赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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 遊ぼと誘われて、その小さな手を取り一緒に遊んであげるべきか。しかし、相手は外見は子どもでも人間ではない。まるで、幽霊を見た気分だが、そうなると一般的な反応としては驚いてそのまま逃げ出すところだろう。
 でも、私はそうしなかった。だって、私から会いに来たのだから。
「いいよ、なにして遊ぶ?」
 私がそう返事したことに女の子はその場でジャンプをしながら喜んだ。
「わーい、わーい、お姉さんが遊んでくれる♪」
「そんなに嬉しがる?」
 女の子は大きく頷いた。
「だって、皆私を見ると走って逃げちゃうもん」
 なるほど、納得した。
「中には私を探しに来た人もいたんだけど、その人まで逃げるんだよ」
 それはおそらく、七不思議に興味を持った人だろう。
「でもね、途中までは遊ぶんだよ。私の一方的だけど鬼ごっこするの」
「ああ、なるほど。でも、途中って言うことは皆最後は逃げ切るんだね」
「ううん。ちゃんと捕まえてるよ」
「え?」
「でも、気づいたら血まみれになっていてね、消えてるの」
「でも、行方不明で戻って来なかった人の話しは聞かないよ」
「多分、迷い込んでも私に会ってないからじゃない?」
 ああ、なるほど。確かに、三姉妹から女の子が出てくる話しは聞いたことがない。
「それじゃ、血まみれになった人の話しを聞かせて。その人達はどうなったの?」
「ここの住人になったわ」
「住人?」
「そう。この場所で死んだら二度とあちらには戻れない。だって死人だもん。ここで死んだ人は皆の記憶から消えてなくなるから問題ないの。まぁ、一人だけ私との遊びで逃げ切れた人もいたけど。その人、危ないんだよ。私が追いかけたら手榴弾投げてきたんだから」
「へぇ……」
 嘘ではないんだろうが、そんな手榴弾を投げる日本人がいるのか?
 しかし、これは誤算だった。まさか、助からない人がいたなんて。でも、皆の記憶から、存在を消されてしまうのだから誰もその事に気づかないわけか。



◇◆◇◆◇



 その頃、五十嵐社長は自分の車に乗り込んでいた。赤い目立つ色の軽自動車だ。特に車にこだわりがあるわけじゃない。足が楽になればそれでよかった。
 探偵にとって足は重要だからだ。どんなにネット社会であろうと、現場重視の探偵や刑事や記者はいるものだ。自分の足でしか得られない情報もある。
 シートベルトをしめてエンジンをかけたところで、自分のスマホが鳴り出した。
 スマホ画面を見ると、クソ兄貴からだった。
 電話に出ると兄から「まさか妹から電話がくるなんて驚いたなぁ」という嫌味から始まった。
「あんなに僕を追い出そうとして、しかも戻ってこれないよう知り合いを使って厳重な警戒をしているっていうのに。まぁ、察しはついてるけどね。例の七不思議の件だろう?」
「ああ、そうだ」
「だろうと思ったんだ」
 喜ぶ声。いちいちムカつかせる。それも奴がよくやる手だ。
「しかし、僕がいない間に随分とあの子も変わってしまったようだね。まぁ、君の手に負えなくなったからの結果だろうけど」
「あいつは勝手に柿の木の七不思議まで取り込んでしまった」
「知ってるよ」
「なんで知っている」
「いや、だってさぁ、僕はもうこの町に戻ってるんだよ」
「なんだって!?」
「相手はこの僕だよ? そんな当たり前のことが分からないなんて、ちょっとお兄ちゃん傷つくなぁ。それで、君たちは佳代子がもう自分達に従わなくなったから佳代子の前に先に自分達で残りの七不思議を回ろうってわけか。それで先回りしたつもり? もう佳代子の方は妖怪の方と接触したよ」
「取り込んだのか!?」
「いや、まだだ。多分、妖怪のことまでは知らなかったから少し手こずると思うよ」
「お前は逃げのびたんだったな」
「ああ。あれと遭遇したらあの子の遊びに付き合わなきゃならないんだ。でも、あの空間の時間は進んでないから永遠に遊ぶはめになってもおかしくはない。まぁ、彼女のことだからなんとかするんだろうけど」
「逃げればいいだろ」
「逃げようとすればアレは追いかけてくるよ。鬼に化けてね」
「そんな話しは聞いてないぞ!」
「あれ? そうだっけ。まぁ、鬼から逃げきれれば出口は見つけられる筈だよ。この僕が助かったんだから間違いないって」
「クソッ! 先にそっちか」
「ああ、まだ電話切らないでね。お兄ちゃんはこれでも怒ってるんだからね。悪い子にはお仕置きが待っている。それ、忘れないでね」
 五十嵐社長は返事をせずに電話を切って、車のギアをチェンジさせた。



◇◆◇◆◇



 女の子の遊びにとりあえず付き合うことになった。
 最初は駒回しだった。それから縄跳びに竹馬とかだ。
「次はなにして遊ぶの?」
 佳代子はそう言いながら、何故自分の中にある地縛霊は反応があらわれないのか考えていた。
 おかしな現象が起きれば、私の中の地縛霊が反応して起きると思っていたのに。
 むしろ、今までのが運がよすぎてうまくいき過ぎていたというのか。
「そうだね、次はおままごとして遊ぼ」
 女の子がそう言うと、空き地にぞろぞろと大人の女性、男性、男の子が現れた。瞳の色は暗く、普通でないことは一瞬で理解できた。
 おそらく、この子に殺された人達をこの子は使っているのだ。
「お家は私の家でやりましょ」
「あなた、家があるのね」
「うん」



◇◆◇◆◇



「五十嵐社長、こんなのは流石にまずいって。多分、あんたの兄貴はこうなることを予定済みなんですよ」
「万が一がある。だが、あの馬鹿兄貴はその万が一すら楽しんでしまうどうしようもないクズなんだ」
 五十嵐社長は佳代子を救う為、とある会社倉庫で知り合いから拳銃を受け取っていた。
「あいつは七不思議を興味本位で関わったが、佳代子が今あっている七不思議はあいつも死にかけたと言っていた。まぁ、どの七不思議も危険には違いないんだが」
 キューピットの件も女子高生は実際に狙われていたし、地縛霊ももし本気で悪さをしようとしたら今までどうなっていたのか分からない。こういうものは面白半分で関わってはならない。よくある、心霊スポットに肝試しの気持ちで行ったら本当に呪われて後悔するパターンだ。
 だから、私だけの問題だったら慎重にやるんだが、佳代子はやはり素人だった。
 いや、私も専門家ではないか。
「あんたの兄は多分、あなたがそれを使うことも見込んでるかもしれませんよ」
「安心しろ。お前を売ったりはしない。絶対に」
「あなたのことを疑ったことはありませんよ。ただ、兄の思い通りに動くことはないって言いたいんですよ」
「すまないな、こんなことに協力させて」
「そんなこと言わないで下さいよ。それ、完全にフラグみたいじゃないですか」
「私もな、兄の思い通りになりたくなくて、あいつから離れたようなもんなんだ。でも、結局私はあいつの思い通りになるしかないみたいだ。なぁ、あやつり人形の人形がどうやってあやつる人間の手から離れられると思う? 私はその方法を見つける為ずっともがいてきた。でも、そのもがくところも含めて、あいつの思い通りだったんじゃないかって今では思っているよ。どうせだったら、そんな兄を殺してしまえばよかったと後悔している」
「あんたが兄のようになる必要はない」
「そうだな……」
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