14 / 39
13
しおりを挟む
どうしてこうなったのか…… 。これ、似たようなこと前回もあったよね。
私の中学生という青春にしては明らかに道が外れている気がしてならない。
私は今、知らない金髪の男に連れられ、煙草臭い事務所のソファーに座らされている。これはまさに誘拐と言っていい。通報ものだ。
本来ならば、下校途中に太郎との約束通り彼の寺に向かっていた筈なのだ。しかし、その途中で私の横に車が急に止まると、後部座席側の扉が開き、私はその中へと引っ張られてしまったのだ。
男相手に非力な女子中学生の私では抵抗もむなしく、私はこれから何が待ち受けているのかと不安でいっぱいだった。
そこに、奥から女の人がやってくる。その人からも煙草臭がした。
「すまなかったな、強引なやり方で。なにかかわりに飲み物でも飲むか?」
「いえ、結構です。それよりなんなんですか」
「おや、知らない人に無理矢理連れ去られた割には随分素直じゃないか」
私は女の人を睨んだ。
「私を元の場所に返して下さい」
「直ぐにとはいかない。此方の話しを聞いてもらわないとね」
「嫌です。事務所の入口の扉に探偵事務所って書いてありました。なんですか、これは犯罪ですよね」
「そうか。此方の素性が分かったから、あまり怖がっていないんだな。しかし、お嬢さん。大人が君をあんな風に誘拐してきた時点で、私達がまともかどうかは分からないぞ」
「え?」
「もしかしたら、あの看板事態、表向きはってことかもしれないだろ」
すると、気を利かせた金髪の男がオレンジジュースを私の手前に置いた。
「社長、怖がらせてどうするんですか。むしろ、聞き出せなくなるじゃないですか」
「ああ、すまない、すまない。今のは忘れてくれ」
いや、無理だ。
「さて、話しだがズバリ言うと君は霊に取り憑かれてはしてないか?」
「え?」
ヤバっ、思わず本音が出てしまった。
しかし、時は遅し。社長と呼ばれた女性は私に向かってニヤリとした。
「そうだろう、そうだろう。分かっているさ。なにせ、ここは探偵事務所。表には出ていない情報を集めるのが仕事。そうでなくては仕事は務まらない。君は七不思議を体験した筈だ。そして、私の予想ではその七不思議に取り憑かれている」
「はい、そうです」
この人なら解決方法を知っているかも。
「実はね、他の七不思議についても知っているんだ」
「え?」
「そして、君のように悩んでいる子がいることも知っている。実は、私の所にその子が相談しに来てね。知っているかな、七不思議の一つ、キューピットを。駅の近くにある噴水にコインを投げて恋のお願いをすると、願いが叶うというスポットなんだが。しかし、叶う人もいれば叶わない人もいる。というか、ほとんどが叶ってはいない。だから、叶ったって言っている人も、偶然の可能性を否定出来ない。それでも、叶ったと思ってありがたいことにしている。しかし、どうだろうな。もし、そんな力があの噴水に宿っているなら、どうやって検証する? それは無理な話しだ。だから、所詮は噂にしかならない。噂以上にはならない。ああ、因みにだがキューピットは愛の神様と言われている。あの噴水に神が宿っているなんてにわかに信じ難いことだが。でも、私は信じる」
え?
「今、え?という顔をしたが、さっきも言った通り私は他の七不思議のことを知っている。そして、その全てが本当であることもね。だから、君の話しも私なら信じられる。だから、君に起こっていることをまずは私に話しをして欲しい。もし、君が話しをしてくれれば、私も私に相談してきた子の話しをしよう。どうかな?」
私は迷った。知らない人とは話しをするな。それは常識だ。しかし、その相手は私のことをよく知っている。
私は迷った挙げ句にその女性に全てを話した。
女性は本当に信じているようで、最後は満足そうな顔をしていた。まるで、大好物を腹いっぱいに食べて満足したかのように。実際は、女性は情報を取り込んだのだが。
「ちゃんと話してくれてありがとう。お礼に私も約束を守ろう。実は私に相談して来た子は噴水にあるお金を欲に負けて拾ってしまったのだ。まぁ、盗んだわけだな。しかし、直ぐに過ちに気づいた彼女は交番にそれを届けたわけだ。しかし、噴水からお金を奪ったことには間違いない。しかも、それは大金だ。一万円札。普通、一万円札を拾わない奴はいないだろう。一万円札が落ちていたら、誰しもがそこに目がいく。だから、欲に負けた依頼主の気持ちも分からなくもない。しかし、あの場所がお寺や神社ではないにしても、キューピットという神が宿り、一万円札を思いきって使ってまでお祈りしたものを取ってしまったらどうだろうか? 世間では罰当たりと言わないか? そうだろう。そして、その依頼主は呪いを受けたんだ。君とは違うね。君のは不可抗力だろ? しかし、私の依頼主は当然の報いと言っていい。しかし、だからと言って見捨てるのも私の良心が許さなくてね、仕方なく依頼主の依頼を引き受けることにしたんだ。それに、お金はちゃんと交番に届けたんだしね。さて、ここからが君と関係のある話しだ」
「?」
「君のその七不思議というのはいわゆる霊だ。君の話しでは寺の人はそれを地縛霊と言っていたようだが、その霊には色々と取り込んでしまう性質があるようだ。それは君もなんとなく理解しているようだが、私は依頼主をまず助ける為にも、依頼主の呪いを君の地縛霊に取り込んでもらおうという作戦だ」
「え!? そんなこと出来るんですか」
「それは分からない。だが、やってみる価値はある。もし、君が協力してくれたら、今度は君の呪いを解くのに協力しよう。しかも、タダで!」
いきなりタダを強調してきた。
「でも、そんなことして大丈夫ですか?」
「ああ、それについては問題ない。事故が起こらないよう専門家も呼んだ上でやるつもりだ」
金髪の男は眉をピクリと動かした。
あの社長、嘘つきやがった。
「分かりました。それじゃ、お願いします」
「よし、なら早速今夜やるぞ」
社長はワクワクしていた。まるで、祭りを楽しみにする子供みたいに。
私の中学生という青春にしては明らかに道が外れている気がしてならない。
私は今、知らない金髪の男に連れられ、煙草臭い事務所のソファーに座らされている。これはまさに誘拐と言っていい。通報ものだ。
本来ならば、下校途中に太郎との約束通り彼の寺に向かっていた筈なのだ。しかし、その途中で私の横に車が急に止まると、後部座席側の扉が開き、私はその中へと引っ張られてしまったのだ。
男相手に非力な女子中学生の私では抵抗もむなしく、私はこれから何が待ち受けているのかと不安でいっぱいだった。
そこに、奥から女の人がやってくる。その人からも煙草臭がした。
「すまなかったな、強引なやり方で。なにかかわりに飲み物でも飲むか?」
「いえ、結構です。それよりなんなんですか」
「おや、知らない人に無理矢理連れ去られた割には随分素直じゃないか」
私は女の人を睨んだ。
「私を元の場所に返して下さい」
「直ぐにとはいかない。此方の話しを聞いてもらわないとね」
「嫌です。事務所の入口の扉に探偵事務所って書いてありました。なんですか、これは犯罪ですよね」
「そうか。此方の素性が分かったから、あまり怖がっていないんだな。しかし、お嬢さん。大人が君をあんな風に誘拐してきた時点で、私達がまともかどうかは分からないぞ」
「え?」
「もしかしたら、あの看板事態、表向きはってことかもしれないだろ」
すると、気を利かせた金髪の男がオレンジジュースを私の手前に置いた。
「社長、怖がらせてどうするんですか。むしろ、聞き出せなくなるじゃないですか」
「ああ、すまない、すまない。今のは忘れてくれ」
いや、無理だ。
「さて、話しだがズバリ言うと君は霊に取り憑かれてはしてないか?」
「え?」
ヤバっ、思わず本音が出てしまった。
しかし、時は遅し。社長と呼ばれた女性は私に向かってニヤリとした。
「そうだろう、そうだろう。分かっているさ。なにせ、ここは探偵事務所。表には出ていない情報を集めるのが仕事。そうでなくては仕事は務まらない。君は七不思議を体験した筈だ。そして、私の予想ではその七不思議に取り憑かれている」
「はい、そうです」
この人なら解決方法を知っているかも。
「実はね、他の七不思議についても知っているんだ」
「え?」
「そして、君のように悩んでいる子がいることも知っている。実は、私の所にその子が相談しに来てね。知っているかな、七不思議の一つ、キューピットを。駅の近くにある噴水にコインを投げて恋のお願いをすると、願いが叶うというスポットなんだが。しかし、叶う人もいれば叶わない人もいる。というか、ほとんどが叶ってはいない。だから、叶ったって言っている人も、偶然の可能性を否定出来ない。それでも、叶ったと思ってありがたいことにしている。しかし、どうだろうな。もし、そんな力があの噴水に宿っているなら、どうやって検証する? それは無理な話しだ。だから、所詮は噂にしかならない。噂以上にはならない。ああ、因みにだがキューピットは愛の神様と言われている。あの噴水に神が宿っているなんてにわかに信じ難いことだが。でも、私は信じる」
え?
「今、え?という顔をしたが、さっきも言った通り私は他の七不思議のことを知っている。そして、その全てが本当であることもね。だから、君の話しも私なら信じられる。だから、君に起こっていることをまずは私に話しをして欲しい。もし、君が話しをしてくれれば、私も私に相談してきた子の話しをしよう。どうかな?」
私は迷った。知らない人とは話しをするな。それは常識だ。しかし、その相手は私のことをよく知っている。
私は迷った挙げ句にその女性に全てを話した。
女性は本当に信じているようで、最後は満足そうな顔をしていた。まるで、大好物を腹いっぱいに食べて満足したかのように。実際は、女性は情報を取り込んだのだが。
「ちゃんと話してくれてありがとう。お礼に私も約束を守ろう。実は私に相談して来た子は噴水にあるお金を欲に負けて拾ってしまったのだ。まぁ、盗んだわけだな。しかし、直ぐに過ちに気づいた彼女は交番にそれを届けたわけだ。しかし、噴水からお金を奪ったことには間違いない。しかも、それは大金だ。一万円札。普通、一万円札を拾わない奴はいないだろう。一万円札が落ちていたら、誰しもがそこに目がいく。だから、欲に負けた依頼主の気持ちも分からなくもない。しかし、あの場所がお寺や神社ではないにしても、キューピットという神が宿り、一万円札を思いきって使ってまでお祈りしたものを取ってしまったらどうだろうか? 世間では罰当たりと言わないか? そうだろう。そして、その依頼主は呪いを受けたんだ。君とは違うね。君のは不可抗力だろ? しかし、私の依頼主は当然の報いと言っていい。しかし、だからと言って見捨てるのも私の良心が許さなくてね、仕方なく依頼主の依頼を引き受けることにしたんだ。それに、お金はちゃんと交番に届けたんだしね。さて、ここからが君と関係のある話しだ」
「?」
「君のその七不思議というのはいわゆる霊だ。君の話しでは寺の人はそれを地縛霊と言っていたようだが、その霊には色々と取り込んでしまう性質があるようだ。それは君もなんとなく理解しているようだが、私は依頼主をまず助ける為にも、依頼主の呪いを君の地縛霊に取り込んでもらおうという作戦だ」
「え!? そんなこと出来るんですか」
「それは分からない。だが、やってみる価値はある。もし、君が協力してくれたら、今度は君の呪いを解くのに協力しよう。しかも、タダで!」
いきなりタダを強調してきた。
「でも、そんなことして大丈夫ですか?」
「ああ、それについては問題ない。事故が起こらないよう専門家も呼んだ上でやるつもりだ」
金髪の男は眉をピクリと動かした。
あの社長、嘘つきやがった。
「分かりました。それじゃ、お願いします」
「よし、なら早速今夜やるぞ」
社長はワクワクしていた。まるで、祭りを楽しみにする子供みたいに。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる