雨を降らす男

アズ

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 目が覚めると、そこは病室だった。点滴に繋がれた自分の腕を見て、ちょっと整理が追いつかなかった。
 何があった?
 すると、母が俺の顔を覗いた。
「目が覚めた?」
「なんで俺、病院にいるの?」
「あんた、覚えてないの? 塾の授業中に倒れたのよ」
 そう言われても自分は全く覚えていなかった。
「最近、頑張ってるなって思ってたけど、頑張り過ぎよ」
 どうやら、受験勉強で俺の躰はダウンしていたらしい。なんとも自分は弱いんだ。
「少し休んでな。先生と話ししてくるから」
 母はそう言って俺の視界から消えた。
 俺は天井を見た。
 力が出ない。
 何で、こんなに自分は弱いんだろう。そんなに頑張ってたか? むしろ、少なくとも皆はもっとやっていた。
 それとも、これが勉強アレルギーなのか。だとしたら、俺の勉強嫌いは相当なものだ。
 もしかすると、あの夢は自分の体調の暗示だったのかもしれない。
 意外と当たっていたのか。いや、自分の躰のことだ。あの夢は兆候だったのだろう。多分、知らない間に溜まっていたストレスなのだろう。
 普段してこなかったツケを急いで取り戻そうとして、それが良くなかったのかもしれない。にしてもやはり弱すぎる。やはり、これは勉強アレルギーだ。



 退院は速やかだった。
 それからはあまり無理しない勉強法をとった。



◇◆◇◆◇



 それから数年後。
 俺は志望校だった大学を無事卒業し、就活も無事終えた。
 就職お祝いに、母の手料理の豚のすき焼きを食べた。
 俺は兄弟喧嘩や母との意見の食い違いぐらいはあっても、母の手料理に文句を言ったことはなかった。
 そして、例の夢はたまに今でも見る。
 オートバイに跨り、雨を降らしていた。
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