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第三章
02 逃れられない運命
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遠くの上空を飛ぶ謎の宇宙船は自分達に気づかず去っていった。あの宇宙船を追いかけるべきか? そうする前にその謎の宇宙船は引き返しこちらへと向かって飛んできた。僕達はどうすべきか迷った。逃げる? しかし、どこへ? 逃げ場なんてこんな場所にはなかった。森ですらまだ遠くにある。そうこうしているうちに謎の宇宙船は我々の上空近くまで来て、ゆっくりと降下した。あっという間に僕達の目の前でその宇宙船は停止し、宇宙船の底が開き白い光が僕達三人を包んだ。光から現れたのは白髪のおかっぱ頭に金のピアス、黒人の少女だった。軍服のような戦闘服を着ている。色は宇宙船と同じ黒と赤いラインだ。女の手には白い長銃があり、その銃口はこちらに向けられていた。
「お前達はどっから来た」
「私が説明しよう」マーティンはそう言ってここまで来た経緯を嘘なく答えた。説明が終わるまで少女は黙って銃口を向けたまま聞いていた。そして、マーティンの説明が終わると「ついて来い」と言って少女は先に宇宙船の中へと入っていった。
リウは「罠だと思うか?」とマーティンに聞いた。勿論マーティンにそんなこと分かる筈もなかった。
「さぁな。我々に選択肢があるとは思えんが」
マーティンの言う通りで、この荒野を生き抜くよりもついていった方が何かこの星について知れるかもしれない。なにより、ランスにとって父親を知るチャンスかもしれないのだ。
三人は少女に従った。宇宙船に乗り込むと入口は閉まり宇宙船は上昇した。宇宙船の中にある床に取り付けられた椅子が四つにテーブルが一つと最低限しかない家具の寂しい部屋に入れられると、少女は「そこにいて」と言って扉は閉まった。扉は電子ロックされ部屋には監視カメラがあった。当然、内側からは開けることが出来ない。天井、床、家具、証明の全てが白で統一されてある。人間味のない殺風景な部屋だ。
「これからどうなると思う?」というリウの質問にマーティンは「さぁな」と答えた。僕達の手元に武器は何一つない。何が出来るとも思わない。とりあえずは状況を見るしかなかった。当たり前だが、僕達は連中の手の中にあるのだから。その手が閉ざされ握りつぶされないよう祈るだけしか出来ない。
暫くして扉は開いた。窓のない部屋では外がどうなっているのか、どれぐらい飛んだのか分からない。開けたのは例の若き兵士だった。
「来い」
少女にそう言われ僕達三人は部屋を出てそのまま案内され宇宙船の外へと出た。宇宙船の近くには赤い鉄塔がある。しかし、鉄塔の天辺には謎の装置があり、それは潰れた丸い形をしている。その鉄塔からはブーンという音が響いていた。
「あれは何だ?」とマーティンは少女に聞いた。
「あれは発電所だ」
「発電所?」
「質問はそれぐらいにしておけ。こっちだ」
少女が案内したのは地下に向かうトンネルとガラス張りのリフトとその隣に非常階段があって、それは地下へと向かっていた。エレベーターと違い垂直ではなく急勾配の下へと続く。僕達はそのガラス張りのリフトに乗り込み他の兵士達と最後に少女が乗り込みリフトの扉が閉まる。全員で八人。リフトの降下ボタンを少女が押すとベルが鳴り、リフトが動き出した。想像よりスピードのある降下で慣れない僕達は驚いて壁に寄りかかった。兵士達は慣れていてもたれることなく立っていた。
リフトが一番下まで到着すると扉は開き兵士達がぞろぞろと降りていき、最後に僕達が降りた。
少女は僕達が降りるのを待っていた。
トンネルは長く白い証明が等間隔に照らしていたが、階段で登っていくのは大変そうだ。だからこそのリフトだろうが、その前は当然かなり地下まで掘っていったに違いない。かなりの重労働になる筈だ。当然、次の疑問も浮かぶわけでマーティンは我慢出来ずに少女に聞いた。
「君達はいったい何者なんだ? 見た感じ我々と違いはなさそうだが。人なんだろ?」
「そうだ」
「もしかすると消息を絶った宇宙船の乗組員か? しかし、君のような少女が調査団に加わっていたという話しは聞いていない。それに、何故無事なら今まで連絡をとらなかった」
「お前達の疑問は当然だ。だが、私がお前達の質問に全て答えるとは限らない」
「なら、これだけは教えて欲しい。君達は私達の敵ではないんだな?」
「私はお前達を見つけ保護しただけだ。これからお前達をどのように扱うかはいずれ判断がくだされるだろう。その間はお前達の安全は保証される」
「分かった」
それから僕達は再び殺風景な部屋へと監禁された。当然ながら地下施設の案内なんてされていないし、どこに何があるかなんて分からない。ここが何なのかも。だが、部屋まで案内されて分かったのは地下施設にはそれなりの衛生環境があり、地下で働いている人達がいるということ。それなりの規模ではないかと想像する。
「地下にいちからこんな施設をつくれるのか疑問だ。どうやったんだ?」
「もしかしたらこの星の地下には空洞があったのかもしれん。我々の星にも空洞説があってそれが小説になったりしているが、この星の空洞を見つけそれを利用したのがこの場所じゃないのか?」
三人はとりあえずその部屋で休憩し自分達の運命を待った。
暫くして扉が開き少女が「来い」と言った。
「お前達の処分が決まった。お前達を元来た星へと返す」
「待ってくれ。私達はその星から脱出したんだ。その星には今侵略者達がいる」
「そんなことは知っている。だからと言って何故我々がお前達を匿う理由になるんだ?」
「そちらで助けてはくれないか?」
「何故? お前達は何故逃げ出したんだ。何故戦わない? 何故自分達の使命から逃げ出せた? 自分達の命が惜しく逃げ出してもお前達の住処はここではない。お前達の住処はどこだ? あの星の筈だ。それを簡単に捨てられる程お前達の民族意識はその程度なのか?」
「戦いなら敗北した。だから逃げ出した」
「敗北したのならそこからは逃げられない。過去、人類が世界大戦を経験しそこから這い上がったように、敗北からは逃れられない。もし、お前達のように大勢が逃げだせば永遠に這い上がることもなかっただろう」
「這い上がれると?」
「諦めなければ。お前達はそれを忘れてしまっている。お前達は簡単に諦めそこから逃げ出し楽をしようとしている。だが、それは決して幸福な人生にはなりえない。お前達は生まれ育った土地を忘れることは出来ない」
「君は立ち向かえと言うんだな。だが、それは無責任な戯言だ。その為にどれだけの犠牲が生まれると思っているんだ」
「犠牲はつきものだ。犠牲なき世界は存在しない。科学が発展したのも、戦争を経験した歴史という土壌の上にある世の中も、犠牲は常に人類のピンチから成長へと導いてきた。犠牲なき平和こそ空論であり、これまでの歴史の否定だ。それこそ戯言であり、偽善だ。君達はまだその事実から逃れられると思っているようだが、これは逃れることの出来ない運命だ。定めであり、それを受け入れる他ない」
「平和を望んで何が悪い」
「望むのが悪いのではない。平和だったことなんてなかったという事実から目をそらしているだけだ。現実を見ろ」
「君は人類が将来平和を獲得出来ることが不可能だと言うのか?」
「侵略者……未来からやって来た連中は再びこの世界で戦争を始めた。人類が戦争を克服したと思ったのならそれは迷信だ。平和だった時もあっただろう。しかし、それと克服は勘違いにも程があるぐらい全く違うものだ。克服とは一生それが訪れないことを言う。本当にそう言いきれる根拠は何だ?」
すると、二人の言い合いの間にランスは入り込んだ。
「あの! その前に教えて下さい。僕の父さんを知りませんか? この星に来た筈なんです。あの古い宇宙船は父さんが乗っていた宇宙船だと思うんです」
「君は……」
すると、一人分の足音が近づいてきた。それは男で、顔を見たランスとリウは驚いた。ランスにとっては写真でしかほとんど記憶にないが、リウにとっては久しぶりに見た顔だ。
「父さん!?」
「お前達はどっから来た」
「私が説明しよう」マーティンはそう言ってここまで来た経緯を嘘なく答えた。説明が終わるまで少女は黙って銃口を向けたまま聞いていた。そして、マーティンの説明が終わると「ついて来い」と言って少女は先に宇宙船の中へと入っていった。
リウは「罠だと思うか?」とマーティンに聞いた。勿論マーティンにそんなこと分かる筈もなかった。
「さぁな。我々に選択肢があるとは思えんが」
マーティンの言う通りで、この荒野を生き抜くよりもついていった方が何かこの星について知れるかもしれない。なにより、ランスにとって父親を知るチャンスかもしれないのだ。
三人は少女に従った。宇宙船に乗り込むと入口は閉まり宇宙船は上昇した。宇宙船の中にある床に取り付けられた椅子が四つにテーブルが一つと最低限しかない家具の寂しい部屋に入れられると、少女は「そこにいて」と言って扉は閉まった。扉は電子ロックされ部屋には監視カメラがあった。当然、内側からは開けることが出来ない。天井、床、家具、証明の全てが白で統一されてある。人間味のない殺風景な部屋だ。
「これからどうなると思う?」というリウの質問にマーティンは「さぁな」と答えた。僕達の手元に武器は何一つない。何が出来るとも思わない。とりあえずは状況を見るしかなかった。当たり前だが、僕達は連中の手の中にあるのだから。その手が閉ざされ握りつぶされないよう祈るだけしか出来ない。
暫くして扉は開いた。窓のない部屋では外がどうなっているのか、どれぐらい飛んだのか分からない。開けたのは例の若き兵士だった。
「来い」
少女にそう言われ僕達三人は部屋を出てそのまま案内され宇宙船の外へと出た。宇宙船の近くには赤い鉄塔がある。しかし、鉄塔の天辺には謎の装置があり、それは潰れた丸い形をしている。その鉄塔からはブーンという音が響いていた。
「あれは何だ?」とマーティンは少女に聞いた。
「あれは発電所だ」
「発電所?」
「質問はそれぐらいにしておけ。こっちだ」
少女が案内したのは地下に向かうトンネルとガラス張りのリフトとその隣に非常階段があって、それは地下へと向かっていた。エレベーターと違い垂直ではなく急勾配の下へと続く。僕達はそのガラス張りのリフトに乗り込み他の兵士達と最後に少女が乗り込みリフトの扉が閉まる。全員で八人。リフトの降下ボタンを少女が押すとベルが鳴り、リフトが動き出した。想像よりスピードのある降下で慣れない僕達は驚いて壁に寄りかかった。兵士達は慣れていてもたれることなく立っていた。
リフトが一番下まで到着すると扉は開き兵士達がぞろぞろと降りていき、最後に僕達が降りた。
少女は僕達が降りるのを待っていた。
トンネルは長く白い証明が等間隔に照らしていたが、階段で登っていくのは大変そうだ。だからこそのリフトだろうが、その前は当然かなり地下まで掘っていったに違いない。かなりの重労働になる筈だ。当然、次の疑問も浮かぶわけでマーティンは我慢出来ずに少女に聞いた。
「君達はいったい何者なんだ? 見た感じ我々と違いはなさそうだが。人なんだろ?」
「そうだ」
「もしかすると消息を絶った宇宙船の乗組員か? しかし、君のような少女が調査団に加わっていたという話しは聞いていない。それに、何故無事なら今まで連絡をとらなかった」
「お前達の疑問は当然だ。だが、私がお前達の質問に全て答えるとは限らない」
「なら、これだけは教えて欲しい。君達は私達の敵ではないんだな?」
「私はお前達を見つけ保護しただけだ。これからお前達をどのように扱うかはいずれ判断がくだされるだろう。その間はお前達の安全は保証される」
「分かった」
それから僕達は再び殺風景な部屋へと監禁された。当然ながら地下施設の案内なんてされていないし、どこに何があるかなんて分からない。ここが何なのかも。だが、部屋まで案内されて分かったのは地下施設にはそれなりの衛生環境があり、地下で働いている人達がいるということ。それなりの規模ではないかと想像する。
「地下にいちからこんな施設をつくれるのか疑問だ。どうやったんだ?」
「もしかしたらこの星の地下には空洞があったのかもしれん。我々の星にも空洞説があってそれが小説になったりしているが、この星の空洞を見つけそれを利用したのがこの場所じゃないのか?」
三人はとりあえずその部屋で休憩し自分達の運命を待った。
暫くして扉が開き少女が「来い」と言った。
「お前達の処分が決まった。お前達を元来た星へと返す」
「待ってくれ。私達はその星から脱出したんだ。その星には今侵略者達がいる」
「そんなことは知っている。だからと言って何故我々がお前達を匿う理由になるんだ?」
「そちらで助けてはくれないか?」
「何故? お前達は何故逃げ出したんだ。何故戦わない? 何故自分達の使命から逃げ出せた? 自分達の命が惜しく逃げ出してもお前達の住処はここではない。お前達の住処はどこだ? あの星の筈だ。それを簡単に捨てられる程お前達の民族意識はその程度なのか?」
「戦いなら敗北した。だから逃げ出した」
「敗北したのならそこからは逃げられない。過去、人類が世界大戦を経験しそこから這い上がったように、敗北からは逃れられない。もし、お前達のように大勢が逃げだせば永遠に這い上がることもなかっただろう」
「這い上がれると?」
「諦めなければ。お前達はそれを忘れてしまっている。お前達は簡単に諦めそこから逃げ出し楽をしようとしている。だが、それは決して幸福な人生にはなりえない。お前達は生まれ育った土地を忘れることは出来ない」
「君は立ち向かえと言うんだな。だが、それは無責任な戯言だ。その為にどれだけの犠牲が生まれると思っているんだ」
「犠牲はつきものだ。犠牲なき世界は存在しない。科学が発展したのも、戦争を経験した歴史という土壌の上にある世の中も、犠牲は常に人類のピンチから成長へと導いてきた。犠牲なき平和こそ空論であり、これまでの歴史の否定だ。それこそ戯言であり、偽善だ。君達はまだその事実から逃れられると思っているようだが、これは逃れることの出来ない運命だ。定めであり、それを受け入れる他ない」
「平和を望んで何が悪い」
「望むのが悪いのではない。平和だったことなんてなかったという事実から目をそらしているだけだ。現実を見ろ」
「君は人類が将来平和を獲得出来ることが不可能だと言うのか?」
「侵略者……未来からやって来た連中は再びこの世界で戦争を始めた。人類が戦争を克服したと思ったのならそれは迷信だ。平和だった時もあっただろう。しかし、それと克服は勘違いにも程があるぐらい全く違うものだ。克服とは一生それが訪れないことを言う。本当にそう言いきれる根拠は何だ?」
すると、二人の言い合いの間にランスは入り込んだ。
「あの! その前に教えて下さい。僕の父さんを知りませんか? この星に来た筈なんです。あの古い宇宙船は父さんが乗っていた宇宙船だと思うんです」
「君は……」
すると、一人分の足音が近づいてきた。それは男で、顔を見たランスとリウは驚いた。ランスにとっては写真でしかほとんど記憶にないが、リウにとっては久しぶりに見た顔だ。
「父さん!?」
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