英雄たちはもう一度。

鼓月幸斗

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脱出劇と黒幕

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『着きました!ここが結界の発生装置です』

 エクトは通気口から飛び降りると、小さな装置だけがある部屋に辿り着いた。

「ここが……?四角いキューブが浮いてるだけで何もないけど……」

『はい、このキューブに組み込まれた魔術で……魔力が続く限り結界を張り続けるんです』

「一体どれだけの時間があればこんなものが作れるんだ……」

 エクトは蒼い槍を取り出すと構える、今手持ちにある物で一番破壊力のありそうなものがこれだったからだ。

「これを壊せばいいんだよね」

『その筈です、そうすればここの結界は消えてドワーフ達も脱出出来る筈です』

「わかった……よし!」

 息を整え、勢いをつけて突き刺したキューブはあっさりと貫かれ火花を散らし破裂した。

「うわっ!……こ、これで大丈夫?」

『エクトォォォ!!!ぶはぁっ!?』

『きゃあっ!?』

 エクトが槍を仕舞った瞬間、天井からカナカが凄まじい形相でエクトに突撃してきた。

 が、そのまますり抜け後ろに居たミネルにぶつかってしまった。

『いったぁ……あ!?ミネル!?何でこんな所にいるんだお前!?』

『あ……あああ!カナカさん、お久しぶりです!うわぁ変わってませんね!嬉しいです!』

『お、おぉ……お前は変わらないようで安心したよ』

 二人が最下位を喜び合っている時、ふとエクトは気が付いた。

「あ……カナカが来れたって事は」

『そうです!結界は確実に破壊されました!これで外に出ることが出来ます!』

 ・
 ・
 ・

「クワナはん!もう体が持たへんやろ!はよ逃げろ!!」

 雨の如き銃撃を避け、迫りくる機械の群れを斬り捨て、気が付けば周りにあるのは鉄屑の山。

 そして、その山の色を塗り替える程の赤い鮮血が飛び散っていた。

「逃げろったって……拙僧囲まれてるんだぞ……?」

「―――――警告、警告!脅威レベルの上昇――――」

「……ちっ」

 桑名は霞む目を凝らし浮かぶ球体を睨む。

 忌々しく光るコアは、依然として薄い膜を張りながら浮いている。

 警備兵を斬る最中、何度か斬ったが全てあの膜に弾かれた。

「あの膜さえ消えちまえば―――――」

 その時、地下中を響かせる程の警告音と共に球体から声が聞こえる。

「―――エラー!エラー!結界の破損を確認、防護装置が緊急停止します!担当作業員は直ちに修復作業に―――」

「――――膜が。消えた?」

 桑名のそれは、殆ど反射だった。

 今一度刀を構え、敵を見据える。

 再び降り注ぐ死の雨をものともせず静かに目を閉じる。

「光風霽月―――――我が剣技」

「クワナはん!!」

「今この時我が全ては其を斬る為に―――――『海斬』」

 その時クォーツは見た。

 刀は音も無く全てを斬り、後に残ったのは振り下ろした姿で止まった桑名と―――

 真ん中から二つに割れ、火花を散らしながら沈んでいくコアだった。

「け―――kkkけいこくけいkkこくtttだちに―――――」

「や――――やりおった……」

 ・
 ・
 ・

『潤いの水、その器に満たせ』

「おぉ!みるみる水が溜まってやがる!後はこいつを稼働すれば……!」

 オリリアが魔術でタンクに水を入れ、ジストが装置を稼働すると大きな蒸気と駆動音を立てながら立ち上がった。

「やった!」

「これでこんな所とはおさらばだ!」

「うるさい……」

「嬢ちゃんにはこのセンスは難しかったか?だがありがとう!これで脱出の目途は立つしあの警備兵共にも対抗できる……?」

 ふと、ジストは地震と勘違いするほどの足音と振動を感じ取った。

「な、なんだ?」

 そしてその振動が近づくにつれ、その正体がはっきりした。

「「「「「リーダーーー!!!」」」」」

「「「うわあああぁ!?」」」

 工場で働き続けていたドワーフ達が、動かなくなった警備兵にリーダーであるクォーツがコアの破壊を達成してくれたことを察し居てもたってもいられずジストたちの下へ集まっていたのだった。

「流石リーダーだ!俺達に出来ない事をやってくれた!」

「最高だぜリーダー!!」

「待て待てリーダーはここにはいねぇ!?落ち着けお前ら!!」

「じょ、嬢ちゃん大丈夫か!?」

「あーーーーー」

 オリリアはドワーフ達の波にのまれ流されていた。

「嬢ちゃーーん!!?」

『オリリア!!見つけたぞ!!!』

 その時、天井を抜け険しい表情のヴァルトが飛び出して来た。

「あ、師匠!」

 オリリアは顔を明るくし、ドワーフの波から飛び出し落ち着いた場所まで移動する。

『大丈夫か、儂がいながら油断した!まさか儂ら霊体すら阻む結界とは……』

「でも会えた、大丈夫」

『オリリア……』

 ヴァルトは変わらないオリリアの様子に安堵したような息を吐くと背後から聞こえるドワーフ達の歓声に振り向く。

『所で……ドワーフ達はここに集まっていたのだな』

「閉じ込められてた」

『お前達をこんな所に落とした辺りで既にわかっていたが……今回の事件は商会の仕業なのだな』

「うん」

『カナカはエクトを探しに行った、クワナとも急いで合流するぞ』

「わかった」

 オリリアが先に進もうとした時、後ろから声がかかる。

「嬢ちゃん!」

「あ、ジスト」

「どこ行くんだ?リーダーはやってくれたみたいだし後は脱出するだけだぞ?」

「仲間探し」

「あぁ……嬢ちゃんとはぐれた仲間だったか」

 そういうとジストは自らの胸を叩く。

「それなら俺っちもついていく!仲間は見捨てられないからな!」

 オリリアは頷くと、ジストとヴァルトと共に地下を探し始めた。

 ・
 ・
 ・

『で?脱出ったってどうするんだよ、俺とお前だけなら飛べばいいがエクトもいるんだぞ』

 キューブも破壊され何も無くなった部屋、エクトはカナカ、ミネルと話していた。

『それなら当てがあります、この地下の出入口はエクトさんを落とした時の落とし穴だけなんですが……この街には地下水路があるんです!』

「地下水路……?まさかドワーフと協力して掘れってこと?」

『だが……こんな所ショベルがある訳でもないだろ』

『ふっふっふ……私が言うのもなんですがドワーフの力を舐めない方が良いですよ。一先ずエクトさん、この部屋から出ましょう!』

 ・
 ・
 ・

 オリリア達は地下内を走っていると、先の通路から声を聞き取った。

「―――――はん――――少しの――――」

「誰かいる」

「リーダーか!?無事だったか!」

 そして声の主を視認できる程に近づいた時、同時に鼻に刺すような鉄の匂いを感じ取った。

「ジストか!?た、助かったわ!お前もはよ助けるのを手伝え!」

「クワナ!?」

 オリリアは血に塗れ、浅い呼吸を繰り返すだけとなった桑名に駆け寄った。

『酷いな、内臓が幾つも破けているし骨も砕けている。常人ならとっくに死んでいる』

「い、一体何があったんだリーダー」

「クワナはんがコアを倒したんや……せやけど警備共から銃撃を何度も浴びて……」

「師匠、治せる?」

『これは無理だ、儂が教えた魔術では治しきれずに先に死ぬ』

「そんな――――」

『だから。使、オリリア、儂の詠唱に続けろ』

「……うん」

 オリリアは立ち上がると集中する、魔力が浮かび上がりオリリアの周りで活性化する。

『これより行うは理の拒絶!』

「『これより行うは理の拒絶!』」

「オ、オリリア?」

『只一人の為に一切を捧ぐ!』

「『只一人の為に一切を捧ぐ!』」

『世界よ目を背けよ!我が行うは生命の廻天!』

「『世界よ目を背けよ!我が行うは生命の廻天!』」

 直後、オリリアを強烈な虚脱感と共に魔力の消耗が襲う。

「うっ……」

 そして、魔力が桑名の全身に寄り添うと包み込み、まるで早回しの様に桑名の傷が癒えていく。

「……あ、あぁ?……ここは」

「クワナはん!!」

「ぐはっ!?」

『成功だ、よく耐えたな。オリリア』

 オリリアは息を整えるとヴァルトに向き直り指を二本立てた。

「ぶい」

「凄いな、エルフの魔術か!……というか誰に向けてんだ?嬢ちゃん」

「よくわからんが拙僧は何とかなったって事だな!助かったぜ!」

「後はエクト」

『そうだな、すぐに合流できるだろう』

 ・
 ・
 ・

『しかし、この通気口すっげぇ広いな。何か所に別れてるんだよ』

『殆ど密閉された空間なので空気の循環は徹底されてるのでしょう。あ、エクトさんそこを右です』

「わかった、よいしょ……」

 エクトはミネルの指示に従い進んでいく、狭い通気口の中に長時間居続けエクトの精神にも焦りが生まれてくる。

『俺達壁を突き抜けれるのは良いが壁の中って真っ暗で何も見えないんだよな』

「そう言えば一回地面に潜っちゃって上がわからなくなってずっと下に潜ってたって」

『どっかの地下に抜けてからようやく気付いたぜ……あの時は肝が冷えた』

『私達、もう肝無いですけどねー』

 そして突き進む内、出口に辿り着いた。

「よ……っと!」

『あれ……?ここどこでしょう?』

『は?道分かってたんじゃないのかよ!?』

『す、すみません~~!どこかでズレちゃったみたいです……!』

「待って、あそこに何かある」

 エクトが見つけ、近づいてみるとそれは人一人が入れる大きさのリフトだった。

『これは……もしかして脱出用のリフトか?』

「あれ、でもさっきミネルは出入り口はあの落とし穴にしか無いって……」

『その筈です……が……ここは初めて見ますね、隠し通路なんでしょうか……?』

『何のためにだよ』

「……これ、みんなに伝えたら一緒に脱出できるんじゃ」

 そう思ったエクトがリフトに乗り、動かし方を調べようとした瞬間。

「うわっ!?」

『う、動き出したぞ!』

「乗っただけで!?」

 慌てる暇も無くリフトは上へ行く、既にリフトは壁に阻まれ飛び降りる事も出来なくなっていた。

『一体どこまで……』

「外まで行けたらいいんだけど、そう上手くは……」

『あ……!扉が見えてきました!』

 リフトはやがて頂上に着き、扉は開かれた。

 そこは一室だった。見るからに高そうな美術品やきめ細やかな木目の机、そして革張りで出来た椅子に座っている少女……ドワーフが一人こちらを覗いていた。

「あら……どうやら我が商会に迷い込んだ鼠が一匹、生意気にも逃げ出したようですわね?」

 その少女は、一言で言えば絢爛華麗だった。

 ミネルと同じ琥珀色の髪、そして髪色と同じく琥珀色のドレスを身に纏い、所々に埋め込まれた宝石が輝かしく光を放っている。

 白い手袋には汚れ無く、純白という言葉が似合う程艶やかだった。

 そして少女がエクトを見ると、手を口に添え淑やかに笑う。

「ふふふ……どうやら鼠は籠を壊すだけじゃ飽き足らず、ゴミまで持ってきたのかしら?ねえ??」

「お婆様……って」

 ミネルは震える様な声で答えた。

『サリア……もう止めましょう、貴女は操られているんです』

『……それじゃあお前がこの商会の黒幕か!!』
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