赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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「すまないな、呼び出して。君が本格的に忙しくなる前に他の七不思議を終わらせておこうと思ってな」
「いえいえ、構いませんよ」
 探偵事務所社長と佳代子の間に珈琲が出た。お互い、ブラックのままそれを飲んだ。
 場所は喫茶店。最近では喫煙ができない為に、和也はこのような店で長居することが出来ないでいた。だから、今回は彼はこの場にはあえて呼ばなかった。勿論、理由はそれだけではないが。
 社長は仕事の合間もあってスーツ姿だ。対して彼女の姿は私服だった。まぁ、彼女の休みに待ち合わせたのだから、いつまでも制服の格好をしているというわけじゃないんだろうが、なんというか、雰囲気が変わった感じがした。
 私は色んな依頼主と出会ってきた。それ以外にも付き合いはある。そんな私の経験からすると、特別な人にはその独特なオーラを放っていることがある。彼女はまさに、一般人とは違うオーラが出ている。
 顔は変わらない中学生。髪は校則で染められないにしても、お洒落を意識しているのかお化粧がされていた。中学生にしては上手いと思う。
 涼しそうなワンピース姿にどこか大人な雰囲気が少し出ている。
 こうも変わるものなのか…… 。
「しかし、まさか君が芸能界入りをするなんて驚いたよ」
「流石ですね、社長さんは。私、芸能界入りしたことまだ社長さんにはお話ししたことなかったと思いますけど。そこはやはり探偵だからですか?」
「まぁ、それはいいじゃないか。私のところには色んな情報が入ってくるんだ。それより君の歌声についてだけど、一様念の為に確認させて欲しい。あれは元からうまかったのか?」
「さぁ?」
「さぁ?」
「どっちでもいいじゃないですか」
「まぁ……今のところはそうしておこう。さて、本題に入るが」
「ああ、その前に。私、社長さんに出会えて本当に良かったって思ってるんです。本当ですよ。私、まさかこんなに自分が変われるなんて思ってもみなかったですから」
「君の場合、だいぶ変わり過ぎてるが」
「またまたご冗談を」
「冗談で言ったつもりはないんだが。私にも責任ぐらいは感じているさ」
「やめてください。そんな責任だなんて。私が変われて良かったって言ってるじゃないですか。なんで、悪いことみたいに言うんですか」
「君にとってはこれはいい事なんだな?」
「ええ、そうですよ。だから、社長には感謝してるんです。それで、本題ってことはまた七不思議を取り込めばいいんですよね?」
「いや、違う」
「違うんですか?」
「ああ。私は自分の過ちに気づいたのさ。何事にも手順がある。攻略する時にもね。よくあるだろ? ゲームで攻略する時にこの手順でなければ突破出来ないような場合が」
「私、ゲームしないんで分かりません」
「ああ、そうか。例えが悪かったな。なら、単刀直入に言おう。数日前、私は七不思議の一つ柿の木を見に行ったんだ。私なりに他の七不思議を調べていてね。3つとも実在したわけだから、他のところも可能性としては真実味が増すわけだ。当然調査をするわけだが、どうしたことかその柿の木は枯れていたんだ。まるで、生命を突然奪われたようにね」
「失ったって言わず奪われたっていう言い方をしてるあたり随分確信を持って言われますね」
「実際そうなんだろ?」
「ええ、まぁ嘘をついても仕方ありませんし、あなたには感謝していますから正直に答えますと、私はあの木に近づきあの木に宿る力を奪いました」
「やはりか」
「それを確認したくて私を呼んだんですか?」
「その結果、君自身は自覚がなくとも君の性格は変わってしまった。あの木は歪んでいるようだったろ? 実際あの木に宿る力がそうさせていたんだ」
「まるで、私の性格が歪んだみたいな言い方ですね」
「言い方は色々できる。一つに限らない。なんならオブラートに言うことだって出来る。でも、今の君じゃその言葉の本心に気づけないわけじゃないだろ? 君はもう他の子とは違うんだから」
「そうですよ、私は他の子と違う。特別なんです」
「あまり調子に乗らないことだな。これは、私からの警告として受けとめてくれ。さて、非常に残念だが君との約束は果たせそうにない」
「約束?」
「忘れたのか? 君を戻すと言っただろ」
「ああ、それならもう結構です」
「だろうな。君は今の自分に満足している」
「しない人なんています?」
「自分の努力でなった力なら満足しただろう。だが、自分ではない力を頼るのはその先は破滅しかないぞ」
「私を心配してくださってるのですね。でも、心配には及びません」
「そうか。なら、もう話すことはない。これ以上言ってもしょうがないだろうから」
「では、今度は私からいいですか? 私も七不思議についてそれなりに調べてみたんですが、どうしても七つ目が分かりませんでした。なにかご存知ですよね?」
「さぁな」
「そうですか、話すつもりはないと」
「いや、実際七不思議の七つ目は謎なんだ。七不思議と言われながら一般的に広まっているのは六つまで。最後の一つになると何故か言っていることが皆バラバラになる。最後だけ人それぞれ違っていて、どれが元々だったのか分かっていないんだ」
「そうですか。では、そういうことにしておきます。それじゃ」
 佳代子は席を立った。
 社長は彼女が店を出ていくのを座ったまま見届けると、社長の携帯電話が鳴った。見ると、画面には和也と出ていた。社長はそれに出た。
「随分とタイミングがいいんだな」
「なにを言ってるんですか。俺に佳代子をマークするよう命令したの社長じゃないですか」
「ああ、そう言えばそうだったな。それなんだが、もういいぞ」
「もういいって?」
「だから、もういいんだって。終わったんだよ、この件は」
「いやいや終わってないじゃないですか。だって、佳代子は実際にまた七不思議を取り込んだんでしょ? しかも、今度は独断で」
「ああ、そうだ。そして、これは彼女が望んだことだ」
「いいんですか? あのまま放っておいて」
「なにが言いたい」
「あの子はまだ中学生ですよ? 自分で判断できる歳じゃない。まだ、小学生を卒業したガキなんですって」
「そのガキももうじき高校生になるんじゃないか」
「またそうやって……大人が正しい道に導いてやるもんじゃないですか、こういうのって。子が間違った方向に行ったら正しい道に行けるよう親が叱ったり、学校なら教師が指導したりするもんでしょ? まさか、あの子の人生にちょっかい出したまま逃げ出すとか言わないですよね?」
「和也、お前は私が親みたいになれると思うか」
「それは……」
「知っているだろ、お前なら私の家庭の事情くらいは」
「俺は……社長のプライベートなんて詮索したりしませんよ」
「嘘が下手だな」
「……」
「まぁ、だがお前に怒られて気づかされたよ。確かに、あれはガキだ。いや、大馬鹿者だ。どうしようもなくな。全く、仕方ない。だが、やり出したのは私だ。最後までやり遂げるか」
「俺も協力しますよ」
「当たり前だ」
「え、なんでそうなるんですか」
「お前は共犯みたいなものだろ」
 それには和也もぐうの音も出なかった。
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