。
いい加減、パイロットを常にコックピットに待機させるのもバカバカしいのでやめさせたいぐらいだ。例の正体不明のパイロットのようにそう何度も我々の機体を訓練無しで扱える程容易くはない。怯える対象はもうないのだ。それでも先住民に機体を奪われた失態の落ち度があって中々上層部にはそう言える立場に私はなかった。
負けると分かっていても戦い続けた先住民は結局敗北し、今では我々の支配下だ。しかし、それは生存という欲望からそう選択した方が賢いと連中の頭の中でそう判断したらであろう。彼らが再び自分達の土地の返還を我々に求めることは現実的ではないのは明らかだ。
我々が時間旅行という航海技術を可能にし先住民を虐殺するあたりは歴史を彷彿させる。大航海時代にやった人類の歴史とだ。そして、奪われた土地の返還が認められないのも、差別が無くならなかったことも似ている。
唯一違うのは科学の進歩にコントロールを試みたところだ。過去、資本主義に対して倫理を求める声が現れた。弱者を正当化するメディアにうんざりしつつも、弱者が強者へと目指す上で善を求めるべきだという考えが、単なる権力者や金持ちを悪と見る薄っぺらい善悪から脱却し、より倫理のある成長へと変化しようとしていた。きっかけは環境や格差による問題だったわけだが、人々の本性はそう簡単に変わるものではなく、それは理想に終わった。原因は環境問題を取り組む上で人類は遅すぎた等があげられる。科学の急激な進歩や、ロボットにどんどん似た人類にはもはや損得での思考から脱却できず、倫理から遠ざかった人類に対する処方箋ではなかった。例えるなら、癌は転移し末期癌となった社会の未来には死という運命からは逃れられない状態にあった。かと言って今更アンチ科学は解決策にならない。むしろ、今まで人類が科学の進歩によって病気をこれまで治療法を見つけてきたように、更なる科学の進歩に可能性を委ねる他なかった。しかし、それはこれまでの考えでは解決に導けない。思い切った想像力でなければ人類に救いはなかった。過去の移住計画はまさにそれだった。やり直すチャンスを得た我々はこの新転地で今度こそ科学に倫理を求めようと考えた。だが、先住民に対して大量虐殺に使った我々に今更倫理とか馬鹿らしいと思う。我々は間違いなくあの世に天国と地獄があるなら、我々は地獄へと落とされるだろう。子孫達も我々の血を引き継ぎ、先住民を見下している限りは子孫もまた地獄へ落ちるだろう。私が原罪を支持し、人類が性悪説であると信じる理由もその考えがあるわけで、自分達を善と見ていないからだ。つまり、我々は結局善を見失っていた。善を知るにはそもそも元々善を持っていなければならない。我々が善を見失ったように、これまで人類の歴史上善を見失ったように、これからの人類もまた善を見失うであろうが、それも人類に善など端からなく、人が悪であるからに違いないのだ。だから、私とカリラは衝突した。私は、カリラ以上に人間の歴史を知っているからだ。だからこそ失望し、ならばと吹っ切れたからこそ軍人になれ、更に虐殺にも抵抗がないのだ。私を人として見なくても、それは人類がロボットに似た未来の末路に過ぎない。
世界全体が善へ向かうことが現実的でなかったのは、人が善であることが現実的でないのに等しい。それが人間なのだ。
弱者に同情し支持すれば、弱者が量産されるだけであり、人はむしろ同情ではなく強く生きなければならない。しかし、そこに善を求めても善を見失う人間は単に凶暴化し、危険な存在にしかならない。それは傲慢な権力者が誕生し、それは歴史上繰り返される。例え独裁でない民主主義であっても権力の裏には損得が見え隠れし、利益を追求する。政治家に不正や腐敗が止まないのは当たり前なことだ。人間は力を求め、それは決まって良からぬことに使い、理由は人は善を見失うからであり、それは完璧な善を知らないからで、その理由は人は善でなく悪だからだ。
もし、聖人君子を求めているなら、自分自身に問うてみれば分かる。自分が聖人君子でないのなら、何故他人にはそれを求められる?
それでも、世界は存在し回り続け、人類は未だ生きている。神が存在するなら、人類はそれでも生かされていると考えることが出来る。ならば、自ら人類は滅亡へ向かう必要はない。生存という欲求のまま人類は悪の道を更に進み続ける。宇宙という広大な暗闇の中でポツンと小さく生き続け終わるその時まで悪を進む。時に思うのだ。これだけ苦痛のある世界で生きるこの世界こそが楽園から追放された人類にとっての地獄ではないのかと。もし、地獄なら人類が悪である理由に説明がつく。悪だからこそ地獄に落とされ、でなければ楽園に追放されることはなかったのだと。
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