コンシャスネス

アズ

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秋と私

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 木の枝にとまっていた鳥が飛び立ち、緑の葉は色を変え、太陽はせっかちになって彼方へと日が沈む。
 秋といえば、読書の秋、芸術の秋、食欲の秋、睡眠の秋、スポーツの秋……きりがなくなりそうだ。
 スポーツといえばケントは相変わらずサッカーをしていた。
 一度、彼にサッカーで強くなれる方法を訊いたことがある。それに対する彼の答えはまず、自分を否定せず信じ続けること。毎日のトレーニング、練習をやり続けること。それが強さに変わる、だそうだ。
 今の彼はもうあの時のように生き返ろうとはもう思っていないようだ。
 ケントという名は生前の名であり、現世に確かに存在した証だ。彼が極楽にきてもその名を使い続けるのはその証を残し忘れない為だ。我がどのように生きたのか思い出す為だ。
 名は記号に過ぎないという。確かにそうかもしれない。だが、その単なる記号には色んな意味や感情があって、それが何だったのかを思い出す引き出しの目印になっている。
 仏教の世界では諸行無我という言葉がある。無我という言葉の解釈はまだ俺には難しく理解出来ないが、俺はその考えに少し反する考えを持っていて、というのも自分というのもを考えた時、自分が何者かは説明が難しいが、自分というものを考える自分が存在しているのは確かで、それはデカルトの「我思う故に我あり」に繋がると思うからだ。つまり、自分は存在していて、ただ説明が難しいだけだと思う。
 その自分が何なのか説明が難しい理由は、他者との関わりの中で色んな自分が存在し、例えば親友と関わっている自分、他人と関わる自分、家族と関わる自分、学校にいる時の自分、それらは全て同じ自分であるが、分人主義のようにそれを分人として考え説明することも出来るからだ。そうなると、分人がゼロの状態、それが無我になるのだろう。
 しかし、自分は現に存在し、それは肉体が失っても消えるわけではない。現に自分は自分を考えることができ、死は肉体から魂が解き放たれたということであって、自分が消滅することを意味するのではないのだと思うのだ。だから、死は絶望ではない。解放なんだと思う。
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