神の行方

アズ

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 塾の帰りに必ずあるのがトンネルである。それは不気味な感じがして日の落ちた夜でも十分暑い日でも、そのトンネルを通る時だけは何故か不思議と背筋に寒気が走り、気づいたら鳥肌が立っているのだ。幽霊を見たことはないし、信じたくはないが、その長いトンネルは本当にいても不思議ではなかった。だが、そのトンネルを抜けなければ家へは辿り着くことが出来ない。だから塾のある日は夜のトンネルを渋々全速力で突っ切るのだ。オレンジ色の照明に、この時間帯は車の交通量も少ない。古いトンネルはよく響き、雨の日の夜は特に最悪だ。だから、梅雨の時期は本当に嫌になる。しかも長いから余計に怖い。そして、何故かトンネルの中に入ると出口が妙に遠く感じ更に長く感じるのだ。とはいえ、このトンネルについていくら調べても事故があったとかそういったことはない。なのに、何故高校になってもまだこんなに怖く感じるのか。
 この日もやはり妙に長く感じた。それがようやく抜けると、早くトンネルから離れたいが為に暫くは全速力のまま走り続けた。
 息が苦しくなり、足が重くなるとスピードを落としコンビニ前を通過する。コンビニの照明を見るとそこでいつもほっとした。こんなことなら、塾を変えたいと思ったことは何度かある。だけど、結局親には言い出せず、毎回あのトンネルを怖い思いをしながら俺は毎回コンビニの光でほっとしていた。




 翌日。全校集会が行われた。夏休みに向け注意点と校長の子守唄のような話しを聞かされた。校長先生はなんでどの学校の校長もこんなに子守唄が上手いのか、日本七不思議の一つにしてもいいぐらいに驚いた。
 学校が終わりいよいよ夏休み。時代の変化だろうか、学校の宿題はこれまでの紙ではなくタブレットで全て一つにまとめられ、データを送信ていしゅつすることになっている。読書感想文だけは原稿用紙の提出になっていた。
 最後の授業も終わり次々と下校するクラスメイト。俺も帰ろうと教室を出て廊下を歩いていると、たまたま現代文の先生とばったり遭遇した。
「結局、将来何になるのか決まったのか?」
「いえ、まだです」
「相変わらずだな」
「なりたいものが見つかっても、本当になれるかは分かりませんよね? 先生仰ってたじゃないですか。なりたいものになれないことの方が多いって」
「お前の場合、単に自信がないだけだろ。お前は自分を信じてないな。自分を信じられない奴は何者にもなれないし、何者でもない」
「先生、それはずるいですよ。先生が言ったんじゃないですか」
「お前の闇はプライドが高くて、ただ失敗したくないだけだろ」
「それは誰だって失敗したくないものじゃないんですか?」
「失敗はするぞ。誰だって。お前はとりあえずなんとかなればいいと祈ってばかりで、本当は何かに向かって努力したことなんてないんじゃないのか?」
 そう言われて俺はハッとした。
 何もしていない。した覚えがなかった。
「そうやって逃げ続けるのか」
 逃げる……その言葉で国民的アニメ、エヴァを思い出す。その主人公で名台詞でネットではネタにされて、でも、あの主人公が自分にそう言い聞かせ逃げなかった、それは俺の人生の中で一度もやったことがなかったことだ。
「逃げちゃダメだ」
「そうだ。逃げるな。向き合え、自分の人生に」




 俺は真夏の熱された自転車を走らせ、同時に頭の中の思考を回転させた。ペダルを漕ぐ足が早くなるにつれ、脳内の電気がバチッと鳴る。
 蝉の鳴き声が聞こえ、青空を見上げ、額から汗が吹き出る。息が荒くなり、坂を登りきるとそこは商店街が見えてくる。近くで夏祭りの準備が行われ、看板には交通整理の予告がされてある。あの日の夏。俺は母に言ったことがある。その時初めて自分の本当のなりたい夢を語った。俺はそれを思い出した。
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