腐った林檎

アズ

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第3章 パクス

05 小さな革命の火

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 島の港から城までは石畳の道で繋がっており、それは急勾配であった。その道を荷車を押していき、アペールも海賊達と一緒にその道を歩いた。
 鎖には繋がれてはいないが、どうせ逃げ出そうにも黒い海に囲まれたこの島から脱出することは出来ない。
 城門を通り抜け、大きな城の中に入っていくと、アペールと他の子どもは地下へと向かわされた。
「とっとと急げ」
 怒号はよく響いた。地下へは螺旋で、その下は牢屋が幾つもあった。
「一列に並べ!」
 号令で全員がそれに従って動く。
「お前達はこれからこの島で訓練を受ける。兵士に育てあげる為にだ。そして、お前達はどこかの国兵士になる。分かったか」
 ニヤニヤしながら言う海賊の顔には汗が大量に出ていた。白いシャツに頭にはバンダナをしている。サンダルから見える爪は死んでいるものもあった。
 海賊なのに太っているのかとアペールは思ったが、多分恐らくは海賊の中でもそれなりの地位にいるのだろう。幹部とか。
 こんな奴でも俺達は命令に従わなきゃならない。
 船長が自分に言った言葉を思い出す。
「お前達に自由なんてない。生まれた時からそうだ。家では親が王様。お前達は奴隷。子どもは親に絶対服従だ。当然だろ? お前達は何も持っていない。だが、親はどうだ? 親は物も持っているし金だってある。お前達が今まで生きてきたのは誰のおかげだ? 今もそれは変わらない。お前達は海賊船の上にある。ここにある物だって食料だって、この船だって俺のもんだ。ほらな、お前達は何も持っちゃいない。なら、素直に奴隷でいるべきだ。逆らうもんじゃない」
 確かに、自分は何も持っていない。誰かに助けを求めなきゃ生きてはいけない。ギニャール達と離れ離れになる前もそうやって誰かの物にすがるしかなかった。
 俺達はずっと何もない。
 なら、奪ってやるまでだ。
 少年兵になるもんか。少年兵は直ぐに殺される。俺はまだ死にたくはない。



 それから、毎日殺しの特訓を受けさせられた。食事はそれなりにもらえるようになったが、それ以上に毎日の疲労の方が体にきた。
 それでも毎日続けることによって、俺は殺人マシーンへと変わっていった。
 もう、昔なんかの俺じゃない。



 夜。俺は眠ることなく、ナイフの刃を指で撫でていた。目を覚ましたのか隣にいた奴が俺の持っているナイフに驚いた。
「お前、なんでそんなもん持ってる!? バレたら大変だぞ」
「バレなきゃいいだろ」
「お前、それでどうするつもりだ?」
「勿論殺す為だ」
 これは武器だ。守る為にあるんじゃない。攻める為にあるものだ。
「何するつもりだ?」
「今に見てろ。いずれ、あのクソ海賊の船長をこの手で殺してやる」
「そんなの無理に決まってるだろ」
 無理と言われたことに腹を立てたアペールはそいつを睨んだ。恐ろしかったのか、そいつはまた寝るふりをした。
「ずっとそうしてろ」
 お前らはずっと奴隷だ。だが、俺はそうじゃない。変えてやるんだ、こんな人生を。
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