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濡れたアスファルトの上を蛇のように這ってようやく辿り着いた無精髭を生やした不潔な男は洗い流される雨に濡れながら玄関のドアに指を伸ばし、そこで力を失い倒れ込んだ。三階建の古びたアパート前にはその男の者とされる血が流れていた。時刻は夜の八時過ぎ。そのまま男の死亡時刻となった。
一週間後。未だにアパート前には目立つ黄色の規制線が引かれ、日常との境界線をつくっている。死亡したのは後藤俊秀40歳、独身、会社員。死因は腹部に刺されたことによる脾動脈損傷、腹腔内出血によるもの。
警察による全力の捜査をもってしても犯人の特定には未だ至らず。
当然、その結果によるバッシングは相当のものだった。
被害者のアパートから徒歩10分圏内には小学校がある。その学校に通う児童にも影響を与えた。
早い平穏を取り戻すべく警察は更に捜査員を増やしたが、そもそも被害者は近所がなく家族との付き合いも数年ない。仕事場では孤立していてトラブルこそないが、後藤は孤独だった。防犯カメラは住宅街には無く、かなり早い段階で捜査は難航しそうだった。
篠原愛佳の自宅はその事件のあったアパートから川を挟んですぐの場所にあった。川といってもそんな大きなものではない。川沿いには葉桜が見え、桜が川に散ったのが流れに乗って泳いでいる。
昔この辺りは畑や田んぼばかりだったが、後継者がいなくなりどんどん埋め立てられ、住宅がぽつぽつと建つようになった。人口減少の世の中で珍しい光景の背景には海辺に住んでいた人達がいつ来るか分からない地震におびえ海から離れた地域に移り住むブームが起きていた。
だから、新しい家や新しい人達が増え、最近治安もなんだか悪くなっていった気がしていた。そしたらあの事件。古くからいる人達は最近人が移り住んできたからだと嫌気を差している。
自分もバイクの音やアスファルトを走るスケボーの音とか、そういう音の治安が悪くなったと感じていた。
篠原の真新しいアパートには綺麗な白い漆喰の壁で三階建て構造。向こうのおんぼろアパートとは全然違う。川を挟んで見えるとはいえ、部屋から見えるというわけではない。ドアにある小さな窓からちょっと見えるぐらいだ。それでも目撃者がいないか必死の警察は聞き込みに来たが、当然私は知らない。
でも、あの事件以降気になってたまに小さな窓から外の様子を眺める。日中はパトロール強化しているパトカーが通ったり配達のバイクが走っていったりするぐらいで朝の犬の散歩姿すら見ない。多分、事件のせいかもしれない。夜は車が走るぐらいで夜道を歩く人はやはりいない。
ドアは帰ったら必ず閉めている。オートロックではない為、チェーンも必ずつけるようにしている。
場所は二階。203号室だ。風呂とトイレは別々、ワンルームにクローゼットあり。部屋の窓はベランダ側のみ。そこからの外は認知症のお婆さんが住んでいる平屋の木造住宅。たまに、そのお婆さんが道に向かって叫んでいる。
「ドロボー!」
勿論、泥棒が入ったわけではない。あのお婆さんの妄想だった。あそこの家の家族については知らない。見たことはない。
でも、夜は静かだから今のところ不満という不満はない。日中は学校かバイトだし、むしろあのお婆さん大丈夫かと少し心配する。でも、ここに住んで三年になるが、今のところ大丈夫そうだ。
来年度は自分も四年生になる。就活して仕事に就いたらこのアパートから別のところへ引っ越すかもしれない。
部屋の中には生活に必要な最低限の家具ぐらいであまり物がごちゃごちゃする程多くはない。むしろオシャレ系には無縁。色の統一やこだわり家具は無いし、そもそも家に招待するなんてことは一度も無かった。友達はいるけど、家にお邪魔とかはお互いしなかった。友達の家に最後に上がらせてもらったのは高校生の時で、その時は闇鍋パーティーをした。ほとんど残しちゃったけど。今は外でカラオケとかそんな感じ。
その友達からは殺人事件の近場ということもあって心配してくれる。親も犯人が捕まるまで実家に戻る? と言ってくれるし、基本私の周りは皆優しかった。
私は皆に大丈夫とラインで返して、でも早く捕まって欲しいと思った。
でも、犯人は中々捕まったりはしなかった。
久しぶりに降った一週間前の雨からまた暫くずっと雨が降ることはなく、外はカサついている。でも、天気予報だと明日にはまたまとまった雨が降るという予報だった。そんなまとまんなくても雨ぐらい分散して降ってよと思ったりもするけど、そんなこと言ったってお天道様の気分次第なのは分かっていた。だから今日中にスーパーで買い物を済ませておこうとした。アパートからシルバーのママチャリで近くのスーパーに行くと、店内のレジ前には長い列が幾つも並んでいた。皆考えることは同じみたいだった。
買い物籠を持ってカップ麺コーナーで新商品には目を向けず長年棚に居座る重鎮どもを手に取って次々と入れていく。因みにカップ麺で好きなのはシーフード。カップ焼きそばはカロリーが高いと知ってから買ったことはない。
米はまだ家にあるので、今日のおかずを考えシチューが浮かんだので、必要なものを籠へと入れていく。
そして、パンコーナーにいきパンも買っていく。
買う物を入れるだけ入れると、買い物籠を持つ手が重さで食い込んでくる。私は足早に列の後ろにつき、順番がくるまでスマホでインスタを開き暇を潰す。ニュース関連やインフルエンサーのどうでもいいのに混じってAI動画や猫など可愛い系の動物、音楽系が流れた。
SNSというのは不思議でただ見ているだけなのにあっという間に時間が流れていく。でも、決して集中力がそこに向いていたという感じはしない。だって今見たやつのほとんどを忘れるから。沢山ある数に対してっていう意味だけど。
自分の番に回ってくると顔にシミのあるおばさんがレジ袋をどうするかと訊いてきたので私は大丈夫ですと答える。マイバッグは常に持ち歩いている。勿論、定期的にちゃんと洗っている。
レジ袋が有料じゃなきゃマイバッグなんて意識は無かったと思う。でも、環境というなら今更な気もする。むしろ目には見えない細かなプラスチックが空気に含んで、それを私達が毎回意識しながらじゃあ呼吸しているのかっていうと、そんなことまで意識してたら息ができなくなって窒息してしまう。火を使わないこともガソリンを一滴も使わないことも牛肉を食べないというのも、例えにならないでしょ。
私は当然知らない。レジ袋が有料化になって海のプラスチックがどれだけ減ったのか。多分、皆知らない。
買い物を終え直帰しアパートの隣にある駐輪場に自転車をとめバッグを籠から持ち上げると、頑張って階段に向かい登る。足が重い。外の風が川のある方から吹いた。葉桜の桜が散って一部アスファルトの上に落ちる。すると突然ザーと雨が降り始めた。
「嘘っ!?」
ベランダには洗濯物が干したままだ。
「天気予報の嘘つき。今日は降らないんじゃなかったの」
文句を言いながら急いで部屋に戻り、買い物バッグを玄関に置いてダッシュしてベランダに向かい、窓を開けて洗濯物を取り込んだ。
洗濯物はまだ雨が降り始めて直ぐだったのでなんとか間に合った。
「本当天気予報なんてアテにならないんだから」
私は洗濯物を無事救出し終えると窓を閉め鍵を掛けてレースを掛けた。それから玄関に戻り買い物バッグを取りに行くと、玄関の鍵をまだ掛けていないことに気づいた。鍵のつまみを人差し指と親指でつまみ回す。
ガチャ
鍵が閉まりチェーンをかける。それから最近はクセになっているけど、ドアの小さな窓に近づき、そこを覗いた。
「………」
なにもない。普通の光景。うん、大丈夫。なんか自分を安心させる儀式的に今はなっている。多分、やっぱり怖いんだ。
私はバッグを持って振り返った。
その時だった。なんかよく分からないけれど凄く、凄くなんか嫌な予感がした。
背筋がゾワゾワしたとか背筋が凍るとかじゃなくて、なんか気配的なもの。
私はゆっくり気づかれないようにまた小さな窓を覗いた。
窓の外は変わらず通路と、向こう側に古びたアパートが見えるだけだ。うん、誰もいない。大丈夫。
私はゆっくりドアから離れた。
一週間後。未だにアパート前には目立つ黄色の規制線が引かれ、日常との境界線をつくっている。死亡したのは後藤俊秀40歳、独身、会社員。死因は腹部に刺されたことによる脾動脈損傷、腹腔内出血によるもの。
警察による全力の捜査をもってしても犯人の特定には未だ至らず。
当然、その結果によるバッシングは相当のものだった。
被害者のアパートから徒歩10分圏内には小学校がある。その学校に通う児童にも影響を与えた。
早い平穏を取り戻すべく警察は更に捜査員を増やしたが、そもそも被害者は近所がなく家族との付き合いも数年ない。仕事場では孤立していてトラブルこそないが、後藤は孤独だった。防犯カメラは住宅街には無く、かなり早い段階で捜査は難航しそうだった。
篠原愛佳の自宅はその事件のあったアパートから川を挟んですぐの場所にあった。川といってもそんな大きなものではない。川沿いには葉桜が見え、桜が川に散ったのが流れに乗って泳いでいる。
昔この辺りは畑や田んぼばかりだったが、後継者がいなくなりどんどん埋め立てられ、住宅がぽつぽつと建つようになった。人口減少の世の中で珍しい光景の背景には海辺に住んでいた人達がいつ来るか分からない地震におびえ海から離れた地域に移り住むブームが起きていた。
だから、新しい家や新しい人達が増え、最近治安もなんだか悪くなっていった気がしていた。そしたらあの事件。古くからいる人達は最近人が移り住んできたからだと嫌気を差している。
自分もバイクの音やアスファルトを走るスケボーの音とか、そういう音の治安が悪くなったと感じていた。
篠原の真新しいアパートには綺麗な白い漆喰の壁で三階建て構造。向こうのおんぼろアパートとは全然違う。川を挟んで見えるとはいえ、部屋から見えるというわけではない。ドアにある小さな窓からちょっと見えるぐらいだ。それでも目撃者がいないか必死の警察は聞き込みに来たが、当然私は知らない。
でも、あの事件以降気になってたまに小さな窓から外の様子を眺める。日中はパトロール強化しているパトカーが通ったり配達のバイクが走っていったりするぐらいで朝の犬の散歩姿すら見ない。多分、事件のせいかもしれない。夜は車が走るぐらいで夜道を歩く人はやはりいない。
ドアは帰ったら必ず閉めている。オートロックではない為、チェーンも必ずつけるようにしている。
場所は二階。203号室だ。風呂とトイレは別々、ワンルームにクローゼットあり。部屋の窓はベランダ側のみ。そこからの外は認知症のお婆さんが住んでいる平屋の木造住宅。たまに、そのお婆さんが道に向かって叫んでいる。
「ドロボー!」
勿論、泥棒が入ったわけではない。あのお婆さんの妄想だった。あそこの家の家族については知らない。見たことはない。
でも、夜は静かだから今のところ不満という不満はない。日中は学校かバイトだし、むしろあのお婆さん大丈夫かと少し心配する。でも、ここに住んで三年になるが、今のところ大丈夫そうだ。
来年度は自分も四年生になる。就活して仕事に就いたらこのアパートから別のところへ引っ越すかもしれない。
部屋の中には生活に必要な最低限の家具ぐらいであまり物がごちゃごちゃする程多くはない。むしろオシャレ系には無縁。色の統一やこだわり家具は無いし、そもそも家に招待するなんてことは一度も無かった。友達はいるけど、家にお邪魔とかはお互いしなかった。友達の家に最後に上がらせてもらったのは高校生の時で、その時は闇鍋パーティーをした。ほとんど残しちゃったけど。今は外でカラオケとかそんな感じ。
その友達からは殺人事件の近場ということもあって心配してくれる。親も犯人が捕まるまで実家に戻る? と言ってくれるし、基本私の周りは皆優しかった。
私は皆に大丈夫とラインで返して、でも早く捕まって欲しいと思った。
でも、犯人は中々捕まったりはしなかった。
久しぶりに降った一週間前の雨からまた暫くずっと雨が降ることはなく、外はカサついている。でも、天気予報だと明日にはまたまとまった雨が降るという予報だった。そんなまとまんなくても雨ぐらい分散して降ってよと思ったりもするけど、そんなこと言ったってお天道様の気分次第なのは分かっていた。だから今日中にスーパーで買い物を済ませておこうとした。アパートからシルバーのママチャリで近くのスーパーに行くと、店内のレジ前には長い列が幾つも並んでいた。皆考えることは同じみたいだった。
買い物籠を持ってカップ麺コーナーで新商品には目を向けず長年棚に居座る重鎮どもを手に取って次々と入れていく。因みにカップ麺で好きなのはシーフード。カップ焼きそばはカロリーが高いと知ってから買ったことはない。
米はまだ家にあるので、今日のおかずを考えシチューが浮かんだので、必要なものを籠へと入れていく。
そして、パンコーナーにいきパンも買っていく。
買う物を入れるだけ入れると、買い物籠を持つ手が重さで食い込んでくる。私は足早に列の後ろにつき、順番がくるまでスマホでインスタを開き暇を潰す。ニュース関連やインフルエンサーのどうでもいいのに混じってAI動画や猫など可愛い系の動物、音楽系が流れた。
SNSというのは不思議でただ見ているだけなのにあっという間に時間が流れていく。でも、決して集中力がそこに向いていたという感じはしない。だって今見たやつのほとんどを忘れるから。沢山ある数に対してっていう意味だけど。
自分の番に回ってくると顔にシミのあるおばさんがレジ袋をどうするかと訊いてきたので私は大丈夫ですと答える。マイバッグは常に持ち歩いている。勿論、定期的にちゃんと洗っている。
レジ袋が有料じゃなきゃマイバッグなんて意識は無かったと思う。でも、環境というなら今更な気もする。むしろ目には見えない細かなプラスチックが空気に含んで、それを私達が毎回意識しながらじゃあ呼吸しているのかっていうと、そんなことまで意識してたら息ができなくなって窒息してしまう。火を使わないこともガソリンを一滴も使わないことも牛肉を食べないというのも、例えにならないでしょ。
私は当然知らない。レジ袋が有料化になって海のプラスチックがどれだけ減ったのか。多分、皆知らない。
買い物を終え直帰しアパートの隣にある駐輪場に自転車をとめバッグを籠から持ち上げると、頑張って階段に向かい登る。足が重い。外の風が川のある方から吹いた。葉桜の桜が散って一部アスファルトの上に落ちる。すると突然ザーと雨が降り始めた。
「嘘っ!?」
ベランダには洗濯物が干したままだ。
「天気予報の嘘つき。今日は降らないんじゃなかったの」
文句を言いながら急いで部屋に戻り、買い物バッグを玄関に置いてダッシュしてベランダに向かい、窓を開けて洗濯物を取り込んだ。
洗濯物はまだ雨が降り始めて直ぐだったのでなんとか間に合った。
「本当天気予報なんてアテにならないんだから」
私は洗濯物を無事救出し終えると窓を閉め鍵を掛けてレースを掛けた。それから玄関に戻り買い物バッグを取りに行くと、玄関の鍵をまだ掛けていないことに気づいた。鍵のつまみを人差し指と親指でつまみ回す。
ガチャ
鍵が閉まりチェーンをかける。それから最近はクセになっているけど、ドアの小さな窓に近づき、そこを覗いた。
「………」
なにもない。普通の光景。うん、大丈夫。なんか自分を安心させる儀式的に今はなっている。多分、やっぱり怖いんだ。
私はバッグを持って振り返った。
その時だった。なんかよく分からないけれど凄く、凄くなんか嫌な予感がした。
背筋がゾワゾワしたとか背筋が凍るとかじゃなくて、なんか気配的なもの。
私はゆっくり気づかれないようにまた小さな窓を覗いた。
窓の外は変わらず通路と、向こう側に古びたアパートが見えるだけだ。うん、誰もいない。大丈夫。
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