赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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 五十嵐社長が拳銃を用意したのにはそれなりにヤバい状況だと理解したからだ。もし、行方不明者が出ていれば神隠しのごとく世間の騒ぎになっていた筈だ。しかし、なってないあたり、行方不明ではなくこの世から消されたということだろう。それこそ、神隠しの神業に相応しい。つまり、存在をなかったことにされる。具体的には、皆の記憶からその人が消えるということだ。しかし、まだ佳代子のことは覚えている。つまり、行方不明が記憶消失ではないということ。では、消失の条件は…… 。
 まだ、佳代子を覚えているのが救いといったところだ。しかし、佳代子の中には地縛霊がいるのだぞ。地縛霊があの妖怪までも取り込んでおかしくはないが。そう、神であるキューピットにすら取り込んだあれなら。
 しかし、実際に神イコール強いというイメージは少なからず人間の想像でしかない。そうあって欲しいと思うだけで、実際どうかは私達は知らない。
 意外と妖怪がこの世で最強だったりして。それが万が一なのだ。
 社長にとっての懸念の中に、佳代子の通う中学校に一つだけ使われていない教室がある。それが妙に嫌な予感がしたのだ。
 スピードをあげて学校へ向かう赤い車。あの現象に合うには、学校から向かうルートしかない。



◇◆◇◆◇



 佳代子は女の子のわがままの通りおままごとをしていた。
 古い平屋で、母親役の女性は台所に立ち包丁を持ってまな板の上でなにかを刻んでいるふりをしていた。父親役の男性はちゃぶ台前で新聞紙を広げている。男の子役の男子は外に遊びに行っていていない。私と女の子の方は特にすることがなく、同じちゃぶ台の前に座った。
 というか、リアル過ぎる。あんまり遊んでいる感覚がない。そもそも、おままごとという遊びに大人が加わっているのが違和感でしかない。
 しかし、女の子の方はそれが普通そうだった。
「あれ、お姉さん。もしかしてこの遊びつまらない?」
 直後、包丁がまな板に勢いよく落ちてそのまま突き刺さった。
「えっと……他の遊びしない?」
「いいよ。それじゃ、今度はお姉さんが決めてよ」
「その前にあなたのことを知りたいな」
「え?」
「ほら、いきなり私達遊びだしたけど、よくよく考えたらお互いのことよく知らなかったでしょ? だから、お互いのことを話し合うってどう? できれば、女子同士で」
「いいよ」
 女の子がそう返事した直後、母親役と父親役の二人が突然消えた。いや、この子に消されたというべきか。そういうのもこの子の思い通りなのか。いや、この空間全体が彼女の思い通りなのか?
 因みに、未だに私の地縛霊は反応してくれない。
 いったいどうなっているのか。
「私、華子」
「あ、私は佳代子」
「へぇー、佳代子って言うんだ。で、もう一人は?」
「え?」
「あなたの中にいるもう一人いるでしょ?」
 知っている!?
「知ってるよ。あなたが何の目的で私に会いに来たのかも」
「なっ!?」
「でも、残念。あなたの中にいる人は私みたいな子どもを食らう趣味はないみたい」
 それで出なかったのか!?
「さて、自己紹介も済んだところだし、次はなにして遊ぶ?」
 私は答えられなかった。
「それじゃ、私が決めるね。鬼ごっこなんてどう?」
「鬼ごっこ?」
「そう。私が鬼になるの」
 そう言うと、おかっぱ頭の女の子が突然、赤鬼へと変身した。
 私は悲鳴をあげながら逃げた。
 なんで、なんで出ないのよ。
 逃げる私を赤鬼が追いかけてきた。
 捕まったら死ぬ!
 その時だった。銃声が鳴り響いたのは。
 背後を振り返ると、赤鬼は消えていた。気づいたら現実に戻っており、そして、そこには、銃を構えていた五十嵐社長がいた。
「大丈夫?」
「あ、はい」
 まさか、助けに来てくれたのか?
 しかし、そこにタイミング悪くパトカーがやってきた。
 五十嵐は銃を持っている。何故、銃を…… 。
 制服警官はパトカーから降りると、五十嵐はおとなしく手に持っていた銃を地面に置いた。
 制服警官はその彼女の手を掴み、手錠をかけた。
 現行犯逮捕だった。
 銃の所持で。



◇◆◇◆◇



 その後、五十嵐社長が捕まったことを聞いた和也は一人事務所にいた。そこには私もいた。
「お前のせいだ。なにもかも」
「ごめんなさい」
 私は謝ることしか出来なかった。当然、許されてもらえる筈がない。
 すると、事務所の扉が勝手に開いた。現れたのは五十嵐社長の兄だった。
「やぁ、残念だったねぇ。妹がまさか捕まってしまうなんて」
「よくそんなことが言えるな」
「白々しいって言いたいのか? でもさ、そんなこと言われる筋合いないよね? 実際銃を用意したのは自分なんだから。僕は一切関わってないよ。ただ、兄として本当に残念に思ったからそれを言葉にしただけさ。しかし、まぁこれで僕の邪魔になる者がいなくなったのは事実だけどね」
「テメェ!」
 和也が兄の方へ殴りかかろうとしたが、あっさりかわされ、逆に和也は蹴り飛ばされ、反撃を受けた和也は腹を抱えながら倒れた。
「さて、佳代子さん。例の場所だけど今度は僕と一緒に来てもらおうか」
「え?」
「いやいや、だってあんな危険なものをずっと放置しておくわけにもいかないでしょ? 大丈夫、君の中の勝俣修が妖怪を取り込まなかったのは知っているよ。手は考えてあるから」
 その時、今になって私の中にいた勝俣修が出てこようとしていた。
 どうして、今なの…… 。
 意識が薄れ、かわりに勝俣の意識が強くなっていく。主導権を奪われていく気分だ。
 そして、完全に勝俣修になると五十嵐兄は笑顔で「はじめまして」と挨拶した。
 和也は腹をおさえながら「なにを……した?」と言った。
「簡単だよ。我が妹が七不思議の悪魔をなんとかしようとする前に、僕が利用させてもらった」
「悪魔……だと?」
「そ。悪魔なら反応すると思ってね。その悪魔をあの妖怪にぶつけたらもっと面白いことが起きると思うんだよ。どうだい、君も見に来るかい?」
「ふざけやがって……」
「残念だね。それじゃ、僕達だけでやろう」
 五十嵐兄はそう言って、佳代子……否、勝俣の方を見た。
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