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消えた弟
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前田泰介年齢31、高校卒業後からずっと工場勤務の正社員、住まいは西部X市の賃貸アパート一階の105号室。あとで知った話だと前田は死ぬ直前に家族にラインで「さようなら。ありがとうね。ごめん」と送られてきて不審に感じた家族が自宅へ寄るも鍵がかかっていた為不動産屋に連絡、その後到着した不動産業者が持ってきたスペアキーで開けようとするも、U字ロックタイプに阻まれ開けられなかった。家族は隙間から息子の名前を呼び続けたが反応なし。警察に通報しその後到着すると一階の窓を割って入り奥の部屋でテーブルに寝そべるように座っている前田泰介を発見。既に息を引き取っているのを確認。死亡推定時刻は家族へラインを送った後から家族が到着する時間帯の間、つまり13時から15時の間になる。アパート周辺は残念ながら防犯カメラのようなものはなく、その時間帯はどの部屋も仕事で外出をしていた。前田泰介はその日の前から体調が優れないという理由で休暇の申請を出していた。会社は前田の仕事ぶりはいたって真面目だったと。ただ、最近は元気がなかったので体調不良で休暇申請してきた時は理由を疑ったりはしなかったという。
前田泰介自宅、その部屋の構造は玄関直ぐが台所で、ちょっとした通路沿いにトイレと風呂場があり、玄関から真っ直ぐ奥のワンルームには絨毯とテーブルにテレビ、畳まれた布団がある。部屋の窓は鍵がかかっており、トイレと風呂には窓がない。つまり、人が入れるのは玄関のドアと部屋の窓だけ。しかし、部屋の窓には鍵がかかっており、玄関のドアも施錠され更にはU字ロックまでされてあった。
つまり、これは完全な密室。
まず自殺を疑う。動機は元彼女とよりを戻そうとしたが自分の子ではない前の男の子どもを育てることが耐えきれず、結局うまくはいかなかった。男がどんな理由で一度別れたのかは知らないが、その後も会っていたところを見ると完全に離れられない程の愛をその女性に抱いていた可能性がある。悪いことに女性もその男と付き合ってしまった。
女性のことが忘れられなかった前田は自殺をしようと覚悟を決め最後に親にメッセージを残した。前田の首には紐で縛られた痕がある。
だとしたら何故前田は首を吊った状態で発見されなかったのか。そして首を吊った紐か縄がその場にないのか。誰かが持ち去った以外にあり得ない。つまり、この密室の部屋を誰かが出入りしてみせたことになる。
警察がまず容疑としてみたのが二名。元彼女で昔彼氏の部屋に住んでいた吉田愛佳。
そしてもう一人が高橋の弟だ。
この二人には前田との接点がある。だが、動機は不明。まず、高橋の弟が前田を殺る理由は今のところ見当たらない。前田が吉田が浮気して前田を殺したのならその時でないとおかしいからだ。弟は吉田と別れることで決着をつけようとした。それに弟は前田の自宅をそもそも知らない。吉田が高橋と付き合っていたのは高橋弟の家だ。
だとすれば吉田が怪しい。吉田も高橋も前田が亡くなる時刻、アリバイがない。吉田は一人で実家にいた。高橋弟は仕事で外出しそのまま昼休憩。つまり、事件の時間帯二人は外にいた。ただ、吉田は前田の家にいたことがあり、スペアキーを作って持っていた可能性がある。だが、そこで忘れてはならないのはあのU字ロックだ。スペアキーを持っていても密室は破られない。つまり、これは二人だけじゃなく全てに言えることになる。
犯人は何故凶器を持ち帰ったのか? 指紋か入手経緯で知られたくないからなのか。突発的だったのか。しかし、現場は争った痕跡はなく現金が盗まれた痕跡もない。因みに自宅の鍵は部屋にあったとのこと。
「お前どうやってそこまで知らべられた?」
高橋は集めた情報の資料を見て驚愕していた。
「本物の探偵じゃん! いや、実は元は特殊部隊だったとか」
「いや、違うって」
「いやいや俺は絶対に信じないから。あ、でも事件を解決してくれるって信じてるからな」
「なんでだよ。事件を解決するのは警察だろ」
「しかし、こうして見るとやっぱり弟の可能性はないよな」
「まぁだろうね」
実際、弟は逮捕されたわけではない。まだ、聞き取りの段階だ。
「やっぱりお前に相談して良かったよ」
「いやいや、実際まだ分かんないよ。凶器がどこへ行ったのかとか」
「でも、流石にむずいよな。密室とか」
「そうだね」
「そこは謎解きだろ探偵」
「だから探偵じゃないって」
「いや、そこをなんとか!」
「なんか都合がいいなぁ」
「やきとり(居酒屋)奢ります」
「よし、分かった」
「それで、なにか分かりそうなのか?」
「えーと、それなんだけど気になる点が幾つかあって、その中で一番気になったのが家族にメッセージを送ったってことで、もし犯人が自殺に見せかけるなら凶器を持ち去ったりはしない筈なんだよね」
「確かに。それじゃ……」
「多分前田って人は本当に今から死のうとしたんだと思うよ」
「だけどその前に犯人が来たということ?」
「いや、多分だけど前田って人は本当に自殺したんだと思う。その後やって来た誰かが縄か紐を解いた。理由は分からない。それに密室のトリックも」
「これからどうする?」
「一番は吉田って人に話が聞けることと、無理を承知でいえば現場が見れたらなにか分かるかもしれない」
「両方かなり難しい要求だね。とりあえず吉田の件は弟に話してみる」
「そしたらなにか進展あったらまたラインで教えてよ」
「分かった」
それから三日後、高橋から自分にラインがきた。内容は吉田と会うことが出来たが門前払いで結局話すことが出来なかったというものだった。
話せたら良かったのだがまぁなんとなくそうなるだろうなという気がしていた。
吉田にとって前田の死はショックだった筈だ。更に警察から色々と聞かれただろうから気持ちの整理も出来ていないだろう。多分時間はかかる。
一つ、高橋には言っていなかったが確信していることがある。吉田が前田を殺害することはかなり厳しいというより出来ないだろう。男を相手に女性一人の力で絞殺させるのは大変だからだ。それよりかは背後から後頭部にかけ鈍器なようなもので殴る方が可能性はあるだろう。
となると前田は吉田にも連絡をした可能性がある。吉田は家族同様家へ向かう。家族より早く着いた吉田は自殺している彼を見て、まず彼を降ろすだろう。だが、既に手遅れ。本来ならそこで警察に通報するだろう。だが、実際は前田はそれまで生きていたかのように座らされ、テーブルにうつ伏せていた。そして鍵をしめ、U字ロックをトリックを使って閉じた。
何故?
考えられるのは自殺ではなく他殺だと思わせる為。鍵を閉めたのはアリバイのない自分が疑われてしまうから。そしてU字ロックしたのはスペアキーを持っていると密室を疑われてしまうから。しかし、他殺に見せる理由は不明。
それは吉田という女性の中に深く閉ざされた秘密にある。
むしろトリックを解くよりも難解な謎だ。
前田泰介自宅、その部屋の構造は玄関直ぐが台所で、ちょっとした通路沿いにトイレと風呂場があり、玄関から真っ直ぐ奥のワンルームには絨毯とテーブルにテレビ、畳まれた布団がある。部屋の窓は鍵がかかっており、トイレと風呂には窓がない。つまり、人が入れるのは玄関のドアと部屋の窓だけ。しかし、部屋の窓には鍵がかかっており、玄関のドアも施錠され更にはU字ロックまでされてあった。
つまり、これは完全な密室。
まず自殺を疑う。動機は元彼女とよりを戻そうとしたが自分の子ではない前の男の子どもを育てることが耐えきれず、結局うまくはいかなかった。男がどんな理由で一度別れたのかは知らないが、その後も会っていたところを見ると完全に離れられない程の愛をその女性に抱いていた可能性がある。悪いことに女性もその男と付き合ってしまった。
女性のことが忘れられなかった前田は自殺をしようと覚悟を決め最後に親にメッセージを残した。前田の首には紐で縛られた痕がある。
だとしたら何故前田は首を吊った状態で発見されなかったのか。そして首を吊った紐か縄がその場にないのか。誰かが持ち去った以外にあり得ない。つまり、この密室の部屋を誰かが出入りしてみせたことになる。
警察がまず容疑としてみたのが二名。元彼女で昔彼氏の部屋に住んでいた吉田愛佳。
そしてもう一人が高橋の弟だ。
この二人には前田との接点がある。だが、動機は不明。まず、高橋の弟が前田を殺る理由は今のところ見当たらない。前田が吉田が浮気して前田を殺したのならその時でないとおかしいからだ。弟は吉田と別れることで決着をつけようとした。それに弟は前田の自宅をそもそも知らない。吉田が高橋と付き合っていたのは高橋弟の家だ。
だとすれば吉田が怪しい。吉田も高橋も前田が亡くなる時刻、アリバイがない。吉田は一人で実家にいた。高橋弟は仕事で外出しそのまま昼休憩。つまり、事件の時間帯二人は外にいた。ただ、吉田は前田の家にいたことがあり、スペアキーを作って持っていた可能性がある。だが、そこで忘れてはならないのはあのU字ロックだ。スペアキーを持っていても密室は破られない。つまり、これは二人だけじゃなく全てに言えることになる。
犯人は何故凶器を持ち帰ったのか? 指紋か入手経緯で知られたくないからなのか。突発的だったのか。しかし、現場は争った痕跡はなく現金が盗まれた痕跡もない。因みに自宅の鍵は部屋にあったとのこと。
「お前どうやってそこまで知らべられた?」
高橋は集めた情報の資料を見て驚愕していた。
「本物の探偵じゃん! いや、実は元は特殊部隊だったとか」
「いや、違うって」
「いやいや俺は絶対に信じないから。あ、でも事件を解決してくれるって信じてるからな」
「なんでだよ。事件を解決するのは警察だろ」
「しかし、こうして見るとやっぱり弟の可能性はないよな」
「まぁだろうね」
実際、弟は逮捕されたわけではない。まだ、聞き取りの段階だ。
「やっぱりお前に相談して良かったよ」
「いやいや、実際まだ分かんないよ。凶器がどこへ行ったのかとか」
「でも、流石にむずいよな。密室とか」
「そうだね」
「そこは謎解きだろ探偵」
「だから探偵じゃないって」
「いや、そこをなんとか!」
「なんか都合がいいなぁ」
「やきとり(居酒屋)奢ります」
「よし、分かった」
「それで、なにか分かりそうなのか?」
「えーと、それなんだけど気になる点が幾つかあって、その中で一番気になったのが家族にメッセージを送ったってことで、もし犯人が自殺に見せかけるなら凶器を持ち去ったりはしない筈なんだよね」
「確かに。それじゃ……」
「多分前田って人は本当に今から死のうとしたんだと思うよ」
「だけどその前に犯人が来たということ?」
「いや、多分だけど前田って人は本当に自殺したんだと思う。その後やって来た誰かが縄か紐を解いた。理由は分からない。それに密室のトリックも」
「これからどうする?」
「一番は吉田って人に話が聞けることと、無理を承知でいえば現場が見れたらなにか分かるかもしれない」
「両方かなり難しい要求だね。とりあえず吉田の件は弟に話してみる」
「そしたらなにか進展あったらまたラインで教えてよ」
「分かった」
それから三日後、高橋から自分にラインがきた。内容は吉田と会うことが出来たが門前払いで結局話すことが出来なかったというものだった。
話せたら良かったのだがまぁなんとなくそうなるだろうなという気がしていた。
吉田にとって前田の死はショックだった筈だ。更に警察から色々と聞かれただろうから気持ちの整理も出来ていないだろう。多分時間はかかる。
一つ、高橋には言っていなかったが確信していることがある。吉田が前田を殺害することはかなり厳しいというより出来ないだろう。男を相手に女性一人の力で絞殺させるのは大変だからだ。それよりかは背後から後頭部にかけ鈍器なようなもので殴る方が可能性はあるだろう。
となると前田は吉田にも連絡をした可能性がある。吉田は家族同様家へ向かう。家族より早く着いた吉田は自殺している彼を見て、まず彼を降ろすだろう。だが、既に手遅れ。本来ならそこで警察に通報するだろう。だが、実際は前田はそれまで生きていたかのように座らされ、テーブルにうつ伏せていた。そして鍵をしめ、U字ロックをトリックを使って閉じた。
何故?
考えられるのは自殺ではなく他殺だと思わせる為。鍵を閉めたのはアリバイのない自分が疑われてしまうから。そしてU字ロックしたのはスペアキーを持っていると密室を疑われてしまうから。しかし、他殺に見せる理由は不明。
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