電流

アズ

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 すっかり酔っ払ってしまった私はタクシーを呼び、帰宅した。
 無事、家に到着すると私はそのまま深い眠りについた。
 後日、目が覚めると私は玄関で寝ていた。
「やれやれ」
 すっかりお布団で寝なかったせいか、躰のあちこちが痛くなっていた。
 俺は頭を抱えながら階段をのぼって二階へと向かった。
 こんなに酒は弱くなかったのだが、味覚が敏感になったのと同時に酔いやすくもなってしまったようだ。
 二階にある洗面所に行くと、そこで顔を洗い、それから歯を磨いた。
 うがいが終わった頃には頭もスッキリ覚めて、多少酔いが楽になった。
 それからタンスのある部屋へ行き、服を取り出すと、風呂場へ向かった。
 昨日のまんまだ。まず、このだらしなさをなんとかせねば。
 シャワーを浴びて更にスッキリさせ新しい服へ着替えた。古い服は洗濯機に入れ、蓋を閉めスイッチを入れた。
 リビングでテレビをつけると、バラエティーなのか報道番組なのかよく分からない番組が流れた。私はチャンネルを変え、ニュース番組に変える。
 日常に変わった変化は無し。
 前は家は新聞をとっていたが、この家が私だけになってからは新聞もとるのをやめていた。
 最近は携帯からでも情報が得られてしまう。
 便利な世の中になったなと思う反面、ネット犯罪も巧妙になっていっている。今じゃ、オレオレ詐欺だけ気をつければいいというわけにはいかなくなっている。
 ふと、思い出し固定電話の留守電を確認した。といってもほぼ留守電に何か入っていることなんてなかった。
 だが、この日は何故か珍しく一件のメッセージが入っていた。
 今どき、携帯でメッセージを飛ばせばいい。そうなると、相手は私の携帯の連絡先を知らない可能性がある。通販か? 奴らはどうやって連絡先を知っているのか…… 。
 ボタンを押すと、メッセージが読まれる。
「メッセージは一件です……もしもし、○○警察署です。下山さんのお宅でしょうか? お手数ですがこのメッセージをお聞きになられましたら折り返しお電話をお願いします」
 何故警察署から電話が?
 とりあえず私は折り返し電話をかけた。
「○○警察署です」
 俺は電話機の目の前にある壁に貼り付けた紙を読み上げる。
「下山由紀夫です。留守電にそちらから電話が入っておりまして折り返しお電話したところなんですが」
「少々お待ち下さい。お名前をもう一度確認させて下さい」
「下山由紀夫です」
「下山由紀夫さん?」
「はい、そうです」
「では、少々お待ち下さい」
 保留にされ音楽が流れる。
 暫く待っていると、音楽が途切れた。
「お待たせしました。もしもし、下山さんで宜しかったでしょうか?」
「はい、そうです。それであの、何の用で?」
「大変申し上げにくいのですが」



 私は安置所にいた。そこで、久しぶりに友人と再開した。と言っても、その友人は呼吸をしていなかった。
 自殺だった。首吊りと警察から説明を受けていた。
 友人は作家だから横の繋がりとか講義の仕事上の繋がりはあっても、家族関係は全く知らなかった。彼がまだ独身であること以外はなにも。
 だから、両親は既に他界していることも、家族がいないことも知らなかった。
 前に会った時は平気そうにしていたような気がしたのだが。しかし、それも数カ月前の話しだ。
 おそらく、自分の躰の変化のことで相当悩んでいたんだ。
 私は全く気づけなかった。いや、分からなかった。
 私には大事な部分が今、失われている。
 自分の胸辺りに手を当てた。
 ない、ここにあるものが。
 私は薄情者はくじょうものだ。
 亡き友人の姿を目の前にしても、涙一つ流せないでいた。まるで自分がロボットになってしまったかのようだ。
 今、この部屋には私しかいない。
 私は亡き友人にそっと触れてみた。
 指先から冷たさが伝わる。だが、何も感じなかった。何も流れてはこなかった。いつもなら、電流のように流れてくるのに。なのに、それが全く伝わってこなかった。
 そうか、これが死なのか。
 人間の脳みそには電気信号が走っているとされている。だが、それが全くないのと同じように、それが死なのだ。
 虚無。
 そこに、友人がいるが私の知っている友人はいない。中身がなくなっている。おそらくこれを宗教では魂と呼ぶんだろう。そう、魂がない。
 触れば何か分かると思った。そんな期待があった。知りたかった。
 だが、もう私の知る彼はいない。
 名前が思い出せないのが残念だ。
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