5 / 5
行方不明男児
01
しおりを挟む
私がいる高校は駅から徒歩10分弱のところで校舎には横断幕でバスケ部優勝と道路に向かって宣伝していた。かくいう私もそのバスケ部だが人数が多くレギュラーどころかベンチにすら入る隙がなく、いつも応援席で応援しているだけの部員だった。その割に髪は部則に従い耳出しおでこ丸出しの刈り上げベリーショートだ。高校に入るにあたり肩まであった髪をバッサリ切るのは勇気がいた。中には泣いてた子もいたけど、直ぐにその髪型にも慣れた。朝練は当たり前、学校終わりの部活も練習メニューが厳しく、部活が終わった時にはどっと疲れが出てくたくたになりながら寮へと戻る。その後の宿題や勉強は疲労と眠気との戦いであまり頭には入らなかった。そうでなくても流石に自分には才能も勉強も向いていないことは気づいていた。恐らくでもなくレギュラー入りは不可能で、勉強も大きな開きがあることを感じていた。頑張っても精々凡人。まぁ、しょうがないかなって思っている。今後の事を考えたら私は大学へ行くのは向いていない気がする。大学より簡単な専門学校とか何か就職に直接身につく系の進学の方がいいと思う。親にこれを相談すると、あんたは大人になって何になりたいわけ? と聞き返された。そんなの分からない。それをいうとそんなの自分で考えなさいよと跳ね返される。当然といえば当然か。幾つか専門学校や大学のパンフレットを学校は無料で配布している。私はその中から介護か保育を見ていた。どれも世間からはブラックに位置づけられた職業だ。でも工場勤務のような流れ作業的な仕事には就きたくはなかった。それに高卒の就職窓口は厳しいというのは先生の口から新年度の集会で早々に言われたことだ。そんな激しい競争するより将来を考え資格を考えた方が無難な気がする。
漠然とした将来計画といわれればそうだし、そこに不安を感じないわけではない。でも、将来に不安を感じていない人なんているんだろうか。
大分市で起きた大規模火災で突然家を失った人やそうでなくても物価高とか社会不安を抱えているように、生きにくい世の中は不安ばかりが増えてそればっかり目立ってしまう。
だから、あまり不安から遠ざかるように目を背けてしまう。将来よりどちらかというと今派。未来志向より現在志向。そんな私は水口春香。低身長、視力はやや弱め、そばかす顔で彼氏無し(部則でそもそも禁止)の高校三年生だ。つまり、今年の夏で引退。そして卒業をむかえる。
そんな私が事件に巻き込まれたのは一学期のテスト前のこと。大学受験を目指すならテストに関わらずずっと勉強しているところだが、私は勉強から背を向けていた。つまり、部活動がない日曜日に私は友達と一緒に駅前にあるゲーセンでUFOキャッチャーをしていた時だ。その時はそこまで欲しいとは思わなかったけど雰囲気的に目がいったアニメキャラの人形獲得にローテーションで格闘していた。小銭を入れ、メロディーが流れると同時に矢印ボタンが点灯し、皆で「そこそこ」とか言い合って中々とれないという状況に皆半分諦めかけていた。とはいえ、それまでにだいぶ課金していて、ここで退いたら負けな気がして中々皆切り上げようとはしなかった。そうこうしているうちに小銭が無くなり、私は辺りを見回し両替機を見つけた。
「ごめん、ちょっと両替してくる」
私はそう言って友達を置いて一人両替機へと向かった。すると、別の高校生男子達が来てしまい、私はその後ろに並んだ。両替機はその一台しかなかった。
男子達の両替が終わると自分は千円札を挿入し百円へと両替する。そして出てきた小銭を取ると私は足早に皆の元へ向かった。
その時だった。見知らぬ女性が「カイト」と呼びながらゲーセン内を走りながら回っていた。見た感じカイトは女性の子どもだろう。母親と子どもがはぐれることはあるあるな気がする。
すると、一緒に来ていた友達がその女性に声を掛けた。
「どうしましたか?」
「あの、息子のカイトがいなくなって」
「分かりました。一緒に探しましょう」
「ありがとうございます」
店員も呼び状況を説明してから皆で男の子を探し回った。だが、不思議なことにどこを探してもその男の子の姿はなかった。
どうやら小学生二年生の男子は両親と映画の帰りにゲーセンで遊んでいて、カイトは急にトイレに行きたくなり父親と一緒にトイレへ行った。父親も丁度トイレが行きたくなり個室へと入りカイトは先にトイレを終え先に一人で母親の元へ戻ると言ってそれっきり姿が見えなくなった。
トイレとゲーセンは同じフロアの一番近くにあり、ゲーセンまで迷子になることはまずない。だからいるとしたらゲーセンのどこかだが、社員がゲーセンの防犯カメラを見てもその男の子の姿は見当たらなかった。つまり、ゲーセンに男の子は戻っていないということになる。
急いで捜索範囲を広げその男の子を探し始めた。親は駅前交番へ走り状況を説明して警察も捜索へと加わった。だが、建物の外周辺を含めその男の子の姿を見つけることは出来なかった。
私達は空が暗くなるまでその男の子の捜索を手伝った。
「カイト君どこー? いたら返事してー」
必死にその子の名前を呼び続けた。駅から次々と人が増え始めサラリーマンがなんだなんだと私達に目を向ける。だが、サラリーマンが私達に声を掛け手伝うことはなかった。
結局、時間となり私達は警察と大人達に任せ寮へと戻った。
寮のテレビで行方不明になった男の子についてニュースになってないか、ずっとニュース番組にし続けていたが、ニュースになることはその日はなかった。
ニュースになったのは行方不明になって2日後の昼の県内ニュースだった。それまで報道機関は何をしていたのかと怒りを覚えるが、しかし実のところ行方不明者は高齢者含め日常化している。つまり、殺人や事故といった大きなニュースにならない限り優先度は低いということだろうか。そう思うと合理性というのはクソだと思う。あの両親の思いを考えたら…… 。
そこで私達はあの両親や子どもの為にも部活動が終わったら可能な時間の範囲でその男の子の捜索を手伝うことに決めた。もう、テスト勉強とかしている場合ではない!
その頃、宮沢はスーパー銭湯にいた。平日の午前は年寄りばかりで若いのはあんまりいなかった。当然といえば当然か。とはいえ、最近はサ活が流行っているらしい。年寄りもサ活を楽しんでいる。私はどちらかというとサウナは別にといったところだ。むしろ、足を伸ばせるお風呂だろう。露天風呂の湯気は先に入っている中年以上のおっさんの眼鏡を曇らせていた。スーパー銭湯によってはいろんな湯があるところもあるが、ここはシンプルに大浴場と露天と檜風呂に泡の出る風呂があるくらいだ。大浴場から外へ出ると外の風が少し気持ちいい。その足で露天風呂へと入ってゆっくり時間を忘れくつろぐ。
それからのぼせる前に出て脱衣所へ向かうと、その脱衣所で変わった人がいてパンツを履いたあとに靴下を履いている人がいた。着る順番は人それぞれだが大抵ズボンだろうとそのときは思った。
私はスーパー銭湯が貸出している作務衣に着替え食事処に向かった。そこには大型テレビがあって今はニュースが流れている。男性アナウンサーが原稿を読み上げながら映像は駅前を映し出した。そのニュースとは小学生の男子児童が行方不明で捜索しても依然見つからないという話だった。
海外では子どもの行方不明は国によっては深刻な社会問題になる程に多いところもある。だが、それらに比べ日本はまだ安心だと思っている人は多いだろうが、実際未解決の失踪事件はこの国にはある。そして、その失踪事件には不可解な点がある。
ゲーセンの途中でトイレに行き、そこから行方不明になるなんてあり得るだろうか? 普通、どこにでも防犯カメラがあり追跡は出来そうなものだ。にも関わらず行方を追えないのは防犯カメラにその子が映ることなく消えてみせたということになるだろう。そんなこと自然に起きる筈もないだろう。
これは誘拐事件だ。
私はニュースを見ながらそう直感した。
漠然とした将来計画といわれればそうだし、そこに不安を感じないわけではない。でも、将来に不安を感じていない人なんているんだろうか。
大分市で起きた大規模火災で突然家を失った人やそうでなくても物価高とか社会不安を抱えているように、生きにくい世の中は不安ばかりが増えてそればっかり目立ってしまう。
だから、あまり不安から遠ざかるように目を背けてしまう。将来よりどちらかというと今派。未来志向より現在志向。そんな私は水口春香。低身長、視力はやや弱め、そばかす顔で彼氏無し(部則でそもそも禁止)の高校三年生だ。つまり、今年の夏で引退。そして卒業をむかえる。
そんな私が事件に巻き込まれたのは一学期のテスト前のこと。大学受験を目指すならテストに関わらずずっと勉強しているところだが、私は勉強から背を向けていた。つまり、部活動がない日曜日に私は友達と一緒に駅前にあるゲーセンでUFOキャッチャーをしていた時だ。その時はそこまで欲しいとは思わなかったけど雰囲気的に目がいったアニメキャラの人形獲得にローテーションで格闘していた。小銭を入れ、メロディーが流れると同時に矢印ボタンが点灯し、皆で「そこそこ」とか言い合って中々とれないという状況に皆半分諦めかけていた。とはいえ、それまでにだいぶ課金していて、ここで退いたら負けな気がして中々皆切り上げようとはしなかった。そうこうしているうちに小銭が無くなり、私は辺りを見回し両替機を見つけた。
「ごめん、ちょっと両替してくる」
私はそう言って友達を置いて一人両替機へと向かった。すると、別の高校生男子達が来てしまい、私はその後ろに並んだ。両替機はその一台しかなかった。
男子達の両替が終わると自分は千円札を挿入し百円へと両替する。そして出てきた小銭を取ると私は足早に皆の元へ向かった。
その時だった。見知らぬ女性が「カイト」と呼びながらゲーセン内を走りながら回っていた。見た感じカイトは女性の子どもだろう。母親と子どもがはぐれることはあるあるな気がする。
すると、一緒に来ていた友達がその女性に声を掛けた。
「どうしましたか?」
「あの、息子のカイトがいなくなって」
「分かりました。一緒に探しましょう」
「ありがとうございます」
店員も呼び状況を説明してから皆で男の子を探し回った。だが、不思議なことにどこを探してもその男の子の姿はなかった。
どうやら小学生二年生の男子は両親と映画の帰りにゲーセンで遊んでいて、カイトは急にトイレに行きたくなり父親と一緒にトイレへ行った。父親も丁度トイレが行きたくなり個室へと入りカイトは先にトイレを終え先に一人で母親の元へ戻ると言ってそれっきり姿が見えなくなった。
トイレとゲーセンは同じフロアの一番近くにあり、ゲーセンまで迷子になることはまずない。だからいるとしたらゲーセンのどこかだが、社員がゲーセンの防犯カメラを見てもその男の子の姿は見当たらなかった。つまり、ゲーセンに男の子は戻っていないということになる。
急いで捜索範囲を広げその男の子を探し始めた。親は駅前交番へ走り状況を説明して警察も捜索へと加わった。だが、建物の外周辺を含めその男の子の姿を見つけることは出来なかった。
私達は空が暗くなるまでその男の子の捜索を手伝った。
「カイト君どこー? いたら返事してー」
必死にその子の名前を呼び続けた。駅から次々と人が増え始めサラリーマンがなんだなんだと私達に目を向ける。だが、サラリーマンが私達に声を掛け手伝うことはなかった。
結局、時間となり私達は警察と大人達に任せ寮へと戻った。
寮のテレビで行方不明になった男の子についてニュースになってないか、ずっとニュース番組にし続けていたが、ニュースになることはその日はなかった。
ニュースになったのは行方不明になって2日後の昼の県内ニュースだった。それまで報道機関は何をしていたのかと怒りを覚えるが、しかし実のところ行方不明者は高齢者含め日常化している。つまり、殺人や事故といった大きなニュースにならない限り優先度は低いということだろうか。そう思うと合理性というのはクソだと思う。あの両親の思いを考えたら…… 。
そこで私達はあの両親や子どもの為にも部活動が終わったら可能な時間の範囲でその男の子の捜索を手伝うことに決めた。もう、テスト勉強とかしている場合ではない!
その頃、宮沢はスーパー銭湯にいた。平日の午前は年寄りばかりで若いのはあんまりいなかった。当然といえば当然か。とはいえ、最近はサ活が流行っているらしい。年寄りもサ活を楽しんでいる。私はどちらかというとサウナは別にといったところだ。むしろ、足を伸ばせるお風呂だろう。露天風呂の湯気は先に入っている中年以上のおっさんの眼鏡を曇らせていた。スーパー銭湯によってはいろんな湯があるところもあるが、ここはシンプルに大浴場と露天と檜風呂に泡の出る風呂があるくらいだ。大浴場から外へ出ると外の風が少し気持ちいい。その足で露天風呂へと入ってゆっくり時間を忘れくつろぐ。
それからのぼせる前に出て脱衣所へ向かうと、その脱衣所で変わった人がいてパンツを履いたあとに靴下を履いている人がいた。着る順番は人それぞれだが大抵ズボンだろうとそのときは思った。
私はスーパー銭湯が貸出している作務衣に着替え食事処に向かった。そこには大型テレビがあって今はニュースが流れている。男性アナウンサーが原稿を読み上げながら映像は駅前を映し出した。そのニュースとは小学生の男子児童が行方不明で捜索しても依然見つからないという話だった。
海外では子どもの行方不明は国によっては深刻な社会問題になる程に多いところもある。だが、それらに比べ日本はまだ安心だと思っている人は多いだろうが、実際未解決の失踪事件はこの国にはある。そして、その失踪事件には不可解な点がある。
ゲーセンの途中でトイレに行き、そこから行方不明になるなんてあり得るだろうか? 普通、どこにでも防犯カメラがあり追跡は出来そうなものだ。にも関わらず行方を追えないのは防犯カメラにその子が映ることなく消えてみせたということになるだろう。そんなこと自然に起きる筈もないだろう。
これは誘拐事件だ。
私はニュースを見ながらそう直感した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる